DJI JAPANのドローン訓練機関「UTC(Unmanned aerial system Training Center)」では、「DJI CAMP」や「ゼロから始めるドローントレーニング」といった、ドローンの操縦技能を身に着けるためのトレーニングや認定プログラムのほかに、ドローンを活用する産業分野に特化した技術を学ぶ講座を展開している。これらはドローンの操縦技能を学ぶだけではなく、土木・建設機器、測量機器、測量という産業分野の大手企業のノウハウを基に、DJI JAPANがDJIのドローンを使った作業のノウハウを提供するというものだ。この産業分野向けプログラムのひとつ、「DJI公式PHANTOM 4 RTK写真測量講習プログラム」が、東京都品川区でDJI製ドローンの販売を手掛けるFLIGHTSにおいて初めて開催された。

本講座の教材となるPhantom 4 RTKとテキスト。

 このプログラムは“Phantom 4 RTKの性能を存分に引き出すための知識・手順を習得する”ことを狙いとし、空中写真測量を行うための基礎知識から、実際に同機を使った作業の手順までを学ぶことができる。Phantom 4 RTKは文字通りPhantom 4 Pro V2.0をベースにRTKモジュールを搭載し、“cmレベルの正確性”を誇る測位システムを提供してくれる。この測位システムはプロポに装備した4Gドングルを経由して、VRSのサービスを受けることが可能なほか、DJIのD-RTK 2 モバイルステーションと組み合わせて利用することが可能。さらに、衛星観測データを保存しているため、PPKの後処理による高い測量精度を得ることができる。

この日の講師を務めたFLIGHTSの加塩博士CSO(Chief Survey Officer)。自らの経験も踏まえた講座を進めていく。

 UTCのPHANTOM 4 RTK写真測量講習プログラムは、1日で座学のみを受けるコースと、2日間で座学と実技を組み合わせたコースが用意されている。この日開催されたのは座学のみの1日間のプログラムで、測量会社から二人の参加があった。講師はFLIGHTSのCSO(Chief Survey Officer)である加塩博士氏。FLIGHTSの測量チームを担い、UTCのプログラム作成にも携わった経験と知識豊富な人物だ。プログラムは午前中がオリジナルのテキストを使って、写真測量の概要からネットワークRTK やD-RTKの使用方法についての説明で、午後が実際にPhantom 4 RTKを使ってコントローラー搭載のアプリ「DJI GS RTK」の使い方を学び、さらに、国際航業の三次元空間解析クラウドサービス「KKC-3D」とSfMソフト「Pix4Dmapper」の使い方を学ぶというもの。

1ピクセルあたりの分解能やオーバー/サイドラップをはじめ、空中写真測量の基礎から学ぶことができる。
Phantom 4 RTKのアプリを使い、測量に適した写真の撮り方を具体的に解説。
測量大手、国際航業が監修した講習テキストは、グラフィカルで非常にわかりやすいものとなっている。

 講座はテキストに沿って進められていくが、その中でも講師の加塩氏が持つ知識やノウハウがちりばめられた内容となっている。カメラキャリブレーションの項では、SfMソフトが持っているセルフキャリブレーションと、カメラ自体の歪みを事前に測定した歪み値を入力する独立したキャリブレーションについての説明があるが、「Phantom 4 RTKはセルフキャリブレーションより独立したキャリブレーションの方が処理が速くて正確だと言われているが、私のお勧めは独立したキャリブレーションを使いながらもセルフキャリブレーションをすることです。というのも、個体ごとに異なる主点位置とレンズディストーションの値はDJIが測定しているが、それは測定した時点のもの。しかしこうした値も気候などで変わってくる。そのためやはり、運用時のコンディションによる補正を行う意味でもセルフキャリブレーションをかけるのです」といった、加塩氏の経験を踏まえた説明も付け加えられていた。

D-RTK2とPhantom 4 RTKを組み合わせた作業の手順も細かく説明がある。
プレゼンテーション資料とホワイトボードへの板書で、プログラムがわかりやすく説明される。

 この日の講座は夕方まで行われ、講習内容の確認のために受講者はオンラインテストを受けることになっており、すべてのステップが完了すると、受講者全員に修了証が発行される。UTCが実施するPHANTOM 4 RTK写真測量講習プログラムは、今回の講習を担当したFLIGHTSをはじめ、全国15のUTCキャンパスにおいて随時実施されている。「“cmレベルの正確性”を誇るPhantom 4 RTKではあるが、それはあくまでも機体の位置精度であって測位精度を保証するものではない。だからこそ、まずはPhantom 4 RTKやD-RTK2を正しく使い、さらにソフトウエアで精度を高める必要がある」と加塩氏がプログラムの中で説明するとおり、このプログラムはPhantom 4 RTKを実務の中で使いこなすためのノウハウが詰まったものとなっている。