東光鉄工は、日本の主要技術・主要部品で設計した自社開発の10Lタンク機「TSV-AQ2」を展示した。

農家の負担軽減につながるドローンとは何か?を考えた農薬散布機

10Lのタンク容量を備えた「TSV-AQ2」。サイズは1830(L)×1830(W)×540(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。

 東光鉄工は、各種鋼構造物の設計製作、各種機械装置・プレス金型の設計製作などを手掛ける秋田県大館市の企業で、南極昭和基地の格納庫や倉庫「TOKOドーム」でも知られている。農業用ドローンへの参入は「地元が秋田県のコメどころで、地元の農家の要望にこたえようと農薬散布用ドローンを開発した」(同社UAV事業部・天内氏)という。2015年にUAV事業部を新設し、現在では機体開発・販売、スクール運営などを行っている。今回、同社が展示したドローンは、今年5月に発売した新型の農薬散布機TSV-AQ2だ。

機体のセンター左右に設置されたブームにノズルを装着することで、前進後進時の散布ムラを抑制した。また、ブームの長さを調整して散布幅を変更できる。散布幅の基本は4m。
バッテリー、タンクは上部より簡単に着脱が可能。
自動航行のルートはプロポで簡単に設定できる。
機体前面に搭載されたFPVカメラ。

 TSV-AQ2は、液剤・粒剤(オプション)ともに10Lの容量を持ち、粒剤散布装置は豆つぶ剤など多種多様な資材の散布に対応する。ノズルを機体センター左右に設置したブームに装着することにより、前進後進時の散布ムラが出にくくなった。ブームの長さは可変式で、基本の散布幅は4mだが、作物に応じて変更が可能だ。こうした散布能力や飛行時間が従来モデルに対して向上しており、1.5ha/6L×2回をバッテリーの交換なしにフライトできる。また、簡易着脱構造となっており、バッテリー、タンクは上部より簡単に着脱が可能なので、フライト前の準備に時間がかからない。安全面では360度障害物センサーにより障害物を感知し、衝突を防止するほか、機体前面にFPVカメラを搭載することで、ドローン前方を映像で確認できる。機体は保護等級IP45の耐候性筐体のため、手間をかけずにまるっと水洗いで汚れを落とせる。機体タイプは2種類あり、自動航行散布機能と360度障害物センサーを搭載したフルスペック機「TSV-AQ2F」(税込価格176万円)と、それらの機能を搭載しない「TSV-AQ2S」(税込価格121万円)を用意しているので、用途にあわせて選択が可能だ。

 また同社では、リンゴなど果物栽培が盛んな青森県南部町にある県立名久井農業高校と3年前より果樹溶液受粉の実証実験を行ってきた。花粉管の伸長を促すホウ素を溶かした溶液に花粉を混ぜたものをドローンで散布し、効率的に授粉する手法を共同開発している。この取り組みは「農業イノベーション大賞 2021」の優秀賞を受賞した。

 リンゴは、同じ品種の花粉がついたのでは実にならない(結実しない)ことから、異なる品種の花粉を花につけることが必要となる。受粉作業(人工受粉)は、養蜂家に依頼して蜂を園内で放したり、専用の授粉棒を使って手で行ったりするため、多くの手間暇や費用がかかり、収穫まで作業工程が多い農家にとって大きな負担になっている。この作業をドローンで省力化、効率化しようというもの。花粉が目詰まりを起こさないよう噴出口の口径を改良したり、リンゴの木の枝の幅に合わせ溶液を噴出するノズルの位置を調整できるようにした授粉作業に対応したドローンの発売も予定している。