2022年に設立された日本のディフェンステックスタートアップAirKamuyは、空中での主翼折り畳み・展開機構を持つことで省スペースでの運用を実現する固定翼VTOL機「Σ-1」の試験用実機の展示を行った。
主翼の折り畳み・展開機構で省スペースでの運用が可能
Σ-1は、主翼と垂直離着陸用プロペラ4基、水平飛行用プロペラを1基持つリフト・クルーズ型の機体。最大の特徴は、空中で翼を折り畳み・展開する独自の機構だ。離陸時にマルチローター形態「ドローンモード」で垂直に上昇し、上空で折り畳んでいた主翼を展開して「飛行機モード」で長距離を飛行し、着陸時に再び翼を折り畳み「ドローンモード」とすることで、狭いスペースでも容易に着陸できるように設計されている。具体的には、主翼の展開時では翼幅3.5mだが、折り畳めば横幅は1.4mと抑えられる。そもそも固定翼VTOL機であるため滑走路が不要であることはもちろんだが、この機構により、都市部などの限られた場所、山間部や離島などのアクセスが困難な場所、船上や災害現場など限られたスペースでの離着陸が可能となるほか、運搬時には分解や組み立ての手間が不要で、迅速かつ簡単に運用できるのも大きなメリットとなっている。
パワーユニットは電動モデルと、電動とエンジンのハイブリッドモデルの2タイプが用意されている。両モデルともに最大ペイロードは10kg、航続距離は電動モデルが2時間の飛行で150km、ハイブリッドモデルでは6時間の飛行で450km(いずれもペイロード5kg搭載の場合)。巡航速度は80km/hとなっている。
安全保障分野での活用を目指す
長距離・長時間の飛行能力を持つ機体として開発したのは、偵察、監視、捜索救助といった安全保障分野での活用を目指しているためだという。そうしたミッションに対応するため豊富なオプション機器、たとえば、EO/IR、電波を使って地表の詳細な画像を作成する合成開口レーダー(SAR)、SATCOM、船舶自動識別装置(AIS)、GNSS、放送型自動従属監視(ADS-B)などのオプション機器が搭載可能になるとのこと。また、モジュール化することで機器の交換や更新も容易でマルチミッションに対応可能だ。
説明員によると、今後も船上での運用等も含めたテストフライトを重ね、2026年から2027年ごろまでに機体認証取得を目指しており、運用開始に向けて開発を進めていくとしている。また、航続距離1,000kmで10時間飛行可能なジェット燃料にも対応できる大型タイプの開発も進めていくと話す。
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