(出所元:エアロセンス)

 エアロセンスは8月6日、新型VTOL(Vertical Take Off and Landing)型固定翼ドローンの新製品「エアロボウイングAS-VT01」を報道関係者向けに公開した。同機は垂直離着陸用に4つのローターを持った全翼型のVTOL機だ。自社開発のフライトコントローラーや高性能なコンピューターを搭載し、可視光カメラやマルチスペクトルカメラをはじめ、さまざまなペイロードと組み合わせることにより、測量、精密農業、点検、物流といった用途で活用できる、国産初の本格的なVTOL型ドローンである。

エアロセンスのVTOL型ドローン「エアロボウイングAS-VT01」。(出所元:エアロセンス)

垂直離着陸・ホバリング用と推進用のローターを分離して安全性を向上

 2015年に創業したエアロセンスでは、マルチコプター型ドローンと並行して2016年からVTOL型ドローンAS-MC03-T型機の製品開発を行ってきており、2017年3月には沖縄県の竹富島と石垣島間約5kmのルートにおいて離島間飛行実験を成功させている。また、2018年3月にはNTTドコモと共同で、福岡市の九州本島と玄海島との間で、携帯電話ネットワークを使った機体の遠隔監視とカメラが撮影した映像のリアルタイム伝送実験を実施。さらに同年10月には双葉電子工業の勝間飛行場で行ったデモンストレーションで、同社のVTOLドローンが最高速度132km/hを記録するなど、VTOL型ドローンの開発を進めてきた。こうした同社のVTOL型ドローン開発の蓄積を活かして生まれたのが「エアロボウイングAS-VT01」だ。

記者発表会でエアロボウイングを手にする佐部浩太郎エアロセンス代表取締役社長。

 本機は全長1200mm、翼幅2130mm、全高450mmの全翼機で、本体重量はバッテリー込で8.54kg。左右の翼下からローターアームが前後に延び、その先端に垂直離着陸・ホバリング用の4つのローターを、胴体後端には固定翼モードで飛行する際の推進用ローターを備えている。左右の翼は取り外しが可能で、車のトランクに収納することもできる。最大離陸重量は9.54kgで1㎏のペイロードを有しており、バッテリー1本で約40分の飛行が可能。最高速度は100km/hで、巡航速度75km/hであれば最大50kmの距離を飛行できる。

エアロボウイングは全翼機スタイルで、左右の翼下から前後にローターアームが伸びている。(出所元:エアロセンス)

 エアロセンスが創業当初から開発していたVTOL型ドローンAS-MC03-T型機は、機首と左右の翼に垂直離着陸専用のローターを備え、さらに胴体中央の大型ローターがチルトすることで、垂直離着陸時の揚力と固定翼機として飛行する際の推進力を兼ねていた。エアロボウイングではこのティルトローター方式に対して離着陸用と推進用ローターを分離したスタイルを採用。「前作では重心位置にティルトローターを配置しており、大きなペイロードを搭載することができなかった」(説明員)といい、機体後方に推進用としてローターを固定することで前進効率を向上させている。
 さらに「従来のチルト方式だとこのローターが壊れると墜落してしまう。そこで4つのローターでマルチローター機としての揚力を確保し、水平飛行用のローターを別に設けることで、万が一水平飛行中に推進用ローターが故障しても、マルチコプターモードで安全に着陸することができる」(説明員)という。

中央の胴体後端のローターは推進専用とすることで前進効率を高め、従来モデルに比べて5倍の航続距離を実現している。
ローターアームの先端には垂直離着陸・ホバリング用のローター4つを装備。水平飛行中に推進用ローターにトラブルがあった場合には、直ちに4つのローターを作動させてマルチコプターとして着陸を行う。

 また、前作では機体が樹脂でできていたが、エアロボウイングではバルサの構造材に薄くて軽いFRPの外板を採用し、機体の形状も前面投影面積が50%程度削減されるなど、より空力的に優れたデザインに仕立てられている。こうした軽量化や空力性能の向上と、前進効率を高めることにより、従来機では約10kmであった航続距離を5倍に伸ばすことに成功している。

機種には目視外飛行のためのFPV用カメラを前方と下方に向けて搭載。また、胴体下面から出ているパイプは、固定翼機に欠かせない対気速度を計測するピトー管だ。