eVTOL(電動垂直離着陸航空機)の開発に取り組んでいるベンチャー企業HIEN Aero Technologiesは、ガスタービンを搭載したeVTOL「HIEN 2」や将来的な開発目標である、6人乗りeVTOL「HIEN 6」に関する解説をJapan Drone 2024で行った。
eVTOL(電動垂直離着陸航空機)の開発進捗
2023年9月のJapan Drone 2023時点ではガスタービンを用いた発電システムやエンジンの発電能力や持続時間に関する実証実験を進行中であり、当時は垂直離着陸試験を予定している段階だった。
現段階の開発進捗について、HIEN Aero Technologies 開発本部 機体開発責任者の高橋玄行氏は「2023年2月にガスタービンを用いた発電試験を実施し、電力を用いて約7mから8mの高さまで飛行する実験を完了しました」と語った。
今後は、エンジンを何時間回せるかなどの耐久試験などを深掘りしてよりエンジンの性能を高めていくという。また、機体については垂直離着陸試験、地上滑走試験、前進飛行試験を予定しているとのことだ。
開発コンセプトとなるガスタービン×電力のハイブリッドシステム
HIEN Aero TechnologiesのVTOLの開発コンセプトは、ガスタービンで発電し、その電力でVTOLを飛行させるガスタービンハイブリッドシステムだ。
電力の供給はバッテリーとガスタービンを組み合わせた設計で、最も電力を消費する離着陸時はバッテリーで駆動し、巡航時はガスタービンによってバッテリーを充電する仕組みとなっている。ガソリンエンジンを使用した方が効率が良いと感じるかもしれないが、ポイントとなるのは機体のサイズだ。
ガスタービンは効率が良く、軽量であるため、大型機体に適しているのが特徴。自動車のような小型サイズの機体ではレシプロエンジンの方が効率が良いが、VTOLのような大型機体においては、空気を圧縮して燃焼させるガスタービンの方がエネルギー効率が優れている。
最終的に6人乗りeVTOL「HIEN 6」にガスタービンを搭載することを目指し、現在は小型機体で試験を行っている最中である。
HIENシリーズ機の今後の展望
HIEN 6はもともと2030年リリースを目処としていたが、開発に遅れが発生することも視野に入れ、2032年から2035年の発表を目指しているとのことだ。HIEN 2について高橋氏は「もともと実習機であり販売予定ではなかったものの、防衛用途やインフラ点検など、さまざまな用途での引き合いがあり、この先2年前後で販売を予定しています」と語った。
HIEN 2はペイロードが150kg、航続距離300km以上というスペックのため、例えばカメラやレーダーを搭載すればマルチコプターで往復が困難な長距離にわたる河川の測量なども1回のフライトで完結する。
小回りが効きホバリングも可能な機体であるため、空飛ぶ発電機として被災地支援に活用することも可能だ。
今後さらに開発が進み、HIENシリーズ機がさまざまな用途で利活用されることが期待される。
#Japan Drone 2024 記事