綜合警備保障(ALSOK)は7月30日に東武タワースカイツリー、東武タウンソラマチと共同で、完全自律飛行ドローン警備システムの屋内実証実験を報道陣に公開した。この実験は東京スカイツリータウン内の東京ソラマチという大型商業施設において、ドローンを活用することで警備の省人化や効率化を目指す目的で7月14日に実施したもので、アメリカ製の小型ドローンSkydioを使い、あらかじめ決めたルートを自動巡回させるというものだ。

地上約350mにある東京スカイツリー展望デッキ・フロア350を飛行する、ALSOKのSkydio J2。

エスカレーターに沿ってドローンが違う階を行き来する

 ALSOKでは2014年度から国土交通省が設けた次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会が行っている「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム」の公募に参加して、橋梁点検用ドローンの開発を行っていたほか、2015年度からはメガソーラーの点検向けに「空撮サービス」の提供を開始。また、2018年にはALSOK福島とともに有線で電源供給と映像伝送を行う「有線ドローンによる広域監視システム」を開発するなど、ドローン利用の知見を蓄積してきている。今回の実証実験はそんなALSOKのドローンを使った取り組みを、いよいよ本業の警備で利用しようというものである。

 警備分野でのドローン利用は同業他社のセコムが、2012年に民間防犯用として世界初となる自律型小型飛行監視ロボット「セコムドローン」を開発し、2015年から本格的なサービス提供を開始している。同社は2018年にはPFI刑務所「美祢社会復帰促進センター」において、同ドローンを使って巡回監視サービスを開始したほか、KDDIグループと共同で携帯電話ネットワークを使った広域監視の実証実験を行っている。ただし、これらはいずれもGNSSの電波が受信できる屋外での利用となっており、今回、ALSOKが取り組んだ屋内における警備用途でのドローン利用は日本で初めての試みだ。

飛行実証実験は東京スカイツリーの足元にある東京ソラマチ・ソラマチ商店街で行われた。

 実証実験は東京スカイツリータウン1階イーストヤードのソラマチ商店街を一往復してから階段を上り、2階フロアを巡回して再び階段を下り、商店街入り口に設置してある出発点に戻ってくるという約200mのルート。GNSSの電波が受信できないうえに、幅5m程度の商店街の中央を飛行し、エスカレーターに沿って階を上下するなど、高度な飛行が要求される。そこでALSOKではこの屋内の巡回飛行のために、米Skydio社の小型ドローン「Skydio J2」を採用。同機は機体の上下面に合計6つの超広角カメラを搭載しており、飛行中にこれらのカメラで撮影した映像からリアルタイムで空間地図を作成し、その地図をもとに画像から判断した障害物をよけながら飛行することができる。

 同機はジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)が今年1月から同社の橋梁・鉄塔などの点検サービス向けとして導入したもので、ALSOKによると2019年からJIWと警備に必要な機能・性能を開発していたという。今回の警備実証実験に向けて、「ウェイポイントを一筆書きで飛行する」ことと「カメラが撮影した映像をリアルタイムでモニターできること」といった機能を新たに搭載している。

ALSOKが今回の屋内警備実証実験に使用したSkydio J2。ALSOKのコーポレートカラーをイメージしたカラーリングに仕立てられている。
ソラマチ商店街を飛行するALSOKのSkydio J2。エスカレーターに沿って階を行き来するといった高度な飛行を見せた。
ソラマチ商店街では専用格納ケースの展開式ランディングパッドから離発着を行った。