写真:展示ブースの様子

 6月4日から6日にかけて開催された「Japan Drone 2025」にて、DICは開発中の革新的な球形ドローン「HAGAMOSphere(アガモスフィア)」を出展した。

“化学×テクノロジー”印刷インキの老舗DICがドローン業界に参入

 DICは、2008年に旧社名の大日本インキ化学工業から現社名へと変更し、印刷用インクをはじめとする合成樹脂、LEDを含む機能性材料や半導体関連の電子情報素材の開発・製造に取り組む総合化学メーカーである。

 近年、DICは企業向け製品を主軸としていた従来の事業体制を見直し、2024年から「Direct to Society(社会への直接的な価値提供)」をコンセプトに掲げ、より社会に密着した製品開発に注力している。その取り組みの一環として、自社の素材技術を活用したドローン開発に着手した。

球体ドローン「HAGAMOSphere」が実現した“空陸シームレス移動”

写真:展示された「HAGAMOSphere」
HAGAMOSphereは8枚のプロペラで飛行制御を行う。

 今回展示されたHAGAMOSphereは、大学やドローンカスタマイズ企業との連携により開発が進められているもので、通常のドローンのように飛行するだけでなく、地上を転がって移動できるという“空陸両用”の特性を持たせた。

 名称の「HAGAMOSphere」は、開発コンセプトである「Hybrid Autonomous Ground/Aerial MObility System」の頭文字と、英語で球体を意味する「Sphere」を組み合わせた造語であり、さらにスペイン語で「やってみよう(Hagamos)」という意味も含まれている。

 機体は直径60cm、重量約2.5kg。内部に8枚のプロペラを搭載しており、それぞれの回転方向や出力を細かく制御することで、機体の姿勢を維持したまま前後左右への移動、上昇・下降を可能にしている。プロペラの配置は独特なレイアウトを採用しており、飛行の安定性向上のために工夫されている。また、着地後は球体の形状を活かし、地面を転がって進むというユニークな移動手段も特徴だ。

写真:展示された3機の「HAGAMOSphere」
全体が樹脂で覆われたHAGAMOSphereの完成形(中央)。

 ブースでは、細い棒状の樹脂で球体ガードを設計した開発中のHAGAMOSphereに加え、最終的な完成形のデザインも展示された。より強固な印象で、面的に樹脂でドローンを覆った設計となっており、デザイン性にも注力している。

配管点検・災害現場・レース活用まで!広がる用途と期待

 HAGAMOSphereの主な用途は、配管内などの狭小部の点検や災害現場での詳細な状況確認といった実用面に加え、ドローンレースといった競技への応用も期待されている。今年1月には、米国ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展示会「CES 2025」にも出展され、ドローン部門でイノベーションアワードを受賞するなど、国際的にも注目を集めている。

 DICのAIデバイスグループマネージャーである森氏は、「2026年末の発売を目指して開発を進めています。DIC単独ではなく、多くの異業種と協業しながら製品化を実現していく予定です。今回の展示会への参加も、そうしたパートナーとつながることが大きな狙いです」と意欲を語った。

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