ブルーイノベーションが発表した世界初のISO準拠ドローンポート情報管理システムの概要を紹介した展示

 ブルーイノベーションは6月26日、Japan drone 2023の自社ブースにて、世界初の物流ドローンポート向け国際標準規格に準拠したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を開発したと発表した。複数のドローンポートの遠隔監視はもちろん、異なるメーカーのドローンであっても、離陸から着陸指示まで一連のオペレーションを統合管理できることが特徴。8月1日からβ版を提供予定で、熊田貴之社長は「早ければ年度内にも対応したドローンポートの提供を開始したい」と話している。

 VISはVertiport Information System(ドローンポート情報管理システム)の略。ブルーイノベーション独自のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」が開発のベースとなっており、ドローンの安全な運航を支援するUTM(ドローン運航管理システム、UAS Traffic Management)とハードとしてのドローンポートを繋ぐ役割を果たす。主な機能は、ドローンポートの遠隔監視のほか、ポート周辺の気象センサーや人侵入検知センサーから寄せられた情報を踏まえたドローンへの離着陸の指示、中高度からの着陸誘導、ドローンポートの遠隔制御(接続するポートの性能による)など。当面の主なターゲットは物流分野。具体的には、今後、物流分野における有人地帯での目視外(レベル4)飛行の普及に伴いUTMとともにドローンポートを含めた完全自動化ソリューションとしてのBEPポート|VISのニーズも高まると見込んでいる。

 BEPポート|VISは、ブルーイノベーションがイニシアチブを取って策定した世界初の物流ドローンポート向けISO規格に準拠している。
 ISOは製品やサービスの国際的な共通規格を定めるInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称。日本の産業製品に関するJIS(Japanese Industrial Standards)規格のように国ごとに異なっている規格を世界レベルで統合した国際標準規格で、これに準拠したプロダクトはグローバルな商用化が可能になると同時に、必要な機能が共通化されるためメーカーの新規参入が容易になるという特徴がある。

ポートを模したブースではシステムの各機能を映像を交えて紹介していた

 現在、各国の各メーカーがそれぞれ独自のドローンポートの開発を進めているが、ブルーイノベーションによると、各社がドローンポートの個別最適を追求した場合、メーカーごとに互換性が無くなり、結果として市場の発展が阻害される懸念が大きかったという。こうした問題意識をもとに、同社は2017年から国土交通省らとドローンポートシステムの国際標準化活動に着手。世界7か国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国、韓国、日本)の専門家らとの協議を牽引し、ここで合意された規格が2023年6月にISOに正式採択・発行。BEPポート|VISはこのISO規格に準拠した世界初のシステムとなる。熊田社長は「日本から世界のスタンダードが作れたことは業界にとって大きな一歩。国際基準ができたことでメーカーの参入障壁も下がり、ドローン利活用の促進が進めば」と期待した。

 「BEPポート|VIS」の説明展示では、VISに紐づく一連の機能や実用イメージを紹介。ポートを模したブースには人の侵入を感知するカメラが設置されており、人がポートに近づくと、デモ用管理画面が赤色に変化し「危険」「person」との警告が。実際に人の侵入を感知した場合は、ドローンに離着陸禁止を通達するという。
 ブースには国内外の関係者がしきりに訪れ、各種機能や利用場面などについて質問していた。

人の接近を感知するとデモ用管理画面が赤色に変化し「危険」「person」と警告が表示された

ELIOS 3 RADやその他のソリューションも展示

 ブルーイノベーションは同日、同社の屋内用球体ドローンELIOS3用のアタッチメントとして、放射線を感知・計測できる「ELIOS 3 RAD ペイロード」を9月1日から取り扱うことも発表した。同製品は、放射線センサーと専用アプリで構成され、ELIOS3に取り付けるだけでリアルタイムかつ遠隔での正確な放射線検知・測定が可能になるという。

 利活用場面としては原子力関連施設を想定。通常、放射線漏洩が疑われる事態が発生した場合、点検員が放射線計測機を手に現場で測定するため被曝が避けられないほか、自走式ロボットで検知を試みても3次元空間での計測ができないという課題があった。これに対し、ブルーイノベーションはこれまで火力や水力といった大型プラント点検等で蓄積したノウハウを生かし、原子力関連施設向けに3次元空間の線量を分析できる同アタッチメントを開発。熊田社長は「世界的に見てもほぼ唯一無二の製品。特別な環境下でも自社の技術力を発揮し、DX化に寄与していきたい」と話した。

 ブースではその他、プラント点検向け「BEPインスペクション」や送電線の自動点検サービス「BEPライン」、自動走行ロボット(AGV)と組み合わせた点検ソリューションを提案する「BEPサーベイランス」についてもパネルで紹介した。

ブルーイノベ―ションが手掛ける各種サービスの展示

#JapanDrone2023 記事