5月25日から27日の3日間、千葉市の幕張メッセで「第4回 建設・測量生産性向上展 CSPI-EXPO」が開催された。国土交通省は2016年度から「i-Construction」として建設現場におけるICTの導入を推し進めており、2023年度までに小規模をのぞくすべての公共工事に原則としてBIM/CIMを適用することを目標として掲げている。

 ドローンはそんなICT技術のひとつとして近年、写真測量やレーザー測量の機材として位置付けられ、普及が進んでいる。今回のCSPI-EXPOでは、昨年の同展示会で目立ったUAVレーザー測量のための機材やサービスのほか、写真測量でも標定点の設置を大幅に省力化できるPPK(Post Processing Kinematic:後処理キネマティック)方式のシステムの出展が見られた。

 UAVレーザー測量向けのLiDARでは、昨年リリースされたDJIの「Zenmuse L1」やYellowScanの「YellowScan Mapper」が、DJIのMatrice300 RTKに搭載できることやコストパフォーマンスの高さから、UAVレーザー測量に対する敷居を下げたとされている。今回のCSPI-EXPOではYellowScan JapanからYellowScan Mapperの上位機種として昨秋にリリースされた「YellowScan Mapper+」が展示されていた。

「YellowScan Mapper+」はMapper同様、Livox社のAVIAスキャナーを採用。DJIのMatrice600やMatrice300 RTKに搭載できるマウンティング・ブラケットを用意している。
RIEGL社のUAV向けLiDARの新製品「VUX-1UAV-22」。従来の製品に比べて測定レートが最大120万点/秒に引き上げられている。

 また、独自のLiDARを開発しているアミューズワンセルフは、従来のLiDAR製品を改良した最新モデルである「TDOT 3」シリーズを出展。とくにUAV向けとして小型化を実現したグリーンレーザーの「TDOT GREEN」は、「水深がある場所は測れないためその有効性に疑問がもたれることが多いが、今、全国で進められている海岸線の測量においては、測深器を積んだ船が入れない浅瀬の測量に有効。また、近年頻発している大雨による土砂災害の現場では、地形の表面が濡れていてもグリーンレーザーなら計測ができる」(説明員)という。なお、同社は本展示会の初日である5月25日にソフトバンクとの技術提携を発表している。

DJIのMatrice300 RTKにも搭載可能な「TDOT GREEN」。専用コントローラー上でスキャンデータをリアルタイムに表示することも可能。

 一方写真測量では、エアロセンスが汎用ドローン「AEROBO(エアロボ)」に、PPKのシステムを搭載した「エアロボPPK AS-MC03-PPK」を展示会初日の5月25日に発表すると同時に、同社のブースで展示を行っていた。
 同社はこれまでにも写真測量用の「エアロボ AS-MC03」、トプコンのTSトラッキングシステムを搭載した「エアロボ AS-MC03-TS」をリリース。今回発表されたエアロボPPKは、AS-MC03をベースに2周波GNSS受信モジュールと、3軸ジンバルで懸架したソニーのミラーレスカメラを搭載し、カメラのシャッタータイミングにGNSSの時刻を同期させながら撮影を行う。その結果、標定点を設置しなくても、i-Construction基準の±5cm以内という精度を実現するという。

エアロセンスの「エアロボPPK AS-MC03-PPK」。機体上部にPPK用のGNSSアンテナモジュールを搭載している。

 早くからPPK方式の測位システム「KLAU PPK 精度ばちばち君」を提供しているGeoLink Japanは、SkyLink Japanのブースで実験的な取り組みとして、同システムを搭載した「AirPeak S1」を展示。近年、国の事業やインフラ企業などを中心に高まっている、国産ドローンに対するニーズを受ける形で、国産機であるAirPeak S1にKLAU PPKを組み合わせたものだ。

ソニーのAirPeak S1の前面にKLAU PPKのユニットを搭載。

 また同社はこれまでにVTOL型ドローン「Wingcopter」にLiDARを搭載し、山林をはじめとした広範囲の測量にも取り組んでいるが、新たにラトビアFIXAR社のVTOL型ドローン「FIXAR 007」を展示。小型軽量ながら最大で約60分、約60kmの飛行が可能で、広範囲の測量などに利用できるとしている。こうした公範囲の測量に対するニーズは年々高まっており、エアロセンスはそれに応えるものとして、VTOL型ドローン「AEROBO WING AS-VT01」を出展。今年3月に福島県において長さ約5kmの範囲で砂防ダムの点検を行った実績を紹介していた。

 このほか、本展示会では携帯電話ネットワークを使ったドローンの遠隔制御システムの展示も見られた。携帯電話大手KDDIでは、今春にKDDIスマートドローン社の発足と前後して発表した、「スマートドローンツールズ」のソリューションのひとつである、ドローン専用通信モジュールの試作品を披露。またSkyLink Japanでもドローン専用のLTE通信システムを展示していた。

DJIのMatrice300 RTKに搭載された、KDDIのドローン専用通信モジュールの試作品。
SkyLink Japanのブースで展示されたドローン専用総合LTE通信システム「Smatii CS-OLTE220」。

 今回のCSPI-EXPOでは、ドローンに関するビジネスを中心にする企業だけでなく、測量会社を中心に、幅広い分野の企業のブースでドローンに関する出展が見られた。これまでドローンを使った測量は、いわゆるドローン事業者が請け負う形で行われることが多かったが、年々、ドローンのコモディティ化が進んでおり、近年建設・測量事業者自らドローンを運用し、測量をはじめとしたさまざまな業務を行っていることの表れだといえる。
 その一方でUAVレーザー測量を手がけてきたAce-1は、ラポーザ、スカイジョイントと合弁会社ARS-techを設立し、有人ヘリコプターによるレーザー・空中写真測量サービスを今秋から始めると発表し、同社のブースではロビンソン・ヘリコプター社のロビンソンR44を展示するなど、より航空測量事業者として専門化する傾向も見て取れた今回のCSPI-EXPOであった。