改良されたデジタルツインソフトウェアTRANCITYなどを紹介するCalTaブース

 2023年7月26日から28日まで開催されたメンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023にて、CalTaはリリースから1年余りを経てパワーアップしたデジタルツインソフトウェア「TRANCITY」(トランシティ)などを展示。具体的な改善ポイントや使用感などを実例を交えて来場者に紹介した。

 CalTaは、屋内空間の点検・計測に特化した世界最小級のドローン開発などを手掛けるLiberawareとJR東日本スタートアップ、JR東日本コンサルタンツが、鉄道やインフラ業界のDX化を目指して2021年7月に設立した企業。小型ドローンやスマートフォンで撮影した動画をアップロードするだけで電子地図上に点群データや3Dモデルを自動生成する、鉄道関係では初のソフトウェアTRANCITYの開発などを手掛けている。

 類似の業務管理ソフトウェアは稼働させるために高性能パソコンなどを必要とする場合があるが、クラウド型のTRANCITYはウェブブラウザ上で稼働するため、デバイスを問わず、スマートフォンやタブレットなどからでも手軽に利用できるのが特徴。生成した3Dデータは国土地理院のデジタル地図基盤上にて、実際の場所に実寸サイズで再現され、設備の変化を時系列で追うことも可能。工事の進捗確認や災害時の土砂の流出状況なども一目で確認することができるほか、同社によると、直観的に操作できるよう、ユーザーインターフェース(UI)も分かりやすく作られており、導入のしやすさや使いやすさも特徴の1つだという。

 TRANCITYは2022年5月のリリース後、JRはもちろん、インフラ業を中心に橋梁点検や建設現場など様々な場面で導入されてきた。今回、ユーザーの声を受け、新たに4つの機能を改善し、ブースでも実例を交えながら紹介した。

 1つ目の改善点は、3Dデータ上での情報の拡張性。3次元空間にて補修が必要なポイントや要点検箇所を把握した場合は、仮想空間上にデジタルのピンを置き、そのピンに紐づけて情報を新たに付加できるようになった。ピンのアイコンは、通常のピンマークや「?」「鉛筆マーク」など10種類から選ぶことができ、色の変更も可能。直接テキストやリンクを入力できるほか、「添付ファイル(ファイル選択)」のコマンドも用意されており、PDFの平面図や画像などを格納して共有することができるようになった。

3次元空間上でピンを置いたりファイルを追加したりできるようになった

 2つ目の改善点は、3次元空間上での計測機能。画面上でスケールのコマンドを選択すると、「直線距離」「水平距離」「水平面積」「体積」など8種類の選択肢が登場。例えば、橋梁の一部の高さなどを確認したいときは、3次元空間上で計測したい幅の両端にカーソルを合わせるだけでその距離を計測することができる。計測結果はそのまま自由にラベル付けをして保存することも可能となっている。

橋梁の下部空間にある構造物の高さを計測している様子
様々なコマンドを直観的に操作することができるTRANCITYのUI

 3つ目の改善点が、点群データを生成するために対応している動画形式の拡大。これまではスマートフォンやアクションカメラGoProなどで撮影した動画から点群データなどを作成していたが、新たに360度カメラの動画からも点群データが起こせるようになった。これにより、災害時など、短時間で大まかな被災状況が知りたい場合は360度カメラを用いることで、1回の撮影で広範囲の情報を網羅した点群データを生成することが可能になるという。

 4つ目の改善点は、3次元空間内で人の目線の高さの移動シミュレーションなどができる3Dウォーク機能。例えば、鉄道駅構内でバリアフリールートなどを確認したい場合にこれらの機能が役立つという。

機能の拡充ポイントなどを紹介するブース内の掲示パネル

最新の小型ドローンIBIS2のデモ飛行も実施

 CalTaブースでは2023年6月に販売を開始した最新の産業用小型ドローン「IBIS2」(アイビスツー)のデモ飛行も実施した。IBISは屋内空間に特化して開発された小型ドローン。大きさ194mm×198.5mm×58mm、バッテリー込みの重量は243g、飛行時間は旧型機比約1.4倍の11分。赤外線カメラやデータ取得センサを追加で搭載可能となったほか、機体が上下反転した状態からも再離陸できるタートルモードを搭載するなど、これまで以上に極小空間や暗所での調査が実現できるという。

改良された産業用小型ドローンIBIS2のデモ飛行の様子
IBIS2の特徴などを紹介するパネル展示

#メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023 記事