ChronoSky Eyesの紹介を中心に据えたコアの展示ブース

 2023年7月26日~28日の期間、東京ビッグサイトで開催されたメンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023にて、コアは、同社が強みとするICT技術を活用したインフラ点検向けの新サービス“目視外点検見える化ソリューション「ChronoSky Eyes」”を紹介した。予備飛行から高度な3次元地図を作成することで作業効率を最大化する緻密な飛行計画を立案できることや、膨大な写真データを時系列で管理しながら要点検箇所を絞り込むことができるのが特徴。同社が培ってきた日本版GPS(準天頂衛星みちびき)との連携技術により、携帯電話圏外の山間部でもすぐに運用可能なのも強みの1つ。これまで同社は、ChronoSky Eyesを活用し、飛行サービスや点検データ提供を業務として受託してきたが、「業務を内製化したい」というクライアントの声を受け、7月末からソフトウエアの提供を開始した。

 同社によると、従来のインフラ点検では、ドローンの飛行ルートを決める際、2次元の地図データなどを基にすることが多い。しかし、実際の現場では構造物の側面や屋根の上まで木が茂っていたり、隣接する建物のひさしが対象物に接近していたりと、2次元情報からだけでは得られない不確定要素が多く、そのまま飛行計画を立ててもドローンが安全に航行できない場合が少なくないという。

2次元地図では分からない植生や近接物の課題を紹介する動画

 そのため、結局は人が危険な現場に立ち入って状況を確認しなければならず、省人化につながっていなかったり、要点検箇所を効率的に確認するための飛行ルートの策定や撮影技術もオペレーターの熟練度に依存していたりと、多くの課題が残っていた。
 ChronoSky Eyesでは、まず、対象物+約50メートルの安全高度から自動で予備飛行を行い、3次元地図作成のための画像を撮影。このデータを基に3次元地図を生成することで、実際の周辺の樹木や隣接する構造物との位置関係や距離感を直観的に把握しながら飛行計画を策定することが可能となる。あらかじめ3Dモデル化することで、本番の飛行でどのような画像が得られるか事前に確認ができる点もメリットが大きい。

右側で紹介されているのが予備飛行によって作成された3Dデータ

 例えば、屋根のふちにある雨どいを重点的に調査したい場合、3Dモデルを基に最適な撮影距離やどのようなカメラの角度で撮影すれば必要な情報が得られるかを前もってリアルに確認しながら飛行ルートを計画できるため、飛行の安全性の担保はもちろん、「良く撮れていなかったので撮り直し」という事態も避けることができる。

 予備飛行後の調査飛行では、用途に応じて様々な撮影方法を実施。予備飛行で生成した3Dモデルよりさらに精細な3Dモデルを作るための連写撮影や、重点ポイントに特化したスポット撮影などを行い、最終的には撮影画像を基に対象設備の劣化具合の判断や、要点検箇所の絞り込み、次回の飛行ルート策定などに役立てる。
 さらに、ChronoSky Eyesでは、撮影した膨大な画像データをソフトウエア上で一括管理。データには経度や緯度といった精細な位置情報や撮影した時間情報などが紐づけられており、これらの画像を3Dモデル上にて時系列管理することで、特定箇所の経年変化を確認することもできる。

同一箇所の写真を時間軸でまとめて一括管理することで経年変化を可視化できる

 こうしたソリューションを可能にしているのが同社の技術力。一般的に、仮想空間内の3Dモデルと現実の建物の座標をGIS(地理情報システム)上で一致させることは難しいとされる。しかし、同社は日本版GPS(準天頂衛星みちびき)などを活用することで詳細な位置情報の取得と、それらの情報を仮想空間内で管理するソリューションを開発。経度や緯度という現実空間の絶対的な座標と仮想空間内のデータを一致させることで、緻密な飛行計画の策定はもちろん、その後のデータ管理まで一貫して行うことができるという。
 担当者は「小さな建物であれば1時間で作業が完了するなど、おおよそ通常の半分の時間で作業が可能。1日で2~3施設を点検することも無理ではない」と話している。

みちびき対応機体であればモバイル通信圏外でもアンテナ不要ですぐに運用可能

 コアは、ソフトウエアのChronoSky Eyesのほか、準天頂衛星みちびきの高精度測位補強サービス「CLAS(みちびきセンチメータ級測位補強サービス)」を搭載したACSL製の専用ドローンChronoSky PF2(ACSL-PF2)の販売も行う。
 インフラ点検などの分野ではモバイル通信が入らない山間部の現場も多く、こうしたエリアで通信を確保するには一般的にアンテナや基準局を設置する必要がある。しかし、同機はみちびき対応アンテナを搭載しているため、こうした設備を準備せずともすぐに運用できる。

準天頂衛星みちびきのデータを受信するためのアンテナ

 また、クライアントが既に所有している市販機体を使ってモバイル通信エリア外でChronoSky Eyesを活用したい場合に備え、みちびき対応基準局ChronoSky Baseも用意。地上から位置情報を補正するRTKに対応する機体であれば、通信ネットワークの有無にかかわらずChronoSky Baseを設置することで基準局を構築し、精細な計測が可能になるという。


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