スマート農業事業を手掛けるワイズ技研は、10月1日にDJIが発売を開始した農薬散布用ドローン「Agras T30/T10」を展示した。T30は大容量30Lタンクを搭載したパワフルなフラッグシップ機で、T10は8Lのタンク容量と最大6mの散布幅で高効率な散布作業を可能にし、コンパクトでありながらも実用性の高いモデルだ。
大容量30Lタンク、最大9mの散布幅で大幅に作業効率を向上したT30
T30は30Lの液剤タンクを搭載し、最大9mの散布幅を活かすことで、一度の飛行(約15分)で2haの散布を可能にした。16個の噴霧ノズルと8個の電子制御弁により独立した精密な吐出量制御を行い、ムラのない均一な散布ができる。噴霧量は7.2L/分でオプションのノズルに変更すれば最大8L/分となる。また、タンクには連続測定が可能な液面計を備えているので、リアルタイムに残量を確認でき、薬剤の補充が効率的なタイミングで行える。さらに、オプションパーツには新型の粒剤散布装置が用意されており、最大容量40kg。1分で20kgの散布が可能で、散布幅は最大7.5m。重量検知センサーによりリアルタイムでの残量確認が可能だ。
今回最大のポイントは「果樹用散布モード」を用意したことだ。リンゴなどの果樹の場合、葉の裏側に害虫がつくことが多く、農薬は葉裏にも必要となるが、ドローンのように上空からでは葉裏に散布することは難しい。しかし、「果樹用散布モード」でオプションの果樹用ノズルに変更しアームを斜めにすることで横風を起こし、葉裏へ散布することが可能になった。果樹用ノズルへの交換は約1分で行えるなど、使い勝手も非常に良い。
バッテリーはT30専用設計となった。専用のインテリジェントフライトバッテリーは、1000サイクルの製品保証で29000mAhと大容量。冷却を待たずに充電でき、回路基板のポッティング保護によって防水性と耐腐食性を備えているそうだ。
T30/T10ともに効率性、安全性が向上
T30/T10共通の新機能として、圃場の形に合わせて外周を自動で1周する「額縁散布モード」が追加された。これにより、これまでは困難だった複雑な地形にも散布が可能になった。
また、安全面も向上。球面型全方向レーダーシステムを搭載。3D環境のリアルタイム認識により、正確な地形適応、全方向の障害物回避・自動迂回を行う。機体前後にはFPVカメラを配置し、正面と背面の状況を確認することが可能だ。また、サーチライトは従来に比べ2倍の明るさとなっている。埃や液体に対する保護等級はIP67(バッテリーを除く)。重要なコンポーネントには3層保護を施している。アームは、新設計のスナップ構造によりワンタッチで素早い展開が可能だ。また、ロックされないままで放置するとアラートで警告するので、フライト前の安全確認も万全だ。
同社では、散布請負や農業用スクールなどを行っているほか、育苗や苗の運搬にかかる労力やコストの削減につながるとして注目されている稲作の直播(ちょくはん)なども実施しており、ドローンやIoTデバイス、AIなどスマートテクノロジーを用いる農業のDX化を進めていくとしている。