テクノドローンのブースでは、煙突などのプラント・設備の内部点検に特化したドローン「SA-1」の展示を行っていた。設備内部で点検作業をしたいニーズは多いのだが、GPS/GNSSが入らない環境がほとんどのため、安全に点検を行える業者が少ないのが実情だ。同社では、安全性を確保できるガイドロープ方式で点検を行っているという。
ガイドロープ方式で煙突内部のドローン点検を安全に実施
同社の担当者によれば「特に当社が得意とするのは、煙突内部の空撮点検やダクト内部の点検です。煙突内部を点検する際には、煙突の中心部に向けてガイドロープを上から下までピンと張って、そのロープに沿うようにドローンを移動・回転させながら、内壁の様子を詳しく調べることができます」と説明する。
煙突の構造は特殊で、上に行くにつれて内径が徐々にすぼまっている。そのため「GPS/GNSSが入らない」「照明が確保できなくて暗い」「内壁に付いた粉塵でセンサーが働かない」といった困難な条件での点検業務となり、安全性も十分に確保できない。
そこで原始的な方法になるが、同社では前出のようにドローンにガイドロープを通して、そのロープに沿うように移動させながら点検業務を行っている。ドローンの飛行ルートを制限しながら、物理的に壁面衝突を回避するため、安全に点検できるという。
万が一、何かのトラブルでドローンが停止したとしても、リモート操作でガイドロープを挟み込むブレーキ機構が用意されているため、ガイドロープ直下への墜落を防止でき、設備のダメージも最小限に留めることが可能だ。このブレーキングの仕組みは、すでに特許を取得しているという。
本体にはコントローラ用カメラのほか、2つのカメラマウントがあり、全方位カメラや詳細撮影用のデジタルカメラなどを、撮影内容に合わせて搭載できる。また煙突内部は真っ暗なため、各ロータ部の下に薄くて軽い特殊な照明を取り付けている。
カメラや照明を取り付けた状態でのドローンの飛行時間は約7~8分ほどだ。サービス利用企業は、電力会社、製鉄会社、製油会社などが多く、煙突も非常に長いという。実は同社では、国内で初めて200m超もの長さの煙突の点検に成功している。効率的で正確な飛行技術が求められるが、専門性の高いオペレーションのノウハウを持っているため、上手く点検できたそうだ。
ガイドロープ方式に頼らない、レーダー搭載の点検ドローンも開発中
あらゆる煙突がガイドロープ方式で点検できればよいのだが、この方式では対応が難しいケースもある。ガイドロープは煙突に登って設置する必要があるからだ。階段やタラップなどの昇降設備が老朽化していると危険なため、人がアクセスできないこともある。
そこでガイドロープに頼らないコンパクトで高機能な中型ドローン「TD-2」を現在開発中だという。ドローン本体は、三角形を単位としたトラス構造の骨組みを採用し、軽量かつ強靭で、60cmのマンホールからの投入も可能だ。
最大の特徴はドローン本体に日本航空電子(JAE)のレーダーを装備している点だ。粉塵が多い環境では、光学系センサーでは制御が難しく、また送信機への内部状況の確認が一時的に途切れてしまうこともある。
担当者は「そこで4方向のレーダーによって壁面などの各距離を検知し、定位置を保ちながら撮影を行うと同時に、衝突を回避するように工夫を凝らしています。集合煙突のように傾斜があるような煙突内部の点検にも適しています」と説明する。
開発中なので具体的な仕様は固まっていないが、ペイロードを従来よりも2倍に大きくしているため、撮影用カメラだけでなく、全方位カメラや、高輝度照明や各種測定機材の搭載も可能になるという。また4つのロータ部は2重反転のプロペラを採用しており、ある程度の重量があっても、安定した飛行を可能にしている。
このほかにも同社ブースでは、Skydio社の「Skydio2」を改造した独自仕様のドローンや、高い機動性を備え、低床下の点検に適した狭小空間点検ローバー、水路・桟橋下を全方位カメラとLEDで効率的に撮影できる小型ボートなども展示しており、来場者の注目を浴びていた。