川崎重工業は、伊那市で取り組んでいる「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」で使用している自社開発の無人VTOL機「K-RACER-X1」を第1回ドローンサミットで展示した。

南・中央アルプスで荷揚げのニーズに応える〝物資輸送プラットフォーム"

出典:川崎重工業の資料より引用

 長野県伊那市の中央アルプス、南アルプスのエリアでは、2021年にK-RACER-X1を使った「物資輸送プラットフォーム構築プロジェクト」を開始している。川崎重工業のほか、KDDI、損保ジャパン、日本気象協会、ゼンリン、朝日航洋、東邦航空の計7社が伊那市から委託を受け、同プロジェクトに取り組んでいる。

 同プロジェクトは、山小屋への物資輸送を目的としたもので、K-RACER-X1を飛行させ、荷物を届けるというものだ。これまで、山小屋への物資輸送は有人ヘリコプターに頼ってきたが、パイロット不足や機体確保の難しさ、高コストなどが課題とされており、これを中小型機であるK-RACER-X1に置き換え、課題払拭を試みながらビジネス化を目指すプロジェクトとなっている。

 また、有人ヘリコプターの課題に加え、近年のアウトドアブームによって山小屋の利用人口が増えているため、山小屋への物資輸送のニーズが高まっているという。

小型・中型ドローンとヘリコプターの中間を担う「K-RACER-X1」

 川崎重工業が2020年から事業化し、開発を進めているのがK-RACER-X1だ。川崎重工業のヘリコプター開発を行う航空宇宙システムカンパニーと、オートバイの開発を行うカワサキモータースが手掛けたVTOL機であり、最大積載量は100kg以上を可能にした。

 ローター径5m、全高1.9mという大きさから、無人地帯での目視外飛行を想定し、伊那市での取り組みをきっかけにビジネス化を目指している。機体には自動航行を備え、LTE通信とGPSをもとにA地点からB地点まで物資を運搬するといった仕組みだ。また、100kg以上の重量物運搬を可能にしたエンジンには、カワサキモータースのフラッグシップモデルである「Ninja H2R」のエンジンが採用されている。

 K-RACER-X1は有人ヘリコプターに比べ、購入コストを何十分の1まで削減可能なうえ、自動航行で運用できるため、高度な操縦技術を持ったパイロットを必要としない。有人ヘリコプターの積載量は500kg~1tとK-RACER-X1をはるかに超えるが、大量の物資を必要としない場所での運用や、自動航行で手軽に往復して荷物を運ぶといった運用でメリットを生かすことができる。現在は無人地帯での運用のみを考えており、伊那市でのプロジェクトに加え、災害時での物資輸送などのユースケースを踏まえて、ビジネス化を進めていくという。

 また、2026年に向けて量産機となる「K-RACER-X2」を開発中だという。最大積載量を200kg以上に増やし、高度3000mまで重量物を運搬できる仕様を目指している。将来的には配送ロボット等と連携した無人物資輸送を視野に入れ、開発を進めているという。

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