ドローン市場が拡大し続けている現在、機体及び部品メーカーは効率的にドローンを開発・生産する必要がある。しかし、部品製作時に使用する金型や形状構造において、なかなか自由に設計できない制約下にあり、製造時間や開発コストが大きくなりがちなのが現状だ。

 今回Japan Drone 2023でファソテックが展示したMarkforged Mark Two(Mark Two)を始めとする3Dプリンターは、メーカー側が抱える課題の解決策として、現在既に国内メーカーに使用されている。

ドローンにおける3Dプリンターの活用事例

 ファソテックは3Dプリンター機の展示だけではなく、過去の3Dプリンター活用事例も展示していた。その中のひとつであるニックスでは、ドローンのアタッチメント装置を3Dプリンターで生産したとのことだ。ニックスは新規事業としてドローン搭載用アタッチメントを開発しようとしていたが、当時特に課題として頭を悩ませたのは軽量かつ高強度な部品を短時間で製造する方法だった。

 ドローンに限らず多くの樹脂部品は金型に溶かした合成樹脂を流し込む射出成形で製造するが、使用する金型は初期コストがかかるだけではなく、金型ゆえ発生する設計時の成約も大きく、多種多様な部品の少量生産には不向きである。他にも生産方法自体はあるものの、初期コストや製造時間が現実的ではない。そんな課題を解決したのが3Dプリンターだ。

 ファソテックが提供するMarkforged社製3Dプリンターで使用できるマイクロカーボン含有のナイロンフィラメント「Onyx」は、金属に匹敵する強度を持ちながら熱変形がしにくい高精度な軽い部品を製造できる。

 Onyxは一般的な3Dプリントに使用する素材よりも高い強度を持っており、強度をある程度上下できる連続繊維を使用することで出力品の強度や弾性を強化可能だ。

 ファソテック AM開発センター シニアコンサルタント 川瀬 康樹氏は「Onyxだけではなく連続繊維も配合すればアルミ以上の強度が出ます。流石にステンレスの強度には敵わないが、ステンレス程度の強度を求めないアルミ製品の置換手法としてご活用頂くことが多いです」と語った。

 ニックスではMarkforged社のカーボンファイバー3Dプリンタの中でも最上位機種のMarkforged X7を導入し、初期の想定よりも50%以上コストを削減しながら製造期間は想定していた2カ月から1週間に短縮することに成功している。このほか、製造したドローン搭載用アタッチメント本体は開発当初よりも30%程度軽量化に成功し、強度も向上したことで機体搭載時の飛行可能時間や積載可能重量がワンランク向上したとのことだ。

ドローンメーカーによる3Dプリンター「Markforged Mark Two」の活用実例

 今回ファソテックがメインとして展示したのは、Markforged社カーボンファイバー3Dプリンターの中でも卓上で使える低価格帯なデスクトップシリーズの代表モデル「Mark Two」である。

 黒いリールのような形状に巻かれた樹脂でコーティング済みカーボンファイバーがパイプを伝って出力される。約220℃のノズルで溶かされたカーボンファイバーを一筆書きのように積み重ねていく。

 特徴のひとつでもある補強に使用する長繊維ファイバーの種類によっては金属と同等の硬さや強度を出すことも可能だ。実際に長繊維ファイバーがグラスファイバーとカーボンファイバーで異なる部品を筆者が曲げようとしたところ、白い部分が残るグラスファイバー製の部品は若干曲がった一方で、黒が目立つカーボンファイバー製の部品は曲がらなかった。

 川瀬氏は「ドローンや何かの部品でもただのプラスチックで作っただけでは弱いため、素材にカーボンファイバーを入れて部品に強靱な硬さを出すのがこの3Dプリンターであり、材料の入れ方によって強度が異なる部品や型を作成できます」とコメントしている。

 現在ファソテックの取引先ドローンメーカー3社では、A社とB社が8台、C社が6台と各社でMark Twoを並列させて使用しているとのことだ。X7などと比較するとスピードは劣るものの、Mark Twoを複数台並べることでも量産には対応できる。

 例えば農薬散布を行う時期の前には農薬散布用ドローンの需要が上がるため、自社所有のMark Twoをフル稼働させても間に合わない場合はファソテックが所有する20台近くのMark Twoを稼働させることもあるという。

 従来の射出成形ではコストがかかる上に設計変更が発生した場合にかかる時間も長い。しかし、3Dプリンターで部品製造を行えば短時間かつ低コストで試作品から本採用品まで使用できるため、合理性に長けた開発・製造ができるようになる。また、3Dプリンターは夜間も稼働できるため、労働環境や効率性の向上にも繋がり、ドローンメーカーで働く総員のパフォーマンス向上に寄与するだろう。今回ファソテックが展示したような3Dプリンターを多くのドローンメーカーが要所に合わせて今後導入し、効率的なドローン開発・生産が躍進することを期待したい。

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