2021年12月17日、パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、岩手県が取り組む「岩手県中山間地域におけるドローンを活用した地域課題解決に係る実証実験等業務」を、2年連続で受託したことを発表した。ドローンをはじめとするテクノロジーの活用により、地域住民の生活の質の向上や地域産業の維持実現を目指す。

 今回の取り組みでは、岩手県が描く「ドローンによる活力ある中山間地域まちづくりの実現」に向けて、物流システムの構築や森林資源の把握方法の検討、ドローンの担い手育成などの普及啓発活動を行う。契約期間は、2021年9月29日~2022年3月14日となる。

 岩手県では人口減少が進み、特に中山間地域や過疎地域では少子高齢化が急速に進行している。実施地域となる岩手県下閉伊郡岩泉町は、食料品アクセス困難人口(店舗まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上高齢者)の割合が県内で最も高く、全国的に見ても非常に高い水準だという。林業が盛んな地域だが、少子化に伴う担い手不足や林業従事者の高齢化によって生産性が低下し、事業の継続性が課題となっている。

 岩手県では、2025年度のドローン本格運用を目的としており、2020年度、2021年度に同社が継続して支援を行っている。

今年度の実施内容

1. 中山間地域の物流システム構築
 飛行ルートの調査、機体の選定、生活用品の配送飛行における受発注システムの試行と要件定義および、その実証実験を実施する。配送量・移動距離の拡大を図り、また受発注システムや運行管理システムとの連動による自動化を支援することで、買物弱者の課題解決を目指す。

ルート1:岩泉町中心エリア(背景画像:Google, ©2021 CNES/Airbus、Landsat/Copemicus、Maxar Technologies、Planet.com、地図データ)
ルート2:安家エリア(背景画像:Google, ©2021 CNES/Airbus、Landsat/Copemicus、Maxar Technologies、Planet.com、地図データ)

2. 森林資源管理
 地域の主力産業である林業では、昨年度、岩泉町小本地区内にある樹木のうち、商用価値の高いナラの木を判別するための森林調査を空撮で行った。今年度は、昨年度撮影して生成したオルソ画像から、さらにナラの木の群生エリアを特定するためのルートの策定、詳細な撮影を実施した。また、これまで人が運んでいた苗木の運搬をドローンで代替えすることで、運搬にかかる労力・時間を減らし効率化する。
 これらの取り組みにより生産性向上を図り、林業継続のための課題解決を目指す。

小本地区内における森林調査と苗木運搬の飛行ルート(背景画像:Google, ©2021 CNES/Airbus、Landsat/Copemicus、Maxar Technologies、Planet.com、地図データ)

3. 普及啓発活動
 地域住民に向けたドローンの操縦体験、ドローンを活用した物流業務の講習、バッテリーの交換や配送ボックスへの積載など物流時の運用レクチャーを実施。また、子どもたちにドローンを目にする機会を提供するため、講習会は地域の小学校体育館で実施し、中山間地域の物流システム構築の実証実験におけるドローンの発着は、小学校の校庭で行った。今後も住民を交えた活動により、地域の担い手育成を進める。

実証実験の様子

2020年度、2021年度の実施内容

<2020年度>
物流 :LTE回線を使った自動長距離飛行(8km)の物資輸送を検証
林業 :森林調査の結果、ナラの木を判別できる可能性を確認
普及啓発活動 :オンラインによるドローン活用事例を紹介

<2021年度>
物流 :実用化に向けた新規のルート策定、機体の大型化に向けた飛行検証/受発注システム導入に向けた要件定義
林業 :ナラの木の群生エリアを特定するための、より詳細な撮影を実施/苗木の運搬
普及啓発活動 :ドローンに関する講習、操縦体験/ドローンでの物流業務の講習