2023年8月7日、大成建設は、スマートロボティクスと共同で、建設現場における自律走行清掃ロボットシステム「T-CleanX」を開発したことを発表した。マッピングやティーチングなどの事前準備が不要で、ロボットが移動経路を自動生成し、作業環境が日々変化する建設現場を効率よく清掃する。
3つの清掃機構(水平回転ブラシ、かき上げ回転ブラシ、吸引機構)を装備した荒清掃用ロボット「ARAMECLEAN(あらめくりん)」と、強力な粉塵吸引能力を持つ中間清掃用ロボット「KOMAMECLEAN(こまめくりん)」の2機種を使い分けることで建設現場の幅広い清掃用途に対応し、清掃作業の大幅な省人化と効率化を可能とする。
建設現場では、安全な作業環境を維持するために、各種工事の前後に清掃作業を行う。また、塗装などの特定工事の前には粉塵をきれいに取り除く必要があり、入念な清掃作業が求められる。こうした清掃作業は従来、ブラシや掃除機を用いた人力に頼っており、作業員の負荷増大につながっていた。
建設現場の清掃では、木端や釘など比較的大きなゴミや大量の粉塵への対応に加えて、工事進捗により作業環境がその都度変化する現場特有の課題があり、汎用的な清掃ロボットの適用は困難となっていた。また、従来の工業用清掃ロボットは決まった空間での使用を想定したものが多く、カラーコーンや反射板、マーカー等の設置による清掃範囲の指定や、事前のマッピングやティーチングにより清掃エリアを指示する必要があった。そのためロボットの機能に合わせた手間が負担となり、建設現場に導入しても清掃作業の省力化や効率化を実現するような十分な性能は発揮できず、普及が進んでいなかった。
今回開発した自律走行清掃ロボットシステム「T-CleanX」は、事前準備が不要な自律制御システムを搭載しており、建設現場特有の作業環境に適応して無人で清掃作業を行うことができる。荒清掃用と中間清掃用の2機種のロボットは、首都圏内の建設現場に技術実証のために導入され、その性能と実用性を確認している。
自律走行清掃ロボットシステム「T-CleanX」の特徴
事前準備が不要で簡易かつ直感的な指示により自動清掃を実施
複数のセンサーを活用したSLAM技術により移動経路を自動生成し、障害物を検知・回避しながら自律走行する。マーカー等の設置のほか、マッピングやティーチングといった事前準備は不要。タブレットに表示された図面上で清掃エリアや進入禁止エリアを指定し、スタートボタンを押すと、指定範囲の全域について効率のよい経路を自動生成して清掃を行う。走行中に検知した障害物は記録するとともに回避ルートを自動で再生成するため、作業環境が日々変化する建設現場の清掃を効率的に実施できる。また、ロボットに搭載したバッテリーは大規模災害時の非常電源として活用できる機能も有している。
2機種のロボットにより幅広い清掃用途に対応
荒清掃用と中間清掃用の2機種のロボットで構成され、建設現場での清掃用途に応じた幅広い清掃作業に適用する。
荒清掃用ロボットARAMECLEANは、水平回転ブラシ、かき上げ回転ブラシ、吸引機構の3つの異なる清掃機構を装備した万能型。木端や釘、ビスなどの比較的大きなゴミから粉塵までさまざまな清掃対象物を1台で収集することができる。
中間清掃用ロボットKOMAMECLEANは、微細な粉塵も除去する吸引特化型。強力な吸引能力を持つ清掃機構(技術協力:スイデン)を搭載することで、従来作業員が行っていた清掃状態と同等の仕上がりを達成した。
愛称 | ARAMECLEAN(あらめくりん) 略称:あらめ | KOMAMECLEAN(こまめくりん) 略称:こまめ |
外観 | ||
本体サイズ | 長1024×幅780×高790mm | 長994×幅790×高1204mm |
本体重量 | 100kg | 330kg |
走行速度 | 0.3m/s(手動時0.5m/s) | 0.3m/s |
連続稼働時間 | 約3時間 | 約3.5時間 |
今後は、同ロボットの制御システム、安全システム、BCP(事業継続計画)対応等の機能を拡張し、より効率的かつ効果的な清掃作業を可能とする自律走行清掃ロボットとして建設現場での普及・展開を促進する。また、清掃時に水を併用した機構の開発等も行い、清掃能力のさらなる向上を図るとともに、物流施設等での活用を可能とする大型清掃機種の開発にも取り組むとしている。