火力・原子力発電設備の建設、メンテナンスなどを行う関西電力グループの関電プラントは、プラント設備等の点検にドローンを活用した工法を提案しており、屋内外で使用可能な点検用ドローンなどを展示した。

 プラントをはじめとする大規模設備の保守管理には定期的な点検と補修が不可欠だが、この数年でドローンの活用が注目され始めている。

 設備メンテナンスは高齢化を要因とする労働者不足の問題に加え、特にプラントは敷地も広大で、高所や危険な箇所も多いため、安全性の確保や効率的な点検が求められている。そこで、ドローンの活用に期待が高まっている。

 関電プラントは、電力の安定供給という社会インフラの維持管理で長年培ったノウハウを活かし、自社の社員がドローンで点検を行い、点検結果の評価から最適な修繕方法を提案。工事の受注・施工までを一貫して行うドローンを活用した点検ソリューションを提供している。

 プラント設備点検におけるドローン活用のメリットは、ドローンを飛ばすことにより、足場やゴンドラの設置が不要で、コスト節減や工期短縮ができ、プラントの停止時間短縮が実現できる。また、煙突やボイラーといった高所作業など危険を伴う箇所や、これまで足場を組むことも難しかった箇所の点検も可能になり、点検作業の安全性・効率性の向上が期待される。

点検現場に合わせてさまざまなドローンを使いこなす関電プラント

 展示会では点検現場の環境に合わせ、屋外点検「Autel EVOⅡ」、屋内点検「ELIOS 2」、狭隘部点検「BetaFPV PAVO 30」、水中点検「QYSEA V6 PLUS」の4つのドローンが展示されていた。

EVOⅡ 屋外点検

 屋外点検用ドローン EVOⅡは、GPS環境下で使用され、主に足場や高所作業車が必要な屋外の高所で活躍する。点検場所の例としては、ボイラー外面、タンク外面、配管外面、太陽光パネル、風力発電設備などで行われ、点検内容は、サビ等の腐食状況、塗装剥がれ、ボルトの緩み点検、構造物の変形・亀裂・損傷・脱落の有無、構造物の経年変化、温度異常の調査、構造物の3Dスキャンなど多岐にわたる。

屋外点検用ドローン「EVOⅡ」。可視光カメラと赤外線カメラが一体となったデュアルカメラを搭載。機体上部には、アクセサリーとして、暗い場所を照らすスポットライト、スピーカー、RTKモジュールなどが搭載可能。機体の後方にコントローラーが展示されていた。
ブースで紹介されていた映像。コントローラーの画面は、可視光カメラと赤外線カメラの切り替えが可能で、画面中央に赤外線カメラの画面を映すことができる。温度データも取得可能。外壁、傷の点検やボイラーの異常発熱などを、外面から確認することができる。

ELIOS 2 屋内点検

 屋内点検用ドローン ELIOS 2は、屋内など非GPS環境で、高所や酸欠、硫化水素中毒危険エリア、人が立ち入ることが難しい狭小空間の点検を安全に行う。GPSによらない安定性と球体ガードが障害物と衝突時の衝撃を和らげる衝突耐性を持つ。点検内容は、サビ等の腐食状況、塗装剥がれ、ボルトの緩み点検、構造物の変形・亀裂・損傷・脱落の有無、構造物の経年変化などが確認でき、煙突内部、ボイラー炉内、サイロ内部、配管内部、地下ピットなどで使用される。

屋内点検用ドローン「ELIOS 2」。非GPS環境でプロポを使用し、操縦はマニュアルで行う。

PAVO 30 狭隘部点検

 狭隘部点検用ドローン PAVO 30 は、立ち入り困難な狭隘部や屋内の足場が必要な高所、酸欠、硫化水素中毒危険エリアなど、非GPS環境下で使用される。点検内容は屋内点検用ドローンと同じで、天井裏、配管内部、ダクト内部、地下ピット、下水道、トンネルなどで点検を行う。機体は、超小型のマイクロドローンを使用し、点検用カメラは機体上部に取り付けが可能。配管内部などに入る場合、機体に搭載されたカメラ映像をゴーグルで見ながら、FPV(一人称視点)で飛行させ点検を行う。操縦は完全にマニュアルで行うため、4種類の機体の中で一番難しいという。

狭隘部点検用ドローン「PAVO 30」。

V6 PLUS 水中点検

 水中点検用ドローン V6 PLUS は、水中点検、水中撮影、水中調査で活躍するドローンで、点検内容は、サビ等の腐食状況、塗装剥がれ、クラックの有無、構造物の経年変化、水生生物不約状況、堆積物などが確認できる。タンク内部、水管、取水・放水設備、海底ケーブル、船体の点検などで活用される。

ロボットアームで不用物などを掴むことができる。その他、水質センサーなどさまざまな産業用アタッチメントに対応している。

 水中ドローンは、電波が届かない環境のため、機体を有線ケーブルで接続し、電力を供給しながらコントローラーで操縦する。万が一、動かなくなった場合でも、有線ケーブルを巻き取ることで機体の回収ができる。水中ドローンは、カメラを真下や真上に向けて撮影することもでき、暗所や水質がある程度汚れている場合でもライトをつけることで点検が可能となる。これまで、発電所の内部、水タンクの内部や排水設備などを点検する場合、水を抜いた後に点検する必要があった。作業効率や期間、費用面を考えてもドローン活用のメリットは大きいといえる。

V6 PLUSが行った水中点検の様子。
会場には管内外検査ロボットも展示されていた。前方左が「M3クローラ」、前方右は「M4クローラ」。水色の配管内部にある「M2クローラ」は関電プラントとシーエックスアールが共同で開発。磁石の吸着力で「磁性体配管」に適用可能。

 関電プラントは、電力以外の産業プラントや再生可能エネルギー分野にも進出しており、風力発電設備への取組みもパネルで展示していた。1月25日に関西電力および関電プラントは、NEDOが公募する「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」で「浮体式風車ブレードの革新的点検技術の開発」が採択されたことを発表した。ドローンを用いて、浮体設備の波風による位置変動に対応するため、リアルタイムな位置推定および追従を可能とする制御技術やドローンによる外観点検等の実現を目指すという。

風力発電設備への取組みもパネルで紹介されていた。

 また、2021年9月24日には、航空法施行規則が改正され、ドローン等の飛行に係る許可・承認の見直しや、煙突や鉄塔など高層の構造物から30m以内の飛行許可が不要になるなど、ドローン等の飛行規則が一部緩和された。点検分野におけるドローンの利活用は今後も拡大することが予想される。