ドローンの新たな活用分野の1つとして林業に注目が集まっている。ドローンを使用した苗木運搬のほか、山林の境界確認や樹木管理など国が整備を進めるスマート林業においても業務効率を改善するソリューションとして期待が高まっている。これらに着目したヤマハ発動機は環境に役立つ事業への参入を目的に、従来から農薬散布機として販売している産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」による森林計測サービスを開始した。

森林と地形を可視化し、複合的に活用するレーザー測量

自動航行を可能にした産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」。エンジン排気量は390cc、飛行可能時間は約100分となる。

 森林計測サービスは、高解像度LiDARを搭載したFAZER R G2をヤマハのスタッフが飛行させ、立木の情報や森林の地形情報をデータ化するサービスだ。これまで、航空機を使って測量を行っていたが、高高度からのレーザー照射は詳細なデータが取得できずにいた。

約3000点/㎡の高密度な計測により、幹や地表面にも多くの点群を獲得。
森林の数値表層モデルでは高密度の場所を赤色で示し、間伐の目安などに役立てられる。

 一方、FAZER R G2であれば、対地高度約80mから低空での測量が可能になる。さらには、レーザーの照射角度は鉛直下向きだけでなく、斜めなどのさまざまな角度から照射が可能だ。その結果、立木に対して斜めからレーザーを照射することで、航空機で測定していた樹頂点のほか、木の直径や材積のデータまでもが取得できる。航空機に比べると行き届くレーザーの照射点数が多く、数万本の木が並ぶ森林であっても1本1本の立木情報が詳細に分かるという。

 FAZER R G2を使った森林計測のメリットは詳細な森林情報の取得だけではない。航空機による測量業務の仕様書では、1㎡あたり最低4点のレーザー照射が決められている。しかし、FAZER R G2は低高度に加え、1秒間に75万回のレーザー照射が可能。そのうちの数千点は木々を通り抜けて地面に照射され、はっきりとした地形データも取得できる。このデータは崖崩れや水が湧き出ている場所などの特定に活用される。また、数メートルの杉が100本売れるとなれば、森林情報で該当する杉の位置を特定。伐採するための道がなければ地形情報から切り開くルートを計画するなど、複合的な活用も現実的だ。

 2019年9月には日本の森林管理を目的に、森林経営管理法が改正された。新たに経営林と環境林の区分が設けられ、これまで管理の行き届いていなかった森林の管理が進められている。1回40分の飛行で20~25ha(ヘクタール)の情報を取得するFAZER R G2は、効率的に測量を行うソリューションとして活用が広がりそうだ。ヤマハ発動機は解析技術や計測手法に関する複数の特許を出願しており、業務拡大に向け力を入れている。

Best of JapanDroneアワード2021を受賞!

賞を贈呈する日本UAS産業振興協議会の鈴木真二氏と、授賞したヤマハ発動機UMS事業推進部事業開発部長の加藤薫氏。

 JapanDrone2021ではもっとも優れた商品・サービスに贈られるBest of JapanDroneアワード2021が開催。ヤマハ発動機の森林計測サービスは、JapanDroneニュービジネス部門最優秀アワードとベストオブオーディエンス部門最優秀アワードをダブル受賞した。UMS事業推進部事業開発部長の加藤氏は「出展内容に対して主催者、来場者の方々から高い評価を頂いたことに非常に感激しております。これからも森を守りつつ、ドローンを中心にさまざまな技術の進化を踏まえ、人々の期待に応え続けます」とコメントした。