メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023 第9回国際ドーロン展のE・C・Rブースでは、建物の壁面に液剤を噴射できる装置を搭載したドローンと、それを利用した同社の受託サービスについて紹介していた。

E・C・Rの壁面補修サービス用ドローン。写真の機体はDJI製のAGRAS T10を改良したもの。パネルの「アスカ」は従来の国産機種だ。

 もともと建物の補修などのために、壁面に液剤を塗布する作業は人力で行われることが多かった。しかし、塗布作業の前に建物の周りに足場をつくる必要があり、高いコストと準備時間がかかっていた。

「建物の全面を塗るのであれば、コストが掛かっても足場をつくって人力に頼ったほうがよいのですが、建物の一部分だけを修繕したいのであれば、ドローンを使って修正するほうが効率的ですし、コスト的にも有利です」と同社の担当者は説明する。

 そこでE・C・Rでは、マゼックス社の国産ドローンを採用し、インフラメンテナンス噴射装置を搭載した「アスカ」を昨年に開発している。ただし今回ブースで展示したのは、DJI製の農業用ドローン「AGRAS T10」を改造した新しいタイプの「飛燕」だ。

従来機はスプレー缶を押下して塗布していたが、今回の改良ドローンはペイロードも大きいため、ケーシング内に塗布剤を入れるタンク(約5リットル)を取り付けて、ノズルから噴射する仕組み。

 従来機では、応急処置用としてエポキシ系の樹脂硬化剤や、赤サビを黒サビに変えるサビ止め剤などのスプレー式缶を搭載し、それを押下することで塗布していたが、ペイロードの大きなAGRAS T10を使うことで、約5㎏(最大8kg)の大容量タンクに塗布剤を入れ、建物の壁に噴射できる構造に改良している。これにより塗布剤の充填の手間も省けるようなった。また機体が壁に接触しても壊れないようにガードのサイズも大きくしたという。

利用している市販の塗布剤の一例。壁面のクラックなどを硬化型エポキシ樹脂を塗布して一時的な応急措置として対応するという。サビ止め用の薬剤などもある。
ドローンにスプレー缶を搭載して吹き付ける様子。

 基本スペックはペイロード約10㎏、最大ロータ距離1480mm、最高飛行速度10m/s、最大飛行高度4500m、飛行時間は20分程度で、D-RTKモジュールも搭載しているので、塗布精度も良いという。主な用途としては、建物の壁面への溶剤吹き付けだけでなく、橋梁などへの修復作業も想定している。橋梁の点検用ドローンは数多くあるが、実際に現場で修復作業が可能なドローンは少ないため、E・C・Rにサービスの依頼が多く来るそうだ。

E・C・Rのドローンによって、日本躯体処理の「RCガーデックス」(土木用)を塗布している様子。この塗布剤は、コンクリート中のカルシウムイオンなどと反応し、網目状の無機ポリマーに変化させて、コンクリート内の隙間をつなぐ役割を果たす。

 同社ではドローンの機体を売るビジネスではなく、壁面修復の受託サービスを中心にビジネスを展開している。塗布材料は、粘性のあるものでも対応でき、タンクからポンプで塗布材料をくみ上げて、ドローンのフロント部に設置された噴射ノズルから噴霧することが可能だ。ノズルの形状を変えたり、噴射の圧力を変更すれば、噴射距離も伸ばせるそうだ。なおサービス費用については、塗布場所によってケースバイケースで異なるので、直接問い合わせてほしいとのこと。

 最近は建屋だけでなく、橋梁の老朽化も進んでいる。高度経済成長期に建てられたインフラも50年以上が経つが、人手不足もあり、なかなか補修作業ができていないという実情がある。

 同社の担当によれば「今後こういったドローンの利活用が期待されるが、AIカメラも進化しているので、さらに将来的にはドローンを自律飛行させて、自動点検と自動補修をリアルタイムで行えるような世界を実現していきたい」という。

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