自動車向けや携帯機器向けのコネクタメーカーとして知られる日本航空電子工業(JAE)のブースでは、コネクタを中心とした自社製品を展示。さらに航空機事業で培った技術を生かし、ドローン用フライトコントローラーを使った新しい技術のデモンストレーションを行っていた。

日本航空電子工業のブース。

信頼性の高い設計とオープンソース対応の「Flight Brain」

 日本の最大手コネクタメーカーであるJAEは、もともと航空機用電子機器向けのコネクタを作っており、信頼性の高い製品を世に送り出している。近年は自動車向け、携帯機器向けの製品が主力となっており、その中でも振動をはじめとした厳しい環境下で使用される自動車向け製品を、“ドローンを高品質につなげるコネクタ”として展示していた。

おもにドローンで使われることを想定したコネクタを展示。USB Type-Cは抜け止めのネジが付いているタイプもある。

 また、JAEは防衛省向け航空機の慣性航法装置をはじめとした航空機向け部品も手掛けている。「自動車向け部品は製品の試験を通じて信頼性を証明するが、航空機向けは試験に加えて設計段階でも信頼性を証明する」(説明員)といい、この航空機向け部品製造の思想を生かして、ドローン用フライトコントローラーも製造している。

 「Flight Brain」というブランドを冠した「JFBシリーズ」は、ArduPilotやPX4といったオープンソースファームウェアが搭載可能なフライトコントローラー。CPUのほかに自動車向けのIMUや気圧計、磁気センサーを複数(機種による)搭載しており、熱や振動、故障影響度といった解析を行い、高い信頼性を実現しているのが最大の特徴だ。

 設計段階で航空機装備品概念に基づいた故障率の算出を行っており、その品質は「JFB-110」の場合5680時間を実現。さらに耐環境試験検証では米国防総省制定規格や米航空無線技術委員会が定める規格に準拠し、温度動作範囲は-40℃から85℃と過酷な環境で使用ができる。「電気部品の信頼性で問題になるのは、その多くが接触不良。コネクタでおこる」(説明員)といい、JFBシリーズでは車載用コネクタを採用することで信頼性を高めている。

ドローン用フライトコントローラー「JFB-110」。
JFB-110を中心にしたシステム概念図。フライトコントローラーのほかにも、JAEでは電波距離計「JRE-30」や位置測位計「JPL-20」といったセンサーも用意している。

2つのフライトコントローラーによる継続飛行とパラシュート展開

 JAEのブースではこのフライトコントローラー(FC)を2つ使い、冗長システムとすることで1台のFCが故障しても飛行が継続できるシステムのデモンストレーションを行っていた。ドローンを模したモデルには4つのローターが付いており、最初はひとつのFCでモーターを起動させる。その後、プロポの操作でひとつめのFCを停止させると、自動的にふたつめのFCに切り替わり、モーターが停止することなく回り続ける。さらにふたつめのFCをプロポの操作で停止させると、モーターが停止してドローンが墜落することになるため、自動的にパラシュートを展開させて被害軽減を図るというものだ。

二重冗長システムのデモンストレーションモデル。左右の基板がフライトコントローラーのJFB-110で、中央の基板がFCを切り替えるセレクターユニット。
二重冗長システムの実証デモンストレーション。左のフライトコントローラー(FC)が停止してもすぐに右のFCに切り替わり、さらにそれが停止した場合は、安全装置としてのパラシュートを作動させる。この切り替えはすべて論理回路で行っている。

 JAEのフライトコントローラーは、イームズロボティクスや双葉電子工業のドローンに採用されている。2022年12月から機体認証制度が始まり、特に第三者上空を飛行する第一種機体認証機では、高い安全性が求められる。こうした信頼性が求められる機種に対して、JAEではFlight Brainブランドのフライトコントローラーを広く展開していきたいとしている。

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