「農家の現場で喜ばれる機体」。エンルートの開発・製品本部長である大迫氏は、同社の新型農薬散布機をこう表す。エンルートが2020年シーズンに向けてリリースする「AC101」は、AC1500 やAC940Dをはじめ、同社が創業した当時から受け継いできたプラットフォームを、全面的に改良した次世代の農薬散布用ドローンだ。

農薬散布用新型機AC101は、折りたたみ可能なプロペラを4基搭載する。機体の寸法は、全長902×全幅902×全高561(mm)、アーム折りたたみ時には、全長509×全幅609×全高561(mm)とコンパクトになる。機体重量は、約7㎏(バッテリー除く)。

軽量・コンパクト・低燃費 使いやすさに徹底したこだわり

 「最新機能を軽量、コンパクト、低燃費に」というのが開発コンセプトのAC101。10Lの薬剤タンクを搭載しながら機体重量は約7kg(バッテリー除く)と、同じ10Lの薬剤タンクを搭載する従来のAC1500の機体重量(バッテリー除く)11.9kgに比べて約5kgも軽い。また、プロペラアーム展開時のサイズは902×902mmと、AC1500よりも、むしろ小さな5Lタンク機のAC940Dに近い。つまりAC101は10Lタンクを搭載しながら、40%もの軽量化と45%の小型化で、ひとクラス下のモデル並みのコンパクトさを実現しているのである。

 さらに収納時は、プロペラアームを2本ずつ段違いに重ね合わせるようにして折りたたむ構造によって、ひときわ小さく収納できる。折りたたんだ2組のプロペラアームは機体の左右にまとまるため、収納時でもカセット式の薬剤タンクやバッテリーの取り外しを邪魔しない。

 また、機体上部にはバッテリーを保護するロールバーを兼ねたグリップを装備。「このグリップを持てば、女性でも片手で機体を持ち運ぶことができる」(大迫氏)といい、車からの積み下ろしをはじめ、作業の負担を大幅に軽減してくれる。

 バッテリーは新開発の大容量インテリジェントバッテリーを採用。AC1500では2本のバッテリーをキャノピー内に搭載していたため、脱着に12もの手順が必要だった。しかしAC101では、ワンタッチで固定する仕組みを採用するなどして、わずか6ステップで脱着ができるようになっている。

 また、電力効率を向上させたことで、1バッテリーで約2ha(※1)の散布能力を実現。同時に従来1フライト分の2本を1本ずつ充電していた充電器を刷新し、1フライト分1本のバッテリーを同時に2本の充電が可能に。従来比で4倍の効率で充電が可能となり、3セットのバッテリーでも一日の作業ができるようになった。

(※1)15km/h飛行で8L/haを2回散布

バッテリーは機体上部後方からスライドさせてセットできる。
アームとプロペラを折りたためば移動も収納も楽々。
音声ガイド付き7インチタッチパネル液晶を採用した専用コントローラー。

ニーズの高い飛行支援機能が充実

 AC101は機体と同時にコントローラーも刷新。大きく見やすい7インチモニター付きのコントローラーは自動航行のルート設定や飛行ログの確認といった操作や設定がスムーズにできる。さらにアプリは音声による注意や警告も行うため、飛行中の機体から目を離すことなく、機体の状態を確認することが可能だ。

 また、自動航行機能はもちろんのこと、「自動離着陸」「直進アシスト」「ABモード」といった、オペレーターの操縦を支援する飛行支援機能も搭載。「まだまだ手動の方が安心という農家さんが多く、一番使われるのはABモードです。初心者や大規模な圃場を持つ農家さんなら自動航行で、頻繁に飛ばす方であれば、こうした支援機能を使って手動で飛ばしていただくのがおすすめです」と大迫氏は話す。

農家と近い存在にある国産ドローンメーカーの集大成

 エンルートは2016年に日本初の性能確認(※2)を受けた国産農薬散布ドローンのパイオニアともいえる存在だ。農業機械開発の大手の丸山製作所にドローンをOEM供給するほか、農機具販売店を中心に農薬散布機の販売代理店を設けるなど、農家と近い存在であり続けてきた。

 「エンルートのドローンは、たくさんの農家さんの声をいただいて製品に反映してきました。AC101はその集大成ともいえる農薬散布ドローンです。ぜひ、農機具のひとつとして、同じような感覚で使っていただきたいですね」(大迫氏)。

(※2)2016年にAC940が農林水産航空協会の認定第1号となる

大迫 誠/株式会社エンルート 開発・製品本部長