ライセンは、東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023」の第9回国際ドローン展で、長距離飛行が可能な大型ドローン「MDS-6pro」を発表した。

加工の難しいマグネシウムを素材にした「MDS-6pro」

「MDS-6pro」(手前)と「MDS-6」(後方)。

 愛媛県で2017年に設立されたライセンは、ドローンによる調査や点検、ドローン販売の事業を行っている。主軸事業は金属製造業であり、今回展示されたMDS-6proにはマグネシウムを採用していることが最大の特徴だ。マグネシウムは非常に軽量で、アルミニウムに比べて重量は6割ほどに抑えられる。機体にはボルトで固定された箇所が多く見え、カーボン製のドローンには見受けられない独特な設計となっており、一際目を引く存在だ。担当者は、「機体の足元のみカーボンを採用していますが、全体にカーボンを使用すると機体が不安定になりやすい傾向にあります」と説明する。

長時間飛行につながる「空力構造」の特許を取得!

 ライセンのドローン事業は、ドローンによるレーザー測量からスタートした。その当時を振り返り、「このビジネスモデルは成り立たないことに気付いた」と担当者は言う。その理由として、ドローンによるレーザー測量は機材の重量が重いため、飛行時間が短く、何度も離着陸を繰り返さなければならない。さらに、高精度な機材は、1000万円以上が当たり前で費用がかさむ。そのため、2kg積載して75分間の飛行が可能となるMDS-6proを開発した(「MDS-6」の最大飛行時間は同条件で66分)。約75分の飛行時間があれば、たった1度の飛行で大部分の測量業務を済ませることが可能になるだろう。

 長時間飛行を実現した空力構造は、ライセンが独自に特許を取得した技術となる。環状翼内部の空気を集め、環状の隙間から噴出することによって浮力を得る構造であり、MDS-6proはボディの上部に2枚の翼を設置した状態で展示されていた。この補助翼はオプションで追加することが可能。補助翼もマグネシウム製になっており、取り付けることによって2~10分程度飛行時間を延ばすことができる。

 バッテリーは6本搭載できるが、4本でも飛行させることは可能だ。バッテリーの接続方法は並列となっているため、1本のバッテリーが故障したとしてもモーターがパワーを失わない。フライトコントローラー及びGPSアンテナは3セットあり、3重のバックアップ制御を行うことから、コントロールを失いづらいという。

海を越えた物流の実証実験を積極的に行っている

 2022年10月26日と11月4日には、今治市において四国本土から大三島のキャンプ場まで海を越えた物流の実証実験も実施している。片道6kmの実験からスタートし、コロナウイルス検査キットのダミーを搭載して8kmの運搬を行う実験も実施した。使用した機体は、ライセンオリジナルの「MDS6pro-WW長距離タイプ」である。この実証実験は、過疎地域における地域課題解決を目的として実施された。大三島の住民にとっては橋の通行料が高額であることが問題となっているため、ドローンの物流が普及することによって、生活環境の向上や遠隔診療の実効性向上などが期待されている。なお、1セットのバッテリーのみで片道8kmのルートを往復することに成功している。海の上では強風でドローンが煽られやすいことが一般的だが、ライセンのドローンは安定して長時間飛行した。

 なお、2022年度の実証実験では、「飛ばす側と目的地側の両方に送信機が無ければ8km飛ばすことはできなかった」と担当者は話す。飛ばす側のみの送信機でドローンの物流ができなければ、本当の物流としては成り立たないことが今後の課題となっている。

 販売価格は800万円程度を予定しており、ドローンに搭載する専用のダンボールも特許を出願中だ。箱の先がとがっていることから、風の抵抗を受けづらい形状であることがメリット。箱を搭載できるキャッチャーはロックが自律しており、荷物を下ろすときにも自動で行うことが可能だ。

#第9回 国際ドローン展 記事