「DX」の推進は、変化の激しい時代のなかで市場の競争優位性を生み出す重要なテーマとして産業界で広く認識されるようになりました。しかし、「そろそろうちの会社も取り組みたいがいったい何をやれば良いのか」「取り組む価値は本当にあるのか」など、疑問を持つ経営層もしくは管理層の方々も少なくないのではないでしょうか。実はドローンを活用して業務の効率化に取り組んでいる皆様にとって「DX」は決して他人事ではありません。なぜならドローンそのものが「DX」を推進する上でとても重要なツールになり得るからです。ここでは(当連載では)皆様がドローンの真価を発揮する事ができるように「DX」の取り組みについて紹介して参りたいと思います。
意外と理解されていないDXの3ステップ
「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」と言われるもので「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説を表現したものとされています。このトランスフォーメーションの「Trans」には「交差する」という意味があり、それを1文字で表す「X」を用いて「DX」という略語が使われるようになりました。経済産業省が2018年に発表したDX推進ガイドラインでは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
もう少し理解しやすいように3つのステップに分けて解説します。はじめのステップは「アナログで行っていたものをデジタル化する」で、これを「デジタイゼーション」と言います。例えば顧客管理を台帳など紙媒体で行っていたものをエクセルシートに置き換えるなどがこれにあたります。2番目のステップは「デジタル技術を使って業務そのものの効率を上げる」です。これは「デジタライゼーション」と言い、例えばデジタル化した取引先データを活用して顧客や業者との受発注処理を行えるようにし業務効率を上げることなどを指します。そして3番目が「ビジネスモデルそのものや企業全体を変革して新たな価値を創る」で、これが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と定義されるステップになります。例えばデジタル化された取引情報などを元に「AI」がいつ誰に何がどれくらい売れるのかを予測し、仕入れ判断やマーケティングを行って利益構造を強化するなどビジネスモデルそのものを変革させ競争力を強化する、といったものになります。(図1)
このように、単にものごとをアナログからデジタルへ変えるだけでは「DX」とは言えない訳ですが、一方でこのデジタル化は「DX」を推進する上で取り組むべき最初のステップと言える訳です。
国が懸念する“2025年の崖”を打開するDX推進
国がDXを推進する理由の1つに「2025年の壁」というものがあります。これは、今まで使用してきたシステムの老朽化が進んでいるにもかかわらず、慣れ親しんだシステムだという理由で長期間これに依存してしまったために、システムがブラックボックス化してしまい、改善するにも新システムへの移行がなかなか進まず、時代遅れのシステムを使い続けることによって2025年以降、最大12兆円の損失が生まれると試算されるというものです。国はこの事態を打開するためにも産業界のDX推進を後押ししているのです。
どう取り組むべきか分からない、「DX」推進に対する課題
さて、「DX」への取り組みは、その必要性こそ理解されてはきたものの、いくつかの課題によって十分に進展できないという面も指摘されています。その1つに「人材不足」が挙げられます。会社のレガシーをよく理解していながら、最新技術に長けた人材を保有している会社となると限られた企業となるため、そのような人材の育成や投与が必要とされています。
また、社員のDXに対する理解不足が原因でDX推進に対する思わぬ抵抗に合ってしまうようなケースもあります。DXは会社全体で事業そのものに変革を起こす取り組みですから、経営層が自らDXに対して正しい認識や理解を持ってリーダーシップを発揮する必要があります。具体的なゴールや戦略を策定しそれを会社全体で共有、必要な資源の投入をタイムリーに行うなどは所管部門と密にコミュニケーションを取ることが重要でしょう。
DXを推進しやすい環境にあるドローン事業
ドローンは一種のIoTデバイスであり、そしてその能力を思い合わせれば、デジタル技術を覚醒させられる可能性の高い優れたツールの1つであると言えます。業界では、エンターテイメント、農業、建物・インフラ点検、測量、災害対応、警備などの分野においては、積極的にドローンが採用され、業務効率の改善などその効果を発揮しており、各方面のプレーヤーの皆様はその効果を体感していることと思います。ドローン事業は上述の図1のステップ2の「デジタライゼーション」のステージにあると言えるでしょう。加えてこの業界は、ドローンオペレーターという特殊な技能を持つIT分野における貴重な人材を有しています。アイディア不足や人材不足に悩む他の業界に比べてブレークスルーを起こす環境は大いに整っていると言えるでしょう。
国も後押しするこの機会に、ドローンという優れたデバイスを最大限に発揮するために、ぜひもう1つ上のステージ「ドローンを使ってビジネスモデルそのものや企業全体を変革して新たな価値を創り競争上の優位性の確立を目指す」にチャレンジしてはいかがでしょうか。
ここでは(当連載では)他の業界の成功事例なども紹介しながら、ドローンとDX(デジタルトランスフォーメーション)について考えて参りたいと思います。
株式会社デジタルパレット
https://digipale.jp
慢性的な人手不足やウィズコロナ時代の中で、特に中小企業においては、採用活動、営業手法、工程管理、テレワーク対応など、業務改革の必要性に直面している。これを踏まえ、株式会社デジタルパレットは、国が後押しするDX(Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション)とベクトルを合わせ「DX学校の運営」や「ITコンサルティング」を通して課題解決の支援事業を推進している。
事業内容:DX学校運営/IT活用コンサルティング/システム開発/WEBサイト制作/人材育成
神奈川県川崎市中原区小杉町3-600コスギサードアヴェニュー2-29