DJI JAPANは5月14日、同7日に発表した産業用ドローンMatrice 300 RTK(以下M300 RTK)とハイブリッドマルチセンサーカメラZenmuse H20シリーズ(以下H20シリーズ)を報道関係者に説明するオンラインセミナーを開催した。このセミナーでは製品の説明の後にパネルディスカッションを開催。さまざまな産業向けドローンのオペレーションを行っているNSi真岡の代表取締役・水沼和幸氏と、DJI JAPANのオフィシャルパイロット・中村佳晴氏が、「日本のドローン市場と現場の声。そして今回の新製品はどこまで期待できるのか?」というテーマで、M300 RTKとH20シリーズの魅力を紹介した。

 セミナーの前半は、M300 RTKとH20シリーズを中村氏が解説。新作のドローンとジンバルカメラは、“高性能” “安全性&信頼性” “進化したインテリジェンス” “拡張性&開放性” という4つの点において、産業向けドローンソリューションの新基準になると紹介。この4つのポイントにもとづいて、M300 RTKとH20シリーズの特徴を解説した。各製品の詳細は本Webサイト5月8日の記事『DJI、産業用ドローンの新基準「MATRICE 300 RTK」と、DJI初のハイブリッドカメラ「ZENMUSE H20シリーズ」を発表』で紹介しているため割愛するが、中村氏はパイロットという立場から評価する点を披露。

M300 RTKに使うTB60バッテリーを8本、送信機用のWB37バッテリー4本を収納し、2本のバッテリーを70分以内で充電できる急速充電バッテリーステーションも同時に発売となった。

 例えば、前後左右上下の6方向に装備されたビジョンセンサーと赤外線によるToFセンサーは、「停止させる距離を任意で設定できるようになったことで、さまざまな作業に応じた飛行が可能になった」という。また、送信機に新たに採用された「プライマリーフライトディスプレイ(PFD)」では、「FPVインターフェースで多くの情報が得られるので、パイロットは安心して飛行ができる」と評した。

M300 RTKはクワッドコプターでありながら、「1つのローターが停止しても残りの3つのローターを使って制御しながら着陸させることができる可能性がある」と中村氏は説明した。

これまで床を見ていたビジョンセンサーで天井部も見ているM300 RTK

 パネルディスカッションとなったセミナー後半の最初のテーマは「Matrice 300 RTKとZenmuse H20シリーズの活躍する業務とは?」。水沼氏は警察、消防、電力、通信のほか、プラントにあるような巨大な設備の保守といった分野を挙げ、さらに、「今後は保険業の査定といった分野でも使われるのではないか」と見込む。また、橋梁点検では構造物を見るだけでなく、橋に敷設されている通信ケーブルやパイプラインを見たいといったニーズもあると紹介した。「私はMatrice 100の頃からドローンによる点検に取り組んできたが、こうしたフライトにはどうしても操縦者の技量が求められる。M300 RTKでは、より多くの人がこうした作業に臨むことができる。それは “どうやって安全に橋の下に潜っていくか” という課題に、DJIが真剣に取り組んだ成果だと思う」と水沼氏は付け加えた。

6方向に装備されたビジョン&赤外線センサーなどにより、「操縦者に高い技能を求めなくても点検ができるようになった」と水沼氏は評した。

 中村氏は「Phantom 4 やMavic 2シリーズでは下向きのビジョンセンサーによって室内でも安定したホバリングができる。M300 RTKは上にも同じビジョンセンサーが付いているというイメージで、橋の下や建物の天井部といった場所でもビジョンポジショニングが効いて、安定した飛行ができる」と紹介。「ただし、橋でも形はいろいろあるため、今後もシビアな環境でそれがちゃんと作動するかという実験はやっていかなければならない」と付け加えた。

 次に新しいジンバルカメラである「Zenmuse H20シリーズはどういう業務で活躍するか?」という質問に対して水沼氏は、既存の30倍ズームが可能なジンバルカメラZenmuse Z30と比較してH20シリーズの有効性を語る。「Z30は見たいところに大きくズームすればするほど、どこを撮っているかわからなくなることがある。例えば電力線の碍子をズームして撮ったものの、実は隣の碍子だったなんてことも。それがH20シリーズでは広角カメラとの切り替えで、どこを撮っているかが瞬時に確認できる」と評した。

広角カメラとズームカメラを搭載するH20シリーズ。ワンタッチでカメラを切り替えられるため、高倍率ズームで撮影している場所を広角カメラの映像ですぐに確認できる。