2022年12月21日、エバーブルーテクノロジーズは、同社が参画する国土交通省実施の「令和4年度スマートアイランド推進実証調査業務」において、2022年11月21日より2回目の実証調査を実施したことを発表した。

 この取り組みは、同社が酒田市、とびしま未来協議会、NTTデータ経営研究所、東日本電信電話 山形支店と共に運営するコンソーシアム「飛島スマートアイランド推進協議会」が採択を受けたもので、2022年9月に第1回目の実証調査を実施している。

 同社は小型ヨット型ドローン「everblue AST-231」を使い、無人自動操船、運搬・海洋調査、海上パトロールを担当。同帆船型ドローンを無人操船で自動航行させ、生活物資や海ゴミの運搬、遠隔海上パトロールを実証することが主な実験内容となる。

実証実験の様子

実証実験概要

 今回の実証実験では、前回の実験時に得た知見を元にいくつかのアップデートを行い、再度安定した長距離航行、実装に向けたテストを実施した。

 海況により帆を操作するウインチの動作が不安定になる可能性があるため、新設計と実装にて解消し、安定性や安全性の向上を確認。消費電力を抑え長時間航行を可能にするため、モータードライバの設計変更により安定動作を実現し、消費電力を1/4にした。また、LoRaを利用した直接通信、テレメトリーの実証を行った。

実証実験結果

自動航行距離:前回の3倍以上となる19km(10海里)の無人自動帆走
 酒田港を伴走船に曳航されて出航、酒田港湾外で切り離し自動帆走に切り替え、追い風で17km、向かい風で2kmの合計19km(10海里)を無人で自動航行した。前回実験時に航行した6kmの3倍以上となり、理論上の最長航行距離は約570km(300海里)に達することを確認した。

 また今回、弱い向かい風でも航行できたことで、風向や風速に左右されやすい帆船であっても航路や海況に比較的柔軟に対応できることを証明した。

自動航行時間:約9時間、トラブル無しの連続稼働
 同社の無人航行稼働時間として最長時間を記録し、100時間程度の連続稼働が可能なことを確認した。今後ソーラーパネルなどの補助充電装置を搭載することで、理論上、無寄港、無充電で無限に航行することが可能。

総電気量:2.4円
 今回の約9時間の自動航行において、制御装置(ロープを巻くウィンチ、ラダーを動かすためのバッテリー)が消費した電力量は87Wh、電気代に換算して2.4円と、大幅な省電力となった。

 風力をダイレクトに推進力に変える自動帆走テクノロジーは地球温暖化ガスの排出量がゼロで環境に優しく省エネルギーであり、かつ電気代もほぼかからないため輸送コスト削減にもつながる手段であることが実証された。

酒田市内から14.7kmの直接通信、位置情報のテレメトリーを実証
 AST-231に標準搭載している4G/LTEを使ったテレメトリーの他、LoRaを使った通信回線でAST-231の位置情報を酒田市内の移動局に転送、テレメトリーできることを証明した。今後4G/LTEのサービスエリア以外でも長距離のテレメトリーや遠隔操作を実現することが可能となる。

無人自動帆走時の風速/速度
最大風速5.4m/s
平均風速2.3m/s
最高速度3.1m/s(11.16km/h)
平均速度1.7m/s(6.12km/h)
航跡44kmのうち19kmを無人自動帆走。左上の島が「飛島」。(地図:Google Earth)
実証実験の様子

 今回航行テストを行った酒田港―飛島間は、通常から定期便の欠航が多いなど不安定な海域であり、条件の厳しいエリアであったことから、国土交通省、海上保安庁などの指導のもと安全を重視した実証実験となったが、運用につなげられる前向きな成果が実証された。

 また同社は、海上の貨物輸送や警備監視、海洋資源調査など、酒田市のケーススタディと同様の課題を抱える離島や沿岸部の自治体、地域の課題解決にも貢献したい考えだ。

 今回の実証実験の結果を受け、ローコストかつ安定して長時間に渡り水上にとどまり移動できることから、航空ドローン、水中ドローンの活動域の拡大につながる「ドローン母艦」的な活用も期待できるという。同社は今後さらに、外洋、荒天に耐えられる離島向け貨物船ドローンなどの開発に注力していくとしている。