大手機械・自動車部品メーカーのJTEKT(ジェイテクト)は、独自に開発したフライトコントローラーや高出力電源基板、リチウムイオンキャパシタを展示。現時点で具体的な製品化の計画は未定としながら、今回の出展の中で来場者の反応を見ながら市場性などを検討していくとしている。
自動車部品の技術を応用した国産フライトコントローラー開発
ジェイテクトは自動車のパワーステアリングシステムで「日本国内では約半分、海外でも約4分の1」(説明員)という大きなシェアを持つなど、自動車産業を支える大手企業である。そんな同社は2023年春にプロドローンに資本参加しているほか、愛知県が推進する「あいちモビリティイノベーションプロジェクト~空と道がつながる愛知モデル2023」に参画するなど、近年、ドローンの分野にも進出。
「人間がステアリングの操作をする微妙なトルクを検知してモーターを動かすというベース技術はドローンの姿勢制御に近い」(説明員)といい、2024年9月にはジェイテクトが培ってきた電動パワーステアリングの技術をもとに、ドローンのフライトコントローラーの開発に着手したと発表している。
今回のブースではこの開発中のフライトコントローラーを展示。STマイクロエレクトロニクスのマイコンに、3個のIMUや気圧センサー、磁気センサーなどを組み合わせたもので、高い応答性や信頼性と、国内生産という点を特長として挙げている。すでにプロドローンと共同で、このフライトコントローラーを搭載したドローンによる飛行テストを行っているといい、今回の出展では国内外のドローンメーカー関係者の感想を聞きたいという。想定される飛行時間や温度範囲といったスペックだけでなく、「どういった機能をどのレベルまで求めているのか、求められる数量はどのくらいか、といったコスト面の意見も聞きたい」(説明員)といい、来場者からは“国産”や“品質”といったキーワードへの関心が高く、「ある一定程度の需要はある」(説明員)と見込んでいる。
大電流対応の特性が、風や不測の事態に強いドローンを支える
同社では新規事業のひとつとして、リチウムイオンキャパシタを製品化している。キャパシタは二次電池の一種で、蓄電容量は小さいものの、リチウムイオン電池の約10倍もの大電流で充放電できるのが特徴。自動車の補助電源や医療機器をはじめ、さまざまな機器で利用されている。
2019年に量産を始めたジェイテクトの高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy」は、-40~85℃という幅広い使用温度範囲や耐久性、安全性が特長だといい、同社の電動パワーステアリングのバックアップ電源としても採用されている。自動運転車で主電源が落ちた時にでも、路肩に寄せて安全に停車するまでの電力を供給するといった形で利用されており、「この“電源の冗長性”の考え方はドローンでも主電源を失った時に、安全に着陸させるといったことに役立てることができる」(説明員)という。
また、瞬間的に大電力を取り出せるというキャパシタの特性を生かし、変化の大きな風の中でも機体姿勢を維持する際にバッテリーが供給する電力を補うといった用途も見込まれている。2022年にはロボデックスの水素燃料電池ドローンに搭載され、燃料電池が苦手とする大出力供給や、電力変動の吸収を担っている。
このリチウムイオンキャパシタについては、「電源の大きな出力変化をどうコントロールするか、という技術的な課題を抱えるかなり大型のドローンのメーカーから関心を集めている」(説明員)といい、フライトコントローラー同様、今後の市場性を引き続き検討していくとしている。
