このシリーズでは、ドローンを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する方法について解説しています。前回は、DXの取り組みを「現業の効率化」「DX準備期間」「DX期」という3つの段階に分けて、その第1段階である「現業の効率化」に焦点を当てました。今回は次の「DX準備期間」について考えてみたいと思います。

DX準備期間のアクション

 前回の業務効率化によって得られた時間を活用してDXの準備を進めるステージになります。では、何をどのように進めていけば良いのでしょうか。まず以下の項目について深く掘り下げてみることをお勧めしたいと思います。この段階でやりたい事や方向性が決まっている場合にはこれを省略してもかまいませんが計画全体の骨子を整理するつもりでぜひ試してみてはいかがでしょうか。

DXの手がかりを見つけるためのアクション(1)

1、社内のドローン活用業務を分析し、保有する技術を評価する。
2、同業他社のドローンに関する活動内容を調査する。
3、現存するドローンと関連システムの機能と性能を調査する。
4、自社の事業領域を可視化する。
5、自社の強み(得意とする分野)を再確認する。

 これによりドローンの機能と性能の限界、そして自社内における既存事業が業界内でどの位置にあるのか、また自社の強みはどこなのかが明確になると思います。これらの要因を正しく理解することが新たな可能性を模索するためのベースになります。

DXの手がかりを見つけるためのアクション(2)

1、ドローンが活用されているあらゆる業界をくまなく調査する。
2、自社のドローン活用技術が活かせる業種を模索する。
3、自社の技術が活かせる業種ですでに活躍している企業の活動内容を調査する。

 ここでは異業種にも範囲を広げて既存事業に通じるドローン活用分野を調査する手順になります。アクション(1)は、既存事業領域を垂直方向に、アクション(2)では水平に領域を広げて手がかりを探るといったイメージです。

写真測量分野の例

 この会社は不動産業者や自治体などに対して土地や建造物敷地の測量を行うことを主な事業としています。3年前にドローンを導入して写真測量を中心に現在ではほとんどの仕事でドローンを活用しています。さて、早速チームメンバーがアクション(1)と(2)から以下のような結果を得ることができました。

ドローンを活用した写真測量技術は他社に劣らない。
3Dモデリング技術は当社の強みと言ってもいいのではないか。
まだ事業化してはいないが「レーザー測量」に取り組むための基本技術は整っている。
異業種で当社の強みが活かせる分野が多数あることが確認された。
他社のドローンによる取り組みの中に社内でも活かせるものが多数見つかった。
 など

 この結果、既存事業を深掘りする材料として「ドローンによるレーザー測量分野」がその可能性をのぞかせました。そして異業種においては、多くの分野で既存事業が活かせるということが判りました。その一部をまとめて図にしてみました。以下の参考図をご覧ください。

参考図(この内容はあくまでも例としてご覧ください)

 この図はドローン業務で必要な「技術」に焦点を当てて表現したものですが「ドローンの性能」や「人的リソース」など多面的に分析を行うことによって、より精度の高い結果を出すことができます。また、得られた結果は見た目で感じ取れるように、できるだけ図や表などを活用することをお勧めします。アイディアの創出は決して容易なわけではありません。結果はポジティブな事柄ばかりとは限らないですしネガティブな側面も出てくると思います。しかし分析で得たものは今後の事業推進のための貴重な情報ですので、いつでも活用できるように情報を整理して保管しておいてください。アイディア創出の際によく使われるフレームワークを利用する場合などでも、ここで得た結果を有効に活用すると良いでしょう。

既存事業再確認からの未来への展望

 実際に計画立案を行う際には、関わる人や機材を含めたリソース全体の状況や既存事業が置かれている状況、そして確保できる予算など社内事情によるさまざまな要因を熟慮して計画を立てることになります。たとえ事業領域を広げたとしても生産性が向上しなければ良い結果は得られません。リソースが散漫になりむしろ生産性が悪くなった、という結果にならないように細心の注意を払い検討する必要があるでしょう。関係者が集うミーティングの場では、ここで得た結果を利用して大いに議論を交わして頂きたいと思います。

 今回は、既存事業を再評価し、事業発展のきっかけを見つけるためのアプローチの一つを紹介しました。ドローンはデジタル技術による精密な位置情報を使い正確な飛行制御と高度な空間掌握能力を発揮する多目的なツールです。そのためさまざまな分野でその成果が積み重ねられてきました。しかしこの産業はまだ発展途上であり、その運用は決して誰でもできる単純なものではありません。おそらく未だ多くの産業利用の芽が埋もれていることでしょう。既存事業を推進する過程で得られた経験やノウハウは貴重な資産ですので、それを活かして将来の可能性が広がる素晴らしい計画を導き出して頂きたいと願っております。

 次回は、約10年間ドローンを活用し続けた結果、変身を遂げたとある企業の実例を紹介したいと思います。

株式会社デジタルパレット
https://digipale.jp

慢性的な人手不足やウィズコロナ時代の中で、特に中小企業においては、採用活動、営業手法、工程管理、テレワーク対応など、業務改革の必要性に直面している。これを踏まえ、株式会社デジタルパレットは、国が後押しするDX(Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション)とベクトルを合わせ「DX学校の運営」や「ITコンサルティング」を通して課題解決の支援事業を推進している。
事業内容:DX学校運営/IT活用コンサルティング/システム開発/WEBサイト制作/人材育成
神奈川県川崎市中原区小杉町3-600コスギサードアヴェニュー2-29