プロドローンは2023年10月26日、東京ビッグサイトで開催されている「ジャパンモビリティショー2023(JMS2023)」の愛知県ブースで、開発中のドローン『「空飛ぶ軽トラ」SORA-MICHI(コンセプトモデル)』を初めて一般に公開した。同機は2023年5月にプロドローンが発表した、“50kg積載で50km飛行可能”をコンセプトにしたカーゴドローンで、平時には医薬品配送等で中山間部や離島の地域課題に貢献し、災害時は孤立集落等に救援物資を輸送することで減災に貢献するとしている。この日、アンベールされた「空飛ぶ軽トラ」SORA-MICHIは、文字通り4輪の陸上カーゴモビリティとヘリコプターが合体したようなデザインで、ドローン業界関係者のみならず、JMS2023に来場した自動車業界関係者の注目を集めていた。

あいちモビリティイノベーションプロジェクトに参加する、プロドローンの戸谷氏、テラ・ラボの松浦氏、スカイドライブの村井氏、愛知県の大村知事が揃ってSORA-MICHIのアンベールを行った。

飛行と走行のモードを切り替えて環境負荷を低減する

 この日公開されたSORA-MICHIは、全長3219mm、全幅2703mm、全高2703mm、メインローター径3100mmのシングルローター機(ヘリコプター)スタイルのドローン。50馬力の400ccロータリーエンジンを搭載し、最高速度150km/h、巡航速度でも70km/hで飛行できるとしている。さらに特徴的なのはヘリコプター型の機体の下部が、4つの車輪が付いた地上走行ロボットと一体になっていることだ。

愛知県ブースに展示中の『「空飛ぶ軽トラ」SORA-MICHI』のモックアップ。

 地上走行ロボットの後ろ半分がカーゴベイとなっていて、左右にアオリを開く形で荷物を搭載。展示されていたモックアップは、車体前半部には荷物が搭載できるようには見られなかったが、「電動のAGVなので車体前半分もスペースがあり、荷物を搭載することも可能」(菅木紀代一プロドローン取締役副社長)という。

後ろ姿は地上走行ロボットにヘリコプターのテールブームが伸びているようなスタイルとなっている。

 この空を飛ぶドローンと地上を走行する地上走行ロボットを合体させるというコンセプトは、「重量700kgの軽トラは2人で押すこともできるが、重量100kgのドローンを持ち上げるには相当な力が必要。であれば走行の中や構内は地上走行ロボットとして道をトコトコ行き、そこから離陸させればいい。必要に応じて走行し、必要に応じて飛行するという新しいコンセプト」(戸谷俊介プロドローン代表取締役社長)だとしている。

機体後部のカーゴベイには約130リットルの容量があるコンテナを搭載。荷物は必ずしも専用のコンテナでなくてもいいとしている。
機体下面には4つの車輪が付いていて、地上走行ロボットとして走ることができる。

 このSORA-MICHIは、50kgの荷物を搭載して50kmすべてを飛行した場合の消費燃料は10~15リットルなのに対して、50kmすべてを走行した場合は2~3リットル程度と大きな違いがある。そのため、川を渡る、山に登る、海を超えるといった場合には飛行し、地上走行が可能な場合は走行と、モードを使い分けることにより環境負荷を低減することができるとしている。なお、「将来的には着陸したSORA-MICHIが下部の地上走行ロボットを切り離し、上部のUAVは格納庫に戻り、地上走行ロボットだけが移動するといったことも考えている」(菅木氏)という。

機体上部前面には吸気口をイメージしたスリットがある。左右のスポンソン(張出部)は燃料タンク。
右側面にはエキゾーストパイプとマフラー(消音器)が取り付けられている。

 このSORA-MICHIの最大離陸重量は無人航空機の範囲に収まる145kg。菅木氏によると「意外と上部のヘリコプターの部分は重くなく90kg程度。最大離陸重量が150kgを超えると、航空機製造事業法上の許可が必要となってくるため、50kgの荷物を積んでも150kgを超えないように抑えてある。それでも現在開発中のものでは、燃料20リットルを搭載して2時間半程度飛行することが可能で、70kg程度の荷物を搭載して100km/hで巡航しても2時間程度飛行できる」としている。

愛知県に本拠を置くドローン&空飛ぶクルマ企業6社によるコンソーシアム

 SORA-MICHIのアンベールに合わせて、プロドローンの戸谷氏のほか、あいちモビリティイノベーションプロジェクトに参画する、スカイドライブの村井宏行最高戦略責任者、テラ・ラボの松浦孝英代表が挨拶。その司会を大村秀章愛知県知事が務めた。

 大村氏は「愛知県は日本の主力産業自動車産業の集積地であり、航空宇宙産業においてもアジア最大の集積地、そしてロボット産業も産業集積の拠点となっている。そんな愛知県が民間企業と新たに取り組むのが『あいちモビリティイノベーションプロジェクト』だ。この枠組みの中でプロドローンから“空と道がつながる愛知モデル2030”という提案があり、5月に愛知県とジェイテクト、名古屋鉄道、スカイドライブ、テラ・ラボ、VFRの6社によるコンソーシアムを立ち上げた。このコンソーシアムでは、ドローンや空飛ぶクルマの空モビリティを一日も早く社会実装実現して、物流クライシスの克服、移動手段の持続可能性の確保、災害時に空のモビリティが住民を助ける仕組みを提案していく」と語った。

あいちモビリティイノベーションプロジェクトについて説明する愛知県の大村秀章知事。
左から松浦孝英氏、戸谷俊介氏、大村秀章知事、村井宏行氏。

#ジャパンモビリティショー2023 記事

ドローンビジネス調査報告書2023【物流編】

執筆者:青山 祐介、インプレス総合研究所(著)
発行所:株式会社インプレス
判型:A4
ページ数:220P
発行日:2023/9/14
https://research.impress.co.jp/logistics2023