オプションカメラのデモンストレーションの度に人だかりができていたACSLブース

 第9回国際ドローン展にて、ACSL(東京都江戸川区)は、国産ドローン「SOTEN」のオプションパーツである赤外線カメラなど4種のカメラの性能を紹介する飛行デモンストレーションを実施したほか、8月末に販売開始予定の操縦訓練用シミュレーター「SOTENバーチャルトレーナー」も初めて展示。ほかにも、同社として測量分野に本格参入するための新たな機体「PF2-AE Survey(測量)」や2023年3月に日本で初めて第一種型式認証を取得した「PF2-CAT3」の展示もあり、多くの来場者でにぎわった。

 飛行デモンストレーションで性能を紹介したSOTENオプションパーツのカメラは、太陽光パネルのクラック調査や遭難者捜索などで用いられる「赤外線カメラ」と植物の生育状況の可視化などで活用可能な「マルチスペクトルカメラ」など。熱エネルギーを可視化する赤外線カメラのデモでは、災害現場に見立てたコンクリートブロックの山の隙間から、中に埋もれている体温を持った人形を発見する様子を実演。さらに、近赤外線画像が撮影できるマルチスペクトルカメラの実演では10個の鉢植え植物の上を飛行。葉による太陽光の反射で植物の活力などを測定するNDVI(正規化植生指数)技術を活用し、枯れている植物を可視化する様子を披露した。
 いずれのカメラもワンタッチで付け替えが可能な点も訴求ポイントで、各カメラのデモンストレーションでも実際に5秒程度で付け替えが完了していた。
 同社によると、こうした複数のカメラを用いたデモンストレーションは今回が初めて。担当者は「機能やラインナップは知っていても実際の映像を見る機会は少ない。実機でないと分からない静音性や操作性なども含めて実感してもらえれば」と話した。

左のカメラでは分かりにくいがれきの中の人形も、右の赤外線カメラではすぐに発見が可能

限られた空間でも様々なシーンを想定した訓練が積めるバーチャルトレーナー

 ブースで注目を集めていたのが、時間や場所を選ばずにドローンを使った橋梁点検や災害支援、緊急時対応のスキルを学べる「SOTENバーチャルトレーナー」。ACSLによると、ユーザーからの「実際にドローンを飛ばせる場所が少なく練習が十分にできない」「非常時の操作が不安で練習したい」という声を受け、VRコンテンツなどを手掛ける理経(東京都新宿区)らと共同開発した。
 SOTENバーチャルトレーナーは、実際のSOTENと同じプロポを使う仕様で、仮想空間上に実機のユーザーインターフェースや挙動を完全再現している。訓練コンテンツとしては、自由に操縦練習ができる「フリーフライトモード」とインフラ点検や災害対応に特化した「シナリオモード」の2種類を用意。シナリオモードでは、橋げたのクラックなどを探す橋梁点検と、市街地での火災現場を再現した2つのシナリオを選んで練習することができる。

火災現場でのフライトなどを練習できるSOTENバーチャルトレーナーの展示

 実用的なスキル向上を重視している点も特徴。例えば、橋げた点検では橋梁の下に入るとGPSが切れるなどの挙動を学ぶことができ、災害現場では電線や信号機などの障害物が多い市街地を飛行しながら、火災の状況確認や突入経路を探すための飛行スキルなどを学ぶ。
 さらに、機体トラブル時対応プログラムとして、機体とプロポとの通信が途絶えた場合に表示される非常時モードも体験可能。このモードでは、警告音とともに「緊急着陸開始まで●秒」とのカウントが始まり、「Go Home」や「送信機に戻る」などの選択肢が表示される。

SOTENバーチャルトレーナーではUIやプロポも実機と同じ仕様となっている
トラブル時も事前に練習しておくことで慌てずに対処可能になるという

 SOTENバーチャルトレーナーは8月末に販売開始予定で、ソフトウエア入りPCとプロポのセットで代理店を通じて販売する。

ついに測量分野への本格参入機体が登場/国産機体を強みに浸透狙う

 国際ドローン展では、同社として測量分野に本格参入となる、YellowScan社製LiDARを搭載したレーザー測量用ドローン「PF2-AE Survey(測量)」も初めて展示した。同機は、ACSLの中型プラットフォーム機体PF2を、物流やインフラ点検、災害・警備といった用途別にカスタマイズした産業用ドローンの新仕様となる。バッテリーを除いて国産の機体であることが最大の特徴。同社によると、ドローンを活用したLiDAR測量は広がっているものの、海外製LiDAR×中国製機体の組み合わせが多く、安全保障面から懸念が指摘されていたという。特に公共測量や国土調査など、情報管理の徹底が求められる場面では国産機を求める声が高かったことから今回の実装に至った。

初めて展示されたレーザー測量用ドローン「PF2-AE Survey(測量)」

 機体に搭載するLiDARは、用途に合わせ、グラウンドなどの平面測量に向いている「mapper+」と、のり面などの起伏がある3次元の地形や伐採前の植生を透過して測量する必要がある現場に向いている「Surveyor Ultra」の2種類を用意。いずれもワンタッチで装着可能となっている。

LiDAR搭載仕様としてダンパーを装着して振動を軽減させる工夫がみられるPF2-AE Survey

 会場には、日本初の第一種型式認証を取得したPF2-CAT3も展示。レベル4(有人地帯での補助者無し目視外飛行)活用シーンの拡大を図るため、初の有料のセミナーを企画し、会場でチラシを配布した。「型式認証とライセンスだけでは実施できない!? レベル4飛行実現のための5つのポイント」と題して、東京・名古屋・大阪・福岡で順次開催予定という。

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