石川エナジーリサーチは、2010年に本田技術研究所からスピンアウトするかたちで設立されたベンチャー企業だ。同社が強みとしているのは最先端熱エネルギー利用技術であり、このコア技術を用いた新技術を軸に商品開発を行っている。ドローン事業では農薬散布機「アグリフライヤー」のほか、測量・点検用「ビルドフライヤー」、エンジンハイブリッドドローン、カスタマイズドローンといった特徴的なドローンの開発・製造を行っている。

専用アプリで散布範囲を簡単に設定!自動飛行で1haを約10分で散布

10Lタンク機「アグリフライヤー typeR」。サイズは1345(L)×1345(W)×690(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。
散布範囲・飛行ルートは専用アプリで簡単に設定可能。端末とプロポを組み合わせて使用することで、農薬の残量表示や飛行速度の調整などが行える。

 同社のブースで注目を集めていたのは、11月に発売予定のアグリフライヤーシリーズの新機種「アグリフライヤー typeR」(液剤タンク容量は10L)だ。アグリフライヤー typeRは、専用アプリをダウンロードしたタブレットとプロポを組み合わせることで、自動飛行や高精度な自動散布が可能となり、農作業の効率化につながる。タブレット画面で農地の衛星画像を見ながら散布範囲の地点を迅速かつ簡単に登録でき、台形や三角形といった変形の圃場にも自動飛行で対応する。

散布ノズルは機体センター左右に設置。横風を受けにくく薬剤を根元まで届け、ムラのない散布を実現。散布幅は4mで噴霧量は0.8~1L/分。

 散布に関しては、1haを約10分で完了。散布ノズルを機体センター左右に配置したことで力強いダウンウォッシュにより横風を受けにくく薬剤を根元まで届け、ムラのない散布を実現した。また、速度連動機能の搭載によって、一定の流量を速度に合わせて散布することが可能になった。フライトログや作成した飛行ルートは記録できるので、再散布時にそのログを選択すれば、再設定する必要なく、すぐさま同じルートで農薬散布に取り掛かることができる。

前方の障害物センサーと下方ライダー。障害物に接近すると機体が自動で停止する。また、下方ライダーにより高低差のある圃場でも安定して高度を維持できる。
後方の障害物センサー。
タンク直下にポンプを配置。散布はじめのタンクのエア抜きが不要となり、時間短縮かつ経済的。

 飛行の安定や安全面も十分考慮され、機体には前方と後方に障害物センサーを搭載。これにより、機体が障害物に接近すると自動で検知して停止する。さらに下方ライダーは高低差のある圃場で一定の高度を維持し、安定した散布に貢献する。また、タンク直下にポンプを配置することで、散布はじめのタンクのエア抜きを不要にし、すぐさま散布が可能なうえ、薬剤をしっかりと使い切ることができる。ポンプの配置を工夫した結果、残農薬の処理が不要になるなど、コストの削減に加え、作業時間の短縮も実現した。なお、タンク内の農薬の残量はタブレット画面上で確認でき、補充のタイミングを把握しやすい。

軽量・高耐久・高剛性を実現したマグネシウム合金製の機体

 通常、ドローンの機体に使われるのはCFRP、いわゆる「カーボン」が多いが、同社のドローンの特長といえば、本体からアームまでマグネシウム合金を採用していることだろう。担当者によると、「マグネシウム合金は、カーボンと同等の軽さを持ち、工業ファスナー(工業製品のパーツを締め付けたり繋ぎとめたりする部品)の使用が可能であり、さまざまな成形法、部品締結ができるだけでなく、部品の品質管理が容易で生産性がよい」とのこと。また、紫外線による強度劣化がないのもマグネシウム合金を採用した理由という。

タンクはカウルを開けて取り出す形になる。取り付けはアタッチメントをカチっととめるだけ。
オプションで粒剤散布装置も用意。

 取り扱いも簡単で、農薬の付着や土や雨による汚れは、機体に水をかけて洗い流すことができる。また、タンクは工具を使わずにアタッチメントをカチッととめるだけで簡単に取り外しが可能だ。

測量・空撮ドローン「ビルドフライヤー」。飛行時間はペイロードなしの場合は45分、最大ペイロード5kgの場合は25分。オプションで一眼レフカメラ、赤外線カメラ、災害対策ユニット、レーザー測量機などを搭載可能なので、測量や撮影、検査、維持・管理、防災などさまざまなシーンで活用できる。
2022年発売予定の「ハイブリッドドローン」が参考出展されていた。
「ハイブリッドドローン」の内部。エンジンは同社が特許取得している無振動エンジンで、排気量は125cc。最大離陸重量は27kg。ペイロード5kg時で飛行時間は1時間。

 このほか、同社のブースには測量・空撮ドローンの「ビルドフライヤー」と2022年発売予定の「ハイブリッドドローン」が展示されていた。同社は今後も国内開発・国内製造ドローンメーカーとして、日本国内のニーズに応える機体・システムを開発していくとしている。