ソニーブースでは、同社のドローンブランド商品「Airpeak S1」と、この4月・5月に発売した新アクセサリ—類を中心に展示していた。Airpeakというと、従来は映像分野に強みを発揮するドローンとして認知されていたが、今回の展示では産業分野にも利用できるドローンとしての魅力をアピールしていた。
RTKキットやドローン用LiDARの搭載で、産業用に変身するAirpeak
Airpeakは、同社の一眼レフカメラ「αシリーズ」(最大6100万画素)を搭載することで、従来にないダイナミックな表現が可能なプロ仕様の空撮機として定評がある。13mほど離れた上空から1mm/pxの撮影分解能で対象物を撮影できる(50mmレンズ使用時)。また機体の性能は、耐風性が最大20m/s、飛行時の突風耐性は15m/sで、上空の不規則な風に流されにくく、海岸や渓谷などの強風下でも安定した飛行が可能だ。
展示ブースでは、今春に発売された拡張オプション品も展示。GNSSにより機体の位置精度をcmオーダーまで向上したRTKキット(54万円)や、セットアップの軽減と重量の半減を実現したジンバル「PX1 for Airpeak」(48万円)、容量が増えたバッテリパック(4万5000円)などの周辺機器により、点検や測量などの産業向けドローンとしての用途を訴求していた。
またパートナー企業によるオフィシャル製品として、FLIGHTS社の次世代ドローン用LiDAR「FLIGHTS SCAN for Airpeak」や、アイデアルトランク社の防塵防水ハードケースも紹介されていた。
FLIGHTSのLiDARは高性能なIMU(慣性計測装置)を搭載し、精度が良くて誤差の蓄積が穏やかだ。そのため飛行コース間のズレや点群のバラツキも少なく、コース間のマッチングしたノイズ除去などの時間も最小限に抑えられる。また機器自体が安価という特徴もあり、公共測量における「作業規程の準則」にも対応している。そのほか送電線や災害現場での状況把握というように、マルチユースでの活用も可能になった。
ソニーの担当者によれば「測量の要望が多く、今回はAirpeakのターゲットアプリケーションとして紹介しました。点検用途についてはこれからですが、すでに国内でも実証実験を行っており、今後は増えてくると考えています。国内だけでなく、米国でも点検用途の需要が増えています」とのことだ。
風力発電設備ブレード点検のパネル展示
ソニーのブース内では、前述の産業用途の具体例として、風力発電設備ブレード点検や、測量での利用をパネルで紹介していた。導入事例では、実際に利用したユーザーのコメントも掲載され、「Airpeak S1」での実運用をイメージすることができた。
たとえば、風力発電設備ブレード点検では、日立パワーソリューションズとセンシンロボティクスとの共同事例を紹介。これまでのブレード点検は、地上から人がブレードを撮影して目視で点検していたが、ドローンを活用することで、点検工数の削減やブレード点検の品質を高められるようになったという。
すでにAirpeak S1は、福島県内の風力発電所で運用されているが、導入前には何度も検証試験を行っており、Airpeakの優れた飛行性能とカメラ性能がブレードの点検に有効であることから導入に至ったそうだ。
同社の担当者は「Airpeak S1は飛行性能に優れており、点検する際に風が強くても耐風性能が高く、安定した飛行が可能です。対象物に近い場所での撮影時に風が吹いても衝突を回避し、高性能カメラでクラックを識別できます」と点検時のメリットを説明した。
またブレード点検の保守業務を効率化するセンシンロボティクスの業務アプリケーション「BLADE Check」に対応する点も特徴のひとつだろう。BLADE Checkは、風車形式に応じた飛行ルートを最小限のデータを入力するだけで自動生成。ドローンで撮影した画像データをAIで解析し、損傷の有無を一次判定するほか、取得した画像データを方向などによって分類して管理する。過去のデータと比較することで、適切な保守計画の立案も可能だ。
多彩なオプションを利用できるようになったAirpeak S1は、さらに産業用途へウイングを広げ、マルチユースとしての利便性を高めていくという。そのためにソニーでは、パートナーと共に、より多くの実証実験を行い、ビジネスの可能性を探っていく意向だ。
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