総合容器メーカーの東洋製罐は、「容器」の技術を生かして開発した、遠隔スプレー缶噴射装置「SABOT-3」をJapan Drone 2023で展示した。それに加え、スプレー缶の噴射量を拡大する補助噴射装置「増槽」も公開された。

「SABOT-3」噴射操作を体験、その精度は抜群!

 DJIの産業用ドローン(展示はDJI Matrice 300 RTK)に装着可能なSABOT-3は、空中からスプレー缶の内容物を噴射することで、マーキングや軽補修作業、鳥用忌避剤の吹き付けなど、足場を必要とせずに高所作業を可能にする。スプレー缶を交換するだけで幅広い目的で使用することができる遠隔型スプレー缶噴射装置だ。

 カメラ性能の進化により、点検業務の効率化や高所での危険な作業の代替手段としてドローンの活用が進んでいるが、補修などの最終的なメンテナンスは人が作業する必要がある。SABOTは、ドローンに「見るだけ」でなく「作業する」機能を見事に実現させた。

 東洋製罐は、これまでにない発想で会場の注目を集め、例年行われるJapan Droneのコンテストである「Japan Drone & AAM Awards 2023」のオーディエンスアワードを受賞するに至った。

 今回の展示では、SABOT-3のデモンストレーションが行われ、実際に水の噴射操作を体験することができた。その様子をレポートする。

ブースでは、実際に噴射操作が可能な体験型の実演が行われていた。
「SABOT-3」。外形寸法は、長さ379mm×幅93mm×高さ123mm(ノズル取り付け時)。本体525g、ノズル・水スプレー缶搭載時715g。防水・防塵のハードケースに収納しコンパクトに持ち運ぶことができる。

 SABOTの大きな特徴は、DJI Matrice 300 RTK、350 RTKにワンタッチで取り付けができるということだ。DJI Skyport V2を搭載し、PAYLOAD SDKを用いて開発されているため、ペイロードとして取り付けるだけで自動的にドローン側が認識して使用することができる。

DJI Pilot 2アプリ画面。SABOT-3がペイロードとして認識されているのがわかる。送信機は「DJI RC Plus」の他、DJIスマート送信機に対応。
DJI Pilot 2アプリ画面上に表示されたインターフェース。狙いを定めるための到達位置予測や対象物からの距離、スプレー缶の残量などの情報がカメラの映像上にオーバーレイされた状態で表示される。画面中央、緑の四角の中心が到達予測位置。
噴射操作体験の様子。送信機の左肩部分にあるダイヤル操作で上下、右肩のダイヤル操作で左右のノズルの角度を調整。発射時は、誤操作を防ぐため二段階スイッチになっている(送信機裏のC1ボタンを押し、ロックを解除してからC2ボタンで噴射)。

 ノズルと同軸にカメラと測距センサーを設置。噴射軌道データと測距センサーにより到達する位置と飛散量を予測し、画面に表示された到達予測位置に照準を定め、ピンポイントで噴射する。

 また、機体の姿勢からドローンが受けている風向きを推定し、画面上の緑の小さいドットの動きで液のドリフト方向を表示する。左右の風に対しては、風で流される方向を示し、ドットが激しく揺れている時は、風が強いことをオペレーターが認識できる。不安定な状態での噴射を防ぎ、画面で確認しながら、噴射するタイミングや照準の調整を慎重にコントロールすることが可能。噴射中に強い風が発生した時は自動的に噴射を止めるセーフティー機能も備えている。スプレー缶の内容物によっては危険物を噴射する場合もあり、飛散などの安全性には気を遣っているという。

カメラを扱うように、ノズルジンバルでパン・チルト方向にノズルを動かすことができる。スタビライザー機能もついており、安定した噴射が可能。
連射する様子。
液が無くなったり、液種を切り替えたりする場合は、カバーを開けてスプレー缶の交換を行う。ノズルも着脱が容易で、用途によっては使い捨て運用も可能。

 スプレー缶を追加搭載し噴射量を拡大する補助噴射装置「増槽」も展示されていた。SABOT-3に増槽を4台連結すると、最大5本750mlの噴射が可能になる。広範囲の作業で容量不足を削減し、スプレー缶を交換するための離着陸の回数を減らせるなど、作業の効率化につながるという。

DJI Matrice 350 RTKに搭載された「SABOT-3+増槽」。増槽はランディングギアに直接、2台もしくは4台取り付けが可能。
ハードケースに収納した状態の補助噴射装置SABOT「増槽」。機体の取り付けやチューブの配管も工具レスで簡単に取り付け・組み立てができる。