第3回ドローンサミットが2024年10月1日・2日、北海道の札幌市内で開催され、北海道新十津川町の新たな取り組みが注目を集めていた。KDDIスマートドローン、全国新スマート物流推進協議会らとタッグを組んで進めている。
新十津川町は、北海道内でも最も農業用ドローンが普及している自治体だという。同町総務課企画調整グループ長の政所正人氏は、「新十津川町は、人口約6,300人、2,500戸ほどの小さな町だ。基幹産業は農業で、町が主導して平成30(2018)年から、農業用ドローンの導入を進めてきた。現在では町内農家の約4割が、100台以上のドローンを活用している」と話す。
ドローンが飛んでいても驚かない。むしろ製品や性能に興味津々。新十津川町は、このような素地を活かして、新たに「ドローンのまちづくり」プロジェクトを始動した。期間は2023年度から3年間。デジタル田園都市国家構想交付金を活用する。
「ドローンのまちづくり」プロジェクトは、KDDIスマートドローン、エアロネクスト、ACSL、電通北海道の4社と連携協定を締結して進めている。
具体的な取り組みは4つある。1つめは、ドローンの人材育成だ。KDDIスマートドローンアカデミーが直営校を開校した。同社の小林氏が家族帯同で移住し、運営を手がけている。国家資格取得コースや、鉄塔点検などの専門領域コースもあり、町内外から受講生が通う。「雇用の創出と移住・定住の促進」というプロジェクトの大目的に沿った動きがすでに見られる。
小林氏は、「新十津川は旭川と札幌の中間地点、両エリアから通える好立地だ。町内の方は農薬散布にドローンを使っているので基礎知識がある。今後もデモ会や空撮会などを通じ、ドローンを活用した雇用の創出、観光コンテンツの開発や、移住や関係人口創出など、まちづくりに取り組んでいきたい」と意欲的だ。
2つめは、ドローンを活用した買い物代行。エアロネクストらが推進する新スマート物流SkyHubの拠点が立ち上がった。高齢化が進む町内住民向けの新たなサービスが始まっている。SkyHubを運営するNEXT DELIVERY 企画部の近藤建斗氏は、「目標は空の道を20ルート開通。雪が降り始める前に、10ルートは達成したい」と話す。
3つめは寒冷地での技術開発だ。ACSLがこれから進める予定で、先行して町内にドローンテストフィールドを2か所オープンした。降雪寒冷条件下でのドローンの飛ばし込みができるフィールドは国内でも数少ない。屋内作業場も併設で、実習や演習も可能。山間部への配送実証にも活用できるという。
4つめはドローンを活用した観光コンテンツ開発。雪まつりにあわせて開催されたドローンサッカーや操縦体験のイベントには、1,000人以上が来場し、ドローン活用が観光振興にも寄与する手応えを感じているという。
また、夏休みの平日にはお盆を除いて毎日、新十津川キャンプ場の利用者向けに、バーベキュー食材のドローン配送の実証が行われ、利用意向も高かったという。初めてドローンで物品を受け取る利用者への周知の仕方、置き配したあとの後方確認などの安全性向上、またパラグライダーなど150m以内を飛行するものを包括的に通知できるシステムの必要性など、さまざまな気づきがあったという。
エアロネクストの田路氏は、「スクール、ドローン配送が同時にスタートするのは国内初だ」と話す。ドローンのパイロットの需要ができたら、すぐに人を育て、サービスを回していく。一方で、「複数のプロジェクトをちゃんとオーガナイズする存在がいなければ、結局は空中分解してしまう」とも指摘し、電通の瀬川氏らの手腕を称えた。
これに対して、新十津川町の政所氏は、「電通さんと初めてやりとりした時のボールの投げ返しが普通じゃないのを肌で感じて、信用できた。スピード感やクオリティなど学ぶところも多い。ドローンのまちづくりプロジェクトを通じて、ドローン技術の開発と活用を進め、地域の生活利便性向上と新たな産業の創出を目指す」と話した。
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