2022年3月18日、日本DMCと静岡県立農林環境専門職大学(以下、専門職大学)は、レーザー計測機器(可搬ライダー)を森林調査に活用するためのノウハウを明らかにし、調査の精度や効率を格段に向上することに成功したことを発表した。また同技術を、専門職大学における実習や研究において先端技術の学習のために活用した。

 同技術では、可搬ライダーを使用して高密度点群データおよび360度動画データから樹木位置、樹種、胸高直径の調査結果を取得。400平方メートルのプロット調査を30分で完了する。

 両者は2021年5月から、可搬ライダーを活用した森林調査法の開発と先端技術教育について共同研究を行ってきた。

 森林・林業は、持続可能な開発目標(SDGs)や地球温暖化防止の観点から注目が集まっている。森林を適切に管理していく基礎的な作業となる現況把握は、従来の人力による手法では限界があるため、情報技術を活用した効率的で精度の高い調査手法が期待されている。そのため同技術を次世代に普及する必要があり、人材育成も欠かせないという。

 この取り組みでは、最先端のレーザー計測機器を活用して効率的かつ高精度に森林調査を行う方法を検討した。

計測準備

 計測機器は、可搬ライダー(バックパック型ライダー)「LiBackpack DGC50」など。ライダーはレーザー照射に対する反射を測定し、対象物までの距離や形状を分析する技術である。可搬ライダーは、機器を背負って調査地を歩きまわることで、周囲の建物・樹木の形状や地形を3次元で記録する。同機器は、GNSS(GPS)による位置推定、IMUによる位置推定、LiDAR SLAMによる位置推定の3つを統合する処理により、歩行時の揺れを吸収した計測が可能だ。

 今回の取り組みにより、20メートル四方(400平方メートル)の森林調査地を計測するために適した手順を明らかにした。従来の方法では点群データの歪みやノイズの発生があったが、適した手順で行えばこうした不具合が起こりにくくなる。これにより誰でも調査が行えるようになり、データの品質が向上したことで木の直径の計測精度が約2cm向上した。

 この方法により、400平方メートルの森林調査(樹木位置、樹種、胸高直径の調査)の現地作業を30分で完了することが可能となる。

全体の点群データ(反射強度)
点群データ(RGB)
点群データ(反射強度)
ソフトウェアデフォルトのデータ処理設定による幹断面の点群(赤色)と、改良したデータ処理設定による幹断面の点群(薄青色)。赤色の点群形状は実際の幹より小さく、変形したり潰れたりする結果が比較的多いという。

 また同技術について、専門職大学における実習や研究において先端技術の学習のために、浜松市北区の演習林に生育する木の資源量の調査を行い、従来の調査方法と比べた労力の違いなどを学生が体験した。