総合化学メーカーの三井化学と、その子会社でありエンジニアリング企業のアークは、2025年に発売を予定しているドローン用ローターブレードを出展していた。三井化学の炭素繊維複合素材を使ったローターブレードは、低回転での推力や静音性が高いことに加えて、衝突時の安全性が高いという一般的なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製ローターブレードにはない特徴を持っている。
CFRTP素材による高推力、静音性、安全性の向上
三井化学は炭素繊維とポリプロピレン(PP)を複合化したCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)の一方向性テープ(UDテープ)を「TAFNEX」として商品化している。アークではこのUDテープを成形した独自のドローン用ローターブレードを開発し、2023年のJapan DroneのTKKワークスのブースで、開発中の製品を出展していた。
今年のJapan Droneでは三井化学とアークが共同でブースを出展し、24~30インチの4種類のローターブレードを展示。一見すると一般的なカーボン製ブレードだが、両社のブレードは三井化学のTAFNEXで作られている。
一般的なカーボン、CFRP(炭素繊維強化樹脂)製ブレードは、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたシートを積層し、圧力容器の中で加熱することで成形される。このブレードが高回転で障害物に衝突すると、割れて破片が飛散して周囲に危険を及ぼす可能性がある。
一方、CFRTPを使ったTAFNEXのローターブレードは、柔軟性の高いポリプロピレンを使っており、割れるように壊れることがないため、破片が飛散しにくく安全性が高いという。また、熱可塑性樹脂であるため、廃棄されたブレードに熱を加えることで、炭素繊維と樹脂に分離することができ、リサイクル性にも優れているというメリットがある。
アークのTAFNEXを使ったローターブレードは、ブレードの芯材にも発泡ポリプロピレンを採用しているため、芯材と表面のCFRTP素材との一体性が高められ、結果として強度が高く軽いローターブレードが実現できているという。
さらにアークでは自社が持つ解析技術を用いて独自のローター形状を開発。低回転での高い推力や、後退角を持った翼形状による静音性といった特性を実現している。同社ではこのローターブレードを2025年に製品として発売することを目標としており、現在、ドローンメーカーとともにサンプルを使ったテストを行っているという。
また、三井化学ではこのTAFNEXを使ったローターアームの開発にも取り組んでいる。TKKワークスが設計を手がけたアームは、一般的なパイプ形状とは大きく異なり、複層のUDシートをプレスで成形したもの。モーターマウント部や機体との接合部などの形状を一体成型できるため、金属製マウントといった部品を大幅に削減し、重量減に貢献。さらにパイプ形状などと異なり、自由に形状を設計できるため、飛行中の振動を抑制できるといったメリットもあるという。