2024年3月21日、Casley Deep Innovations(キャスレー ディープ イノベーションズ)は、岐阜県岐阜北警察署が実施する災害救助訓練において、Starlink衛星通信からのハイパー・セキュア・ネットワーク(※1)によるリアルタイム映像同時配信と、データ秘密分散を活用してマイクロドローンを含む複数機の目的別ドローンを連携させた、倒壊家屋からの救助訓練を実施したことを発表した。実施主体は昭和テック。Casley Deep Innovations、VFR、Spicy Drone Kitchenの3社がその支援を行った。

※1 ソフトウェアによる暗号化、秘密鍵、生体認証、閉域化等と、ハードウェアによるHW Wallet、専用制御ルーター等を組み合わせた、Web3.0型で実行されるネットワーク技術・方式。

 令和6年能登半島地震では多くの建物が倒壊・半壊等の被害を受け、要救助者の捜索のため危険度の高い建物に侵入しなければならなかった。また、通信が途絶して情報収集が困難となり、現場では建物倒壊の危険性把握も難しく、余震などで救助隊への二次被害の懸念があった。

 こうした状況でもできるだけ安全かつ迅速に救助活動が行えるよう、複数の目的別ドローンを連携し、不感地帯における通信確立とセキュアな閉域通信の確保、建物の外観診断による安全性確認、屋内の要救助者発見を目的に救助訓練を実施した。

訓練の概要

 訓練は、地震で通信が途絶した不感地帯において、倒壊の恐れがあるマンションに住民が取り残されたという想定で、救助隊が救助パッケージを迅速展開、小型ドローンによる上空からの建物の倒壊危険性の診断を行い、人が立ち入ることが困難な状況下での屋内捜索をマイクロドローンを用いて実施した。

1. 救助隊による救助パッケージの迅速展開

 救助パッケージは、Starlink可搬バックパック、ポータブル電源や通信システムなど各種装備品を入れたバックパック、ドローン運搬用ケースの3点。

 人員2名が現場到着から約5分で衛星通信を閉域化(ハイパー・セキュア・ネットワーク)し、DiCaster Police(以下、ディキャスターポリス)(※2)による映像通信・本部連携(ハイパー・セキュア・ストレージ)(※3)を確立後、ドローンを展開した。

※2 大規模イベントにおいて高度なセキュリティを確保しながら、安定した通信によって複数台のカメラをリアルタイムに映像伝送し、大規模雑踏警備を支援するソリューション。

※3 ソフトウェアによるP2P/M2M化、断片化、暗号化、分散化、秘密鍵および復号化、非同期化等による機密化、非検閲化、ハッシュ、ブロックチェーンによる真実性保証とトラッキング等、ハードウェアによるHW Wallet、専用NAS等を組み合わせた、Web3.0型で実行されるデータ連携・保管のための技術・方式。

救助パッケージ

2. 建物の倒壊危険性診断・屋外からの要救助者捜索

 外観診断およびベランダからの要救助者捜索を目的に、ACSL製ドローン「SOTEN(蒼天)」を飛行させ、建物の外観にひび割れや傾きなどの損傷がないか、また、取り残された要救助者の有無をベランダ越しに確認し、3階建ての建物12戸のうち2階および3階の計2戸を特定した(捜索は人員2名で約10分)。

 SOTENからの映像はディキャスター・ポリスを用いて、指揮本部を想定した訓練テントにリアルタイム伝送し、現場から離れた指揮本部でも同時に情報連携が可能なこと、その映像から災害診断の専門家が遠隔でアドバイスが可能なことを確認した。

SOTENを飛行させる様子
建物の外観

3. マイクロドローンによる屋内での要救助者捜索

 内部に取り残された可能性のある2階、3階の計2戸について、上空からSOTEN(蒼天)の誘導支援を受けながらマイクロドローン「SDK」が屋内に侵入、障害物を回避しながら各部屋を探索し、要救助者を発見した(人員2名でそれぞれ約5分×2回の飛行)。

 SDKからの映像はディキャスター・ポリスで指揮本部を想定した訓練テントにリアルタイム伝送し、本部からの指示で捜索箇所を伝達したり、現場と本部での連携が可能なことを確認した。

 また、AIによるオブジェクト解析により、人体の一部/全部/顔識別が可能であり、パイロットだけでなく補助者や遠隔地の支援者が映像を見ながら対応できることを確認した。

SOTEN(右上)とマイクロドローン(左下)
要救助者を発見

 今回の訓練では、現場到着後、安全な位置を確保して約25分で要救助者2名を発見し、救助の様子を遠隔地の指揮本部・専門家・支援者にリアルタイム伝送、救助部隊が連携して救助活動を行えることを実証した。これまで人員2名ではできなかった建物の被害状況確認や救助のための侵入、各部屋の確認、要救助者の確認を行う捜索活動が可能であるという成果を得た。

 従来は警察官や消防隊員・自衛隊員が建物の被害状況を判断していたが、遠隔地にいる専門家の意見を聞くことができ、建物に侵入せず安全な位置から短い捜索時間で要救助者を発見できた。災害対策本部への情報共有による指揮の効率化・迅速な意思決定、隊員の安全確保・正確で効率的な救助計画立案など、後方支援活動の強化につながることが期待される。