1955年から1975年、高度経済成長期に整備された構造物やインフラ網の老朽化が進んでいる。道路やトンネル、橋梁、建物など、点検が行きとどかなければ大事故につながる構造物も少なくない。耐用年数50年を迎える膨大な構造物の点検業務に対して、効率性や省人化が求められ、ドローンはその一端を担うツールとなる。さまざまな用途に応じた産業用ドローンを開発するACSLと、上水道・下水道に関するコンサルタント業務を主体とするNJSは、ドローンによる点検調査サービスを提供する合弁会社FINDiを設立した。
空のドローンと閉鎖空間用ドローンで多様なインフラ構造物に対応
FINDiはACSLのドローンを使った4つの点検サービスを提供する。まず一つ目は施設の内部点検だ。ACSLが開発したminiの頂部にライダーとカメラを搭載したFi5を使い、上水道、下水道、河川のインフラ施設内部の点検調査を行う。二つ目は、ACSLの中型機であるPF-2をベースにしたFi6を使った屋外の点検調査で、インフラ施設の外壁点検や屋根点検、さらには太陽光パネルの点検を提供していく。そして、三つ目となるのが新型の閉鎖空間調査用ドローン「エアスライダーFi4」を用いた、管路内飛行点検だ。なお、四つ目の点検サービスも管路内点検となり、「ウォータースライダーW4」による管路内水上走行点検を提供していく。
なかでもFINDiが重きを置くサービスが管路内点検となる。ACSLとNJSは2017年から管路内点検用エアスライダーの開発を進め、下水道管内の点検調査を実施してきた。2017年に開発したエアスライダーAS400は実証実験の運用から始まり、サービス化へと結びつけることに成功している。一方で、機体構造には整備性や防水性の課題があり、今回発表したFi4はこれらを改善するモデルとして開発された。同じくして新型となるW4は、AS400に専用のフロートを装着することで水上走行を可能にしたモデルとなった。
Fi4は機体の防塵防水性を高めるために、ボディーにカーボンファイバーを採用。IP55規格の防水性能を手に入れただけでなく、軽量かつ高強度な機体へと生まれ変わった。加えて、使い勝手とメンテナンス性の面では、機体構造を3ピース構造とし、EPP素材のバンパーを装着。分割構造にすることでメンテナンス性を向上し、さらにはバンパーの装着によって点検対象物に接触しても対象物を傷めずに保護できる。なお、バンパーの側面左右には自己位置を制御するセンサーを備えており、管内で常に中心位置を保持する仕組みだ。これにより直進安定性が向上し、簡単な操作で管内の奥まで点検が可能になった。操縦は専用のタッチパネル搭載送信機を使い、5GHz帯のWi-Fiで通信を行う。飛行時間は約5分で、Wi-Fiの通信環境にもよるが、おおよそ200m前後の管路内点検が可能だという。
FINDiは従来の人手によるアナログ手法の点検に比べ、価格は65~80%に抑えることができ、1日の作業量は3~5倍に効率化されると実績を踏まえて試算を出した。FINDiの稲垣裕亮代表は「Fi4を用いれば、人が管路内に立ち入らずに安全に点検できるだけでなく、ジンバル付きの4K・1500万画素のカメラによって、アナログ手法では見ることのできなかったクラックや損傷を発見できる」とドローンを使った点検のメリットを発表した。また、W4には左右4個、前方1個、上部1個の計6個のカメラを搭載し、周囲の面に対して正対した静止画の撮影を可能にしている。取得したデータはNJSが提供するクラウドシステムを基盤にしたソフトウェア、スカイスクレイパーCVで展開図化し、AIによる異常箇所の選定診断のうえ、人の目で最終判断を行う。FINDiはこれらのソリューションを使って、点検、調査、診断の一気通貫したサービスを提供していく。
6月1日よりサービスの提供を開始し、2025年に10.9億円の売上目標を掲げ、調査受託や一部の機体リースなどを通じてドローンによるインフラ点検を加速させる。