兵庫県と神戸市が主催するビジネスイベント「国際フロンティア産業メッセ2023」(以下、産業メッセ)が9月7日、8日に開催され、会場内に設けられたメッセドローンフィールドに30ブースが出展した。兵庫県が力を入れる燃料電池を採用したドローンや、大阪万博での実機飛行を進める空飛ぶクルマなど様々なタイプのドローンが紹介されており、用途の広がりと技術の向上が感じられた。

毎秋に神戸市で開催されるビジネスイベントに今年はドローン専用エリアが設けられた。

 兵庫県内の企業や大学、研究機関による先端技術や様々な製品が紹介される産業メッセは、毎年秋に開催され、今年は441社・団体が500を超えるブースを出展した。ドローン関連の出展は以前からあったが、今年は専用エリアが設けられるほど力が入れられ、昨年第1回ドローンサミットが開催された神戸国際展示場2号館には、特別展示としてSkyDriveの1人乗り機体「SD-03」をはじめ、レベル4対応の第一種型式認証を日本で初めて取得したACSLの「PF2-CAT3」などが公開され、来場者の注目を集めていた。

SkyDrive「SD-03」
ACSL「PF2-CAT3」
カーボンファイバー製の機体なども参考展示されていた。

 ドローン以外にも航空、宇宙、ロボティクス、モビリティ関連の展示があり、それらと組み合わせた展示があるのも興味深いところだ。例えば、新明工業はドローンを搭載して移動できる「ドローンポートカー」を参考出展。現地までクルマで移動した後は、車内からドローンをテーブルに載せてルーフハッチより自動で離着陸を行う。撮影した映像をモニタリングできる大型モニターや運用を指示するテーブルなどが搭載されている。

新明工業は「ドローンポートカー」を参考出展していた。
車内から自動でドローンの運用ができる。

 兵庫県では中長距離を飛行するeVTOL機の運用や開発も支援している。その一つ、米国のスウィフト・エンジニアリングと神戸情報大学院大学が共同出資して設立するスウィフト・エックスアイは神戸市に拠点があり、淡路島などでテストフライを続けているeVTOL「Swift Crane」を出展し、開発が順調に進んでいることをアピールしていた。

スウィフト・エックスアイの「Swift Crane」は実用化に向けてテストフライを重ねている。

 同じく神戸市に拠点を構えるスカイリンクテクノロジーズは、垂直上昇した後に羽根の方向を変えて約1000kmの中距離飛行が可能な独自のチルトウイング・エンジンドライブによる機体の開発を進めており、20分の1と6分の1サイズのモックアップをそれぞれ展示していた。位置づけとしては電動ヘリに近いとしており、ドクターヘリとしての運用も視野に入れているという。

スカイリンクテクノロジーズは独自の飛行機能をモックアップで紹介(写真は6分の1スケール)。

 会場内で最も大きなブースを出していたAutonomyは、純国産オートパイロット搭載マルチコプタードローン「Surveyorシリーズ」から、50kgのペイロードを持つ大型機をはじめ、カイトプレーン、有線給電ドローン、ワイヤレス給電システムなど複数の機体をオリジナルリモートIDや高性能カメラといった周辺機器とあわせて、関西で初めて出展した。

関西初出展のAutonomyは「Surveyorシリーズ」を紹介。

 バッテリーより長距離飛行が可能になることが期待されている燃料電池ドローンは複数出展されていた。一つは常圧水素カートリッジを開発するスタートアップのABILITYで、専用カートリッジを搭載した水素ドローンのプロトタイプを展示していた。カートリッジは気密性を高めるためにやや重さがあるものの、水素そのものは軽くてスプレー缶のように簡単に交換できるため、連続飛行が実現できる。同じ仕組みを持つ水素コンパクトカーも出展していたが、開発はカートリッジがメインで、ドローンや車両の開発については他社と連携する方向だ。

常圧水素カートリッジを開発するABILITYは燃料電池ドローンを出展。
カートリッジを交換するだけで連続走行できる燃料電池カー。

 カスタムドローンを開発する堺市の菱田技研工業は、日本で3社目となる燃料電池ドローン「アルバトロス 7号機」を出展していた。前面に伸びたアームの先にある丸い吸着盤を使って壁面に向けて姿勢を固定させるという特許取得済みのユニークな機構を持ち、インフラ点検や清掃、工事などを長時間安定して行うことができる。全幅2200mmと大型だが重量は12kgに抑えられており、10kgのペイロードを備えている。

菱田技研工業の燃料電池ドローン「アルバトロス 7号機」は壁面に向けて姿勢を固定できるユニークな機構を持つ。

 会場では全体的に点検や監視目的で使用するドローンの展示が目立ち、そうした分野でのニーズが高まっていることを伺わせる。高速道路や橋脚でドローンを活用する例は増えているが、自動化となると通信が届かないといった課題が残っている。ドローンを使用した測量調査などを行うアース・アナライザーは、徳島大学らと協力して非GNSS環境下で位置を推定して精密な自動航行が可能なドローン「SARUTAHIKO」を開発中だ。独自システムの開発に時間を要しているが、実現すれば需要は世界にも広がりそうだ。

非GNSS環境下での自動航行を目指す「SARUTAHIKO」

 ドローンによる測量、点検は高い場所や水中で行われるという印象があるが、実は水上のニーズも高い。ジャパン・インフラ・ウェイマークは川の上にある橋脚や人が入れない狭い溝や暗きょを自動で点検できる水上ドローンを開発している。動力となるプロペラが水上にあるので機体が安定し、メンテナンスがしやすいのもポイントだ。市販のカメラを取り付けられるようにするなどできるだけコストを下げて、点検に関わる人たちの労力と危険を減らすことを目指している。

ジャパン・インフラ・ウェイマークが独自に開発する水上点検ドローン。

 その他にも会場では不足する人手を補うために様々な機能を持つドローンが展示されていた。旭テクノロジーは空中測量や農薬散布をしたり、スプレー缶を吹きつけるといった、細かな用途にあわせて使用できるドローンを紹介。

旭テクノロジーは缶スプレーの吹き付けができるドローンなどを展示。

 昨年のドローンサミットでも注目されていた、ダスキンのハチを駆除するドローンはまもなく実用化する予定で、現在、最終的な性能の確認を行っている。今年は暑さで人家に危険なハチの巣ができるケースが増えているという話もあり、いち早く実用化されてほしいところだ。

ダスキンが開発するハチの巣を駆除するドローンはまもなく実用化される予定だ。