兵庫県と神戸市が主催するビジネスイベント「国際フロンティア産業メッセ2023」(以下、産業メッセ)が9月7日、8日に神戸国際展示場で開催され、今年は例年に比べてドローン関連の話題が数多く取り上げられた。8日には「空飛ぶクルマ」について大阪・関西万博(以下、万博)とその後の実用化に向けた取り組みを紹介するセミナーがあり、関係者から最新状況が報告された。

 本セミナーは、航空機産業を関西の次世代産業の柱の一つとすることを目的に、近畿経済産業局が関西経済連合会、新産業創造研究機構(NIRO)と連携して運営する「関西航空機産業プラットフォームNEXT」が主催したもの。同プラットフォームは、関西で航空機産業への進出を目指す企業を対象に、参入機会の創出やサプライチェーンの構築といった支援を行っている。今回のセミナーでは兵庫県と大阪府、そして空飛ぶクルマ事業に取り組む2社が講師として登壇し、行政の施策から空飛ぶクルマ産業の最新動向まで幅広い情報が提供された。

尼崎に暫定ポートを整備、万博にあわせて県内飛行を目指す兵庫県

 最初に、兵庫県でスタートアップをはじめとする新規ビジネスの創出を支援する兵庫県産業労働部新産業課課長の前川学氏が「Sky Innovation HYOGO 兵庫の未来を空から変える」と題し、空飛ぶクルマ事業に関する目標やロードマップ、県の取り組みについて紹介した。

兵庫県 産業労働部 新産業課 課長 前川 学 氏

 兵庫県は日本のほぼ中心に位置し、日本海、瀬戸内海、太平洋に面することから空飛ぶクルマに対しても様々なニーズが派生することが考えられる。短期目標としては2025年の万博で空飛ぶクルマが身近になるのとあわせて県内飛行を実現し、その後は事業者との連携による関連産業のエコシステムを形成することを産業振興のポイントとしている。

産業の振興に向けたエコシステムの形成を目指す。

 空飛ぶクルマの飛行については、5年ごとに3段階での広がりを想定し、安全性、社会需要性、法整備をクリアすることを目指している。2025年にパイロットが搭乗するアドホックな運航からはじまり、30年にはパイロットレスによるオンデマンド運航へと拡大し、35年には機体の大型化や多様化により運航エリアを拡大するロードマップを描いている。実装エリアとしては大きく3つ、大阪湾・阪神間エリア、瀬戸内・播磨エリア、但馬エリアを予定している。

兵庫県内で空飛ぶクルマの運航は3段階で展開することを想定している。
実装を計画しているエリアは3つある。

 具体的な動きとしては、今年8月31日には実現に向けた課題や可能性について意見交換を行う次世代空モビリティひょうご会議を開催し、国や大学の有識者やオリックス、パソナグループといった事業者が参加した。第1弾プロジェクトとして「HYOGO空飛ぶクルマ研究室(HAAM)」を創設し、兼松、パソナらと連携協定を締結している。

 また、尼崎と万博を結ぶルートを実現するために尼崎フェニックス事業用地でポート開発の暫定整備を進めている。丸紅を運航事業者とし、ルートは直線距離にして約3km、機体は英国Vertical Aerospaceの5人乗り機「VX4」を使う予定だ。

尼崎では万博会場までの飛行ルート実現に向けたポート整備が進められている。

 肝心な実装を促進する費用については、神戸市、大阪府、大阪市と連携して補助金を用意しており、実機のデモフライト以外に調査やシステム開発なども対象に含まれる。大阪府とまたがる事業については兵庫県・大阪府枠として、対象経費の2分の1以内を各府県1000万円ずつ計2000万円を上限とし、兵庫域内で事業を行う場合は兵庫枠として、対象経費の2分の1以内、計1000万円を上限に支援する。

実装に向けた事業開発を支援する事業が用意されている。

 現時点では兵庫県・大阪府枠に丸紅、住友商事、三井物産、エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンの4社が、兵庫県枠ではAirXと兼松の2社が採択されている。今後さらなるパートナーシップを広げるために参加者を募集しており、兵庫県から空飛ぶクルマの事業モデルを築いていきたいとしている。