6月26日から28日の期間、幕張メッセでJapan Drone 2023が開催され、複数の自治体が出展していた。なかでも、静岡県御殿場市の施設「先端空間情報技術評価支援センター」で千葉大学環境リモートセンシング研究センターが開発した「バーチャル物見櫓(ものみやぐら)」はJapan Drone & AAM Awards 2023のソフトウェア部門で最優秀賞を受賞している。御殿場市のほか、兵庫県と山梨県早川町も取り組みを発表しており、その様子を紹介する。

あらゆる環境を計測できる施設で、安全で安価な災害情報取得システムを開発

 先端空間情報技術評価支援センターは、「加藤学園御殿場キャンパス」という、廃校跡を利用した研究実証の場である。3.5haの敷地では、裸地、傾斜地、建物、森林、調整池など多様な土地被覆が計測可能で、ドローン事業者向けのさまざまなサービスを提供している。千葉大学環境リモートセンシング研究センターはこの施設を使い、ドローンを使った「災害時避難情報共有システム バーチャル物見櫓」(以下、バーチャル物見櫓)を開発した。

 バーチャル物見櫓は、災害発生時に2機のドローンで災害地点を撮影することで、災害地点のセンチメートルレベルの位置情報と被害情報を取得できるシステムである。日本では、地震や火山活動による大規模災害の発生が懸念されており、発災時における人命・財産の保護に有効な情報収集方法の確立が不可欠だと考え、バーチャル物見櫓のプロジェクトが始まったという。

 災害発生時、被害状況を把握するために、被災地の上空をドローンが飛行すると、ドクターヘリなどの有人機との接触といった二次被害や災害対応に悪影響を及ぼすリスクがある。バーチャル物見櫓による情報取得は、ドローンで少し離れた場所から撮影する安全かつ安価なアプローチとなっている。

2枚の写真から緯度・経度・高さを算出し、災害対策の情報共有などに活用。

 千葉大学環境リモートセンシング研究センターの担当者は「バーチャル物見櫓は、約300人が参加した御殿場市の避難訓練でアンケートを実施したところ、非常に好評でした。災害以外でも、インフラ管理や生態系調査などへの利用も需要があると考えています」と話す。

 先端空間情報技術評価支援センターの担当者は「先端空間情報技術評価支援センターの施設は、テストフィールドとしてほかの大学や産総研、JAXA、日本写真測量学会など、さまざまな機関が利用しています。ドローンの研究にこの施設を活用してもらうことが御殿場市の意向です」と語った。

ドローンによる地元産業活性化のために、兵庫県がさまざまな事業者をマッチング

 兵庫県が2019年から展開する「ドローン社会実装促進実証事業」は、テーマを設けずに自由な観点からプロジェクトを進めている。一般的に、自治体は防災や物流など、特定の領域でドローンを活用する傾向にあるが、兵庫県では、インフラの点検、観光、水産業、物流など、さまざまな用途での実証を行っている。新しい産業分野として地域に根付くことを希望しており、その可能性を探っているのだ。

 実証を行う事業者を広く集め、事業性や将来性が見込めると判断された場合、その事業を採択し、事業者に資金を提供する。場合によっては、兵庫県が実証パートナーのマッチングも行う。これまでの実績では、新しい観光事業を考えている阪急交通社にドローン事業を展開するレッドドットドローンジャパンを紹介し、ドローンによる撮影ツアーの実証や、姫路市家島町の漁業協同組合と、水空合体ドローンを提供するKDDIスマートドローンが協力した養殖場の調査実証などを実現している。

大企業と地場企業をドローンでつなぐ。

 担当者は「ドローンの利活用で、県内企業を中心とした次世代産業の創出や更なる安全安心な暮らしを実現していくことが目的です。県内の産業の育成につなげていきたいです。今年で5年目ですので、ある程度の成果を示していきたいです」と語った。なお、2021年に実証が採択された清掃サービスを提供するダスキンによる、バキュームクリーナーを装着したドローンを使ったハチ駆除サービスは実用化を予定しているという。

日本で最も人口の少ない町が、ドローンで地域活性化を目指す

 山梨県の南西部に位置する早川町は、南アルプスや櫛形山系、身延山地に囲まれ、約370km²ある町の面積のうちの96%が森林で、人口は1000人に満たない山間の町。2022年4月には日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の認定スクールとして、自治体として初めて「南アルプスドローンスクール」を開設した。このスクールを中心に、町にある宿泊施設や付帯施設を利用し、ドローン開発企業向けの実証実験施設として提供する「南アルプスドローンアドベンチャーズ」構想を描いている。

 その一環で、2023年6月には、法人向けの無人航空機の離着陸場を設置した。約300m×400m以上の広さがあり、さまざまな条件下でのフライトトレーニングや機体の性能実験等に適しているとする。

新たにできた離着陸場。早川町は地理的特徴を活かし、ドローン事業の発展を目指す。

 担当者は「物流や点検、鳥獣対策のパトロールなど、さまざまな用途で実証をしたいというお声をいただいています。町としてもいろいろな課題がありますので、ドローンを使って解決していきたいと思っています」と語った。

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