パーソルテクノロジースタッフ株式会社は、do株式会社と共同で、ドローンによる新規事業の立ち上げや関連事業に従事しているユーザを対象に「気象分野から考えるドローンの未来」というセミナーを開催した。会場には、すでにドローンを活用している企業から、新たに参入を計画している事業担当者などが集まった。

ドローンビジネスの可能性を垣間見るセミナー

 今回で5回目となる パーソルテクノロジースタッフのドローンセミナーは、「ドローンとは何か?」をはじめとして、「その可能性は?」、「取り巻く環境はどうなっているのか?」というドローン業界からの視点と、既に事業化している活用事例の共有などにより、ドローンをビジネスに活用するための知識・ビジョンを伝えてきた。

 今回は、メインの講演者に株式会社ウェザーニューズ SKY(航空気象コンテンツサービス)グループリーダーの高森 美枝 氏を招き、「気象分野から考えるドローンの未来 ~ドローン向け高精細気象予測と有人機との衝突回避について~」と題するセミナーが開催された。

ウェザーニューズのDrone Business Project

 続くセッションでは、高森氏が2016年に社内で立ち上げたDrone Business Projectや、気象分野から考えるドローンの未来について講演した。
 高森氏は「当社は、天気予報を通して、さまざまな産業の安全と快適を守るお手伝いをしてきました。現在は、航空会社や鉄道事業者に、高速道路や小売店、イベントや報道機関、モータースポーツ、太陽光発電、そして除雪体制の判断支援など、44の市場に気象予報サービスを展開しています」と事業の概要を説明した。

ウェザーニューズ SKY (航空気象コンテンツサービス)グループリーダー 高森 美枝 氏

 気象予報を主力事業に展開する同社が、ドローン関連のプロジェクトを立ち上げるきっかけは、建設現場からのニーズだったという。高森氏は「当社は建設現場に向けた降雨のコンサルティングを担当していました。その建設現場が、ドローンを利用するようになると、『飛ばせる気象状況』への問い合わせが増えてきたのです。その他にも、ダムなどの施設点検で『飛ばせますか?』という要望も出てきました」と背景を振り返った。

 34年前から航空気象サービスを提供してきた同社は、エアラインを中心に1日で13,000フライトに気象情報を提供している。エアラインは、高度1万メートルの空域になる。それに加えて、高度300〜600メートルを対象としたドクターヘルや消防防災ヘリに向けた航空気象サービスも提供している。そして、2016年からは150メートル以下の低空域を対象としたドローン向けのサービスを構築してきた。

ドローン向け高精細気象予測と有人機との衝突回避

 ドローンを安全に飛行させるための条件について、高森氏は「機体、通信、地図、管制、気象」の5つを指摘する。その中で、ドローンの事故原因として「気象」によるものが昨年度1年間で約5%に及び、その中でも「風」の影響が大きいと高森氏は分析する。気象予報士でもある高森氏は、気象サービスにおける「予報」と「確報」の違いについても説明した。気象学によれば、テレビやウェブで確認できる天気予報は、10km以上の広い範囲で半日から一ヶ月先までの天候を予測するものである。「予報」が対象とする気象現象は、「前線」や「低気圧」に「台風」などが中心になる。一方で「確報」と呼ばれる気象予測は、10km未満の範囲で、6時間以内の天候を予測する。
 そのため、対象となる気象現象は「竜巻」や「ゲリラ雷雨」に「積乱雲」などが中心で、「短時間強雪」や「局地的低温」も対象となる。さらに高森氏は「フライトの前には、飛行させる地域の気象と地形は、セットで調べておく必要があります」と提言した。雲の様子や地形などから気象を正しく読み、ウェブで閲覧できる雨雲レーダーなどの的確な情報を活用して、飛行する地域の安全を確認する必要がある。

予報と確報の違い

 さらに高森氏は「2022年から、ドローンのレベル4運航が始まります。都市部には高層ビルが多いので、風の変化が非常に複雑です。高層ビルの屋上などにドローンポートを作るようになれば、細かい風の流れの情報も必要になります」と指摘する。

 ウェザーニューズでは、小型の動態管理システムを活用して、国内を飛行している250機ほどの有人ヘリや小型航空機のリアルタイムな飛行位置を把握している。その情報を活用して、飛行情報の共有システムによるドローンとの衝突防止にも取り組んでいる。高森氏によれば、国土交通省が提供する「ドローン情報基盤システム(飛行情報共有機能)」(https://www.fiss.mlit.go.jp/top)では、ドクターヘリの飛行情報などが共有され、半径9km以内に接近した際には、ドローンの操縦者に警告が通知されるようになる。
 高森氏は「障害物と悪天候の『見える化』が進んでいるので、これらの情報を収集し、ドローンの安全な利活用を期待します」と締めくくった。

ドローンの利活用が進むための課題と将来予測

 セミナーの最後には、事前に寄せられた質問に対して、do株式会社の代表取締役社長の高原氏と高森氏が回答した。最初の質問は、「ドローンの利活用が進むための課題と将来予測」。
 高原氏は「法律的な観点と技術的なところは、進んできている。あとは、産業で必要性を感じているかどうか」にあると指摘し「実際の産業に⾝を置く⼈へドローンのメリットが伝えきれていない」ことに課題があり「現場に対して、より明確なメリットを伝えていくこと」が重要だと指摘する。

 高森氏は「企業からの相談で多いのは、ドローンの安全性を保てるのかどうか」と回答し、「資格は取ったけれども、安全に飛ばせるのだろうか」と不安視する現状を話す。そして「安心感を持った情報を届けられるか、そこが整備されていけば、安心してドローンを飛ばす企業も増えていくのではないか」と予測する。