DJI JAPANは4月30日、DJIが展開する業務用ドローンの利活用について、約1時間半のオンラインセミナーを開催した。「日本の業務ドローンの現状と正しいドローンの選び方」「DJIドローン機種別の特徴」「ドローンに関する法制度の概観」という3つのテーマで、それぞれDJIのスタッフが講義を行うというものだ。

「日々お使いのドローン、お客様のために正しく業務課題を解決していますか?」

 セミナーの最初のテーマは「日本の業務ドローンの現状と正しいドローンの選び方」で、DJI JAPANマーケティング・ディレクター(産業ドローン担当)の柿野朋子氏が登壇。同社が日本のDJIのユーザーを対象に調査したところ、ホビー利用はわずか11%で、残り89%が業務利用という結果が出たという。この結果は、DJIの世界最大の市場である北米とは真逆の傾向であり、日本はいかに業務でドローンが活用されているかという点において、世界の中でも先進国だと柿野氏は説明した。

 さらにDJIのドローンは映像メディアを筆頭に、消防・警察や、建設業、プラント、太陽光パネルといったエネルギー施設での点検、農業分野、橋梁などのインフラ点検分野など、幅広い産業分野で利用されていると紹介。柿野氏によると「土木・建築分野は、今のところ公共事業が中心となっているが、今後は民間事業にも活用が広がっていくことが見込まれるとDJIでは考えている」とのことだ。

日本のDJIユーザーの89%が業務に利用している(DJI調べ)。
DJIドローンの産業別用途。4分の1がいわゆる空撮だが、その次に土木・建設分野が続く。

 柿野氏によると、DJIドローンを産業利用することにおいて大きな課題といえるのが、「お客様が最終的に必要なデータの収集を可能にするドローンを正しく選択できているか」ということだという。DJIには幅広いドローンとカメラのラインナップがあり、お客様の業務とDJIのドローンの間でミスマッチが起きないようにすることが大事だと柿野氏は話す。

 そこでこうしたミスマッチを起こさないためには、「課題を解決するソリューションを絵にすることをお勧めする」と柿野氏。ドローン本体とそこに搭載するカメラや専用ツールといったペイロード、さらにアプリケーションをリストアップするというものだ。さらに細かく検討することとして柿野氏は6つのポイントを挙げた(下図のとおり)。

柿野氏が示した課題を解決するソリューションを示した絵の例。
ドローンを選ぶうえで検討すべきポイントとして「位置情報精度」「業務特化型かどうか」「カメラ性能」「飛行時間」「ペイロード」「可搬性」の6つを挙げた。

 また、柿野氏はもうひとつテーマとして“DJIドローンのデータセキュリティ”について紹介した。「ドローンはIoT(Internet of Things)デバイスではない」という柿野氏。DJIのドローンを操縦するのにインターネットに接続する必要はないといい、「この大原則を実は多くの人が理解していない」という。送信機とDJIのドローンの間は、インターネット経由ではなく直接無線で通信している。送信機に取り付けたスマートフォンやタブレットで、映像やテレメトリー情報を確認できるのは無線通信によるもので、インターネットは使用していない。

 「DJIはお客様のデータを収益化しない。DJIのビジネスでお客様のデータは必要ない」と柿野氏。DJIの最大のミッションは安心、安全な飛行を確保することであり、お客様が業務に必要なデータをDJIのドローンを使って取得することを、製品提供で支援することだという。そのため、ユーザーのデータはユーザー自身で管理することができる。柿野氏はこのことを、下図を使って、飛行前、飛行中、飛行後のフェーズで分けて具体的に説明している。

 原則として飛行を支援するデータや、機体・アプリの機能向上に関するデータは自動送信となるものの、ユーザーが取得したデータは、ユーザー自身が選択しない限りはDJI側に送信されることはないと説明。また、飛行ログ(履歴)は通常DJI側は取得していないため、アフターサポートでDJI側が求めてユーザーが承諾した時のみ、AmazonのAWSのサーバーにアップロードする仕組みになっているという。

飛行前、飛行中、飛行後の各段階において、DJIに対して自動的に送信されるものを青、ユーザーが任意で送信の可否を選択できるものを緑で説明している。