産業用ドローンの国内メーカーであるマゼックスは、農薬散布ドローンの飛助シリーズ「飛助MG/DX」と「飛助mini」の2021年モデルと林業用運搬ドローン「森飛-MORITO-」を展示した。「飛助」シリーズは、2018年から販売を開始し累計販売台数は1000台以上に上る農薬散布用ドローンだ。2021年モデルはオリジナル制御装置や高度・障害物レーダーを搭載し、「日本の圃場で本当に役立つ機体」というコンセプトをより進化・発展したモデルとなっている。

10L機でも最大2haの散布を可能にした「飛助MG/DX」2021年モデル

1月に発売された「飛助MG/DX」2021年モデル。サイズは、1160(L)×1160(W)×620(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。タンク容量10L。価格は92万4,000円(税込)から。
「飛助MG/DX」2021年モデル用のマゼックスオリジナルバッテリー。10L積載した場合で約1フライト=1.2ha、6L積載した場合で約2フライト=1.6ha、4L積載した場合で約4フライト=約2.0haをバッテリーの交換なしでフライトできる。バッテリー容量は16300mAh。高速充電器対応。

 近年、農水省が生産性向上のために水田を中心に大規模化・集積化を進めており、大規模な耕地面積を有する生産者が増えてきている。しかし、飛び地や、ひとつづきでない圃場を集めた場合も多く、その結果“保有面積が大きいから大型ドローン”とはいかないのが現状だ。マゼックスではそうした現状を考慮し、「飛助MG/DX」2021年モデル(10Lタンク機)は1ヵ所当たりの圃場を50a前後と想定。オリジナルバッテリーやフレームの軽量化・適切な動力部品を搭載し、消費電力量の削減を行うことで飛行時間が大幅に向上した。また、その圃場に必要な薬剤量だけ搭載することで、1つのバッテリーで最大16L=2haの薬剤散布が可能だ。バッテリー1つあたりの飛行時間が伸びることで、従来であれば多くのバッテリーが必要だったが、数本のバッテリーで1日中作業することができる。

10kg 粒剤・肥料・豆つぶ剤散布装置。新開発の全異形インペラーに変更したことにより、バラツキなく薬剤を散布できる。
散布した薬剤が偏らないように薬剤の吐出傾向を研究。インペラーの形状をすべて異なる角度にし、角度を変えることで左右に吐出量を調整することが可能となった。(出所:マゼックス)
タンクの脱着はつまみを押すだけのワンタッチ式で、液剤散布装置から粒剤散布装置への交換も数分で行える。

 また、2021年モデルの粒剤・肥料散布装置(オプション)は内部をアタッチメント式にすることで1kg粒剤はもちろん肥料や豆つぶ剤まで散布することが可能だ(直径1~5mmの粒形で乾燥している固形物に限る)。アタッチメントを装着すれば1kg粒剤を精密に散布することが可能で、アタッチメントを外せば1分間に5~10kgまで吐出できる。インペラーのフィン形状を全て異なる形状としたことにより左右前方に吐出される量を均一に保てるほか、インペラーの回転数も手元の送信機で調整でき、散布薬剤に応じて散布幅などを微調整することが可能になる。また、標準で残量警告が付属し、タンク内に薬剤や肥料があるのかどうか飛行中でも判断できるようになった。

レヒラー製の専用ノズルを搭載。噴霧を停止した時に0.8秒以内にピタっと止まるようにボタ落ち防止弁を採用している。流量は0.4L/分。
前後のノズルを使い分けるためにダイヤフラム式ポンプを2つ装備し、一定量を吐出できる。ポンプは自動制御され操縦者が切替操作を行う必要はない。

 そのほかにもオリジナルフライトコントローラーを開発した。強い耐衝撃性を備えたプラットフォームと3つのIMU・2つのCPUとバロメーターで構成され、優れた処理能力で飛行安定性を大幅に向上した。ホバリングの精度向上はもちろん、飛行中の高度維持や姿勢制御も精密に行い操縦者の負担を軽減させる。GPSの補足数も向上しGPSのロストも大きく低減できる。また、従来の直進アシストモードや自動飛行モード、連動散布に加え、散布のタイミングなど任意で細かい調整も簡単に行える。

3月に発売された「飛助mini」2021年モデル。サイズは、990(L)×990(W)×548(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。タンク容量5L。価格は60万5,000円(税込)から。
大型機と同様な大きな投入口を持つタンク。タンク内の清掃が簡単に行え、円錐形の形状をしているので内部に残る薬剤量を削減する。
4本のアームを折りたたむことで軽自動車の助手席に置けるほど小さくなる。機体重量が6kgと軽量なので、女性でも取り扱いやすい。

 「飛助mini」2021年モデルは、中山間地でも扱いやすさを実感できることと、導入しやすいコスト設定にすることを前提に開発した5Lタンク機だ。「飛助MG/DX」2021年モデルと同様に、1つのバッテリーで合計1ha散布できる低燃費仕様。オリジナルフライトコントローラーを搭載し、安全性が向上した。もちろん粒剤・肥料散布装置(オプション)も搭載可能だ。機体重量はわずか6kgと軽量なので女性でも簡単に持ち運びができる。

1時間に500本程度の苗木を運搬!苗木の運搬の省力化を実現する「森飛-MORITO-」

国内初の林業用運搬ドローン「森飛- MORITO-」。サイズは、990(L)×990(W)×752(H)mm(アームとプロペラを伸ばした状態)。1オペタイプのウインチ型(294万8,000円)と2オペ型(184万8,000円)を発売。写真は2オペ型。価格は税込。
運搬物が着地すると自動的に外れるフック。これにより荷外し作業が不要になり、大幅な省力化と飛行中の機体に近づく必要がないため作業者の安全も確保できる。上部にあるのは共振防止装置で、衝撃を吸収して運搬物の揺れを止めることができる。

 また、2020年2月に住友林業株式会社と共同開発した国内初の林業用運搬ドローン「森飛- MORITO-」も展示。苗木の運搬は負担の大きい作業で、事故の危険性も非常に高く、農業同様に人手不足や高齢化が懸念されている。「森飛- MORITO-」は、1フライトで8~15kgの荷物を運ぶことができ、現在主流になりつつあるコンテナ苗なら40本~80本程度を一気に運搬できる計算だという。さらに、ドローンの操縦者のみで運搬が完結でき、荷降ろし作業はモニターで状況を目視しながら確実に実施できる。苗木が地面に着地したときの張力の変化で、自動的にフックから苗木が外れる機構を採用した点もポイントで、荷降ろしの現場に作業員が待機する必要がない。また、専用アプリに出発地と目的地の情報を登録すれば、離陸と着陸以外はボタン1つで自動飛行させることも可能だ。これらの機能を実装した結果、ドローンの操縦者ひとりで、1時間で500本程度のコンテナ苗を運搬できるようになった。

 山林では、傾斜地や斜面に囲まれた場所などに苗木を下ろす場合がほとんどであり、機体が斜面に接触する危険が高まるが、付属のウインチを使うことで、機体は安全な位置でホバリングした状態で苗木を降下することが可能となった。また、強風や突風にあう環境でも、ウインチを使って苗木を機体近くまで巻き上げた状態にすることで、安定した飛行を実現する。

2オペ型は緊急切離し装置を備えており、切離し装置が動作せず運搬物を下ろせない場合などは、自動切離しフックごと外すことができる。

 万が一のアクシデントにも、山林の中でも見つけやすいように機体の前後を赤と白でカラーリングし、異なる色のLEDライトを採用した。また、送信機と通信が途絶えた場合には、自動で着陸地点に帰還する。見通しの悪い山林では、全ての作業を目視内で安全に作業するために、2つの送信機で1台の機体を操縦する2オペ型も発売している。

 今後も同社ではスローガンである「DRONE IS IN YOUR HANDS」のとおり、国内開発だからこそできる日本で扱いやすい産業用ドローンを開発していくという。