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東京都板橋区に物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が竣工した。三井不動産と日鉄興和不動産が開発を手掛け、東京23区内では珍しい工業専用地域に建設。敷地面積は約9万1,000m²、延床面積は約25万m²。ワンフロアは約3万6,000m²となり、都内最大級を誇る。
大型物流施設をドローンの点検・測量・物流の実証に活かす
本施設の大きな特徴は、ドローン技術の研究・開発の拠点となる「板橋ドローンフィールド(DF)」が併設されていることだ。施設監修と運営は日本UAS産業振興協議会(JUIDA)とドローンのソリューション提供を手掛けるブルーイノベーションが担当。MFLP・LOGIFRONT東京板橋の敷地内の四方に加え、天面をネットで覆った約650m²のネットフィールドが設置され、これを利用してKDDIスマートドローンがスクールを開校する。そのほか、物流施設の建物の外壁や、屋上全面に設置された約1万9,000m²の太陽光パネルを活用し、ドローン点検に関する実験も実施できる。また、物流施設内にドローン事業者の交流・共創に利用できるドローンラウンジがオープンするほか、屋上にはドローンの自動離着陸に対応するドローンポートが2か所設置される予定だ。
本施設は東京23区内では希少な大型実験・研究施設として期待されており、取り組む実証実験が3つ紹介されている。1つは「経済産業省中小企業イノベーション創出推進事業」に採択された「高性能ドローンポートの開発」で、汎用性、拡張性のあるドローンポートの研究開発を行う。残る2つは東京大学と三井不動産による共同研究で「非GPS環境下での安定飛行」に関する研究と、宅配サービスの増加に伴うエレベーターの混雑懸念を解消するため、「ドローンの垂直配送の検証」が取り上げられている。
板橋DFの開設に合わせて、会員制ドローンコミュニティーの開設も発表された。セミナーやネットワークイベント等の開催を予定しており、ブルーイノベーションをはじめ、PRODRONEやVFR、Cube Earthといった企業が参加を表明している。なお、個人加入の可否、会費等は未定だ。
街と一体化した施設で新たなドローンビジネス創設を目指す
なぜ、板橋にこのような物流施設やドローン研究拠点が開設されるに至ったのだろうか。
日鉄興和不動産では各地にある日本製鉄グループの製鉄所エリアで地域再生事業に取り組んでいる。例えば福岡県北九州市の八幡東地区では産官学民が連携してサステナブルな街づくりを実施し、岩手県釜石市では東日本大震災からの早期復興と新たな街づくりをテーマに再開発を行っている。
MFLP・LOGIFRONT東京板橋においては、板橋区と協議し「災害に強い安心・安全なまちの実現」「地域にひらかれ、人々が豊かに暮らせる憩いの場の整備」、そして製鉄に代わる「新たな産業機能の更新を図る」をテーマに開発を行うことになった。
事業規模が大きくなったことから、日鉄興和不動産はオフィスビル開発などで共同事業の実績がある三井不動産と組むこととした。三井不動産は2012年からロジスティクス事業に参入。「街づくり型物流施設」を標榜し、船橋(千葉県)や羽田(東京都)で開発を行ってきた。MFLP・LOGIFRONT東京板橋はその集大成と位置づけている。また、同社は新産業の創造にも力を入れるなかで、ドローン産業の発展について可能性を見出し、MFLP・LOGIFRONT東京板橋にドローン研究拠点を取り入れることとした。
10月2日、竣工式が行われた。会見には日鉄興和不動産企業不動産開発本部の加藤由純副本部長、三井不動産の篠塚寛之ロジスティクス本部長、坂本健板橋区長が出席。篠塚氏は「ドローンの産業利用は、これまで人が少ない地域での限定的な使い方という印象がありましたが、今後は都心での物流や点検、災害支援での活用が期待されています。板橋DFという産業創造の場を設け、実験研究、人材育成、コラボレーションという3つの機能を提供します」と板橋DFの活用方針を説明した。また、前述したドローンポートや垂直配送といった板橋DFで取り組む研究については、成果が出次第、内容を公表し、コミュニティーについては目標会員数などを特に決めていないと話した。
また、ブルーイノベーションの熊田貴之代表は「板橋DFは、会員のコミュニティーを通じてドローンの新たなビジネス創設を目指す場となっています。会員同士で交流しながら、敷地内で実証実験を重ねることで新たなビジネスが誕生していくことに期待しています」と話した。