ドローンに可変ピッチ機構のプロペラを取り入れた東京航空計器は、シングルローターヘリと2種類のマルチコプターを展示した。近年、国産ドローンに注目が集まっているが、東京航空計器は2015年からGNASブランドの国産ドローン開発を進めており、独自のフライトコントローラー「GNAS SKY」を完成させている。

耐風性の高い安定した飛行を実現するシングルローター

カーボンボディが特徴的な「GNAS SKY SINGLE ROTOR HELICOPTER」

 東京航空計器が2015年から開発を続けているのがシングルローターヘリだ。有人機と同様にとても安定性に優れていることが最大の特長だという。安定性というのは外乱的な風に対するもので、突風による影響抑制や煽られ時に姿勢の立て直しが早いことがあげられる。そのため、レベル3以上の運用方法を念頭に、風の動きが予測しにくい洋上や山間部、ビル風を伴う市街地での活用に向けて開発された。

 耐風試験では風速18m/sの中でも安全な飛行が確認されており、これは独自に開発した可変ピッチ機構のほか、メインブレードの幅と長さを変更したことが貢献したものと見られる。また、高速巡回もシングルローターヘリの特長であり、70km/hで移動することが可能だ。

下部に取り付けられたリリースユニット。

 展示された機体には3kgの荷物を運ぶリリースユニットが搭載されていた。これは緊急性の高い物資配送を想定して開発されたもので、荷物搭載時は約30分の飛行が可能だという。

軽量コンパクトに生まれ変わったマルチコプター

 シングルローターヘリと並行して開発されてきたのが可変ピッチ機構を搭載したマルチコプターだ。当初は物資輸送を視野に入れた大型ドローンだったが、コンパクト設計にモデルチェンジを施し、用途に合わせて柔軟に活用可能なドローンとなった。

ベルト駆動を備える可変ピッチ機構ながらもコンパクトな折り畳み式を可能にした「GNAS SKY Multi-Purpose Drone variable Pitch Model」。
繊細なメンテナンスを必要とせず、手軽に扱える固定ピッチモデル「GNAS SKY Multi-Purpose Drone Fixed Pitch Model」も登場。

 出展されたマルチコプターは可変ピッチ機構を搭載する「GNAS SKY Multi-Purpose Drone variable Pitch Model」と、固定ピッチとなる「GNAS SKY Multi-Purpose Drone Fixed Pitch Model」の2機種だ。

 今回のモデルチェンジで飛行の安定性を向上しただけでなく、操縦者に対するサポート機能の強化を図っている。これは、上昇や離陸時における速度リミットの設定、着陸時に自動で速度を落とす完全自動離着陸機能の搭載により、もっとも事故が多い離着陸時の操縦をサポートするといったもの。担当者は「長年にわたって航空機に携わってきた東京航空計器では、航空機と同じように離着陸は手動を推奨する方針で開発してきた。しかし、ドローンの高い飛行性能を確立できたので、操縦者の使い勝手向上にもつながる自動サポート機能を実現することができた」という。

精密部品で構成された可変ピッチ機構。

 また、展示した3モデルは形状や可変ピッチ機構の有無が異なるものの、IMUやフライトコントローラーなど、構成部品は同じものを使用しており、操縦はすべて同じ感覚で制御可能だという。なお、飛行試験では可変ピッチ機構は推力の応答性能が固定ピッチよりも15倍速いことが実証されている。

バッテリーを下部に搭載すれば、上部にフラットなペイロードを確保できる。

 ペイロードは3kgで要望に合わせてカスタマイズが可能。バッテリーは下部と上部の2カ所に搭載することができ、最適な場所にカメラなどの機器を設置することができる。これに加え、固定ピッチモデルはペイロードマウンターと電源信号コネクタを標準で装備している。可変ピッチモデルは電圧変化が大きいため、2本のバッテリーを搭載していた。

 両機種とも3kgのペイロードを搭載した状態で飛行時間は30分以上。さらには防水構造にすることで、雨天飛行も可能としている。

フライト管理を行うアプリケーションも独自に開発。航空機を意識した計器表示がスタイリッシュだ。

 シングルローターヘリは量産化に至っていないが、マルチコプターは量産を開始しており、固定ピッチモデルの価格は約250万円、可変ピッチモデルは約500万円となる。可変ピッチモデルは構成部品が多く、シビアなメンテナンスも必要なため高価格となってしまうが、そこには東京航空計器のこだわりが詰め込まれていた。年間100台を目標にGNASシリーズの販売に注力していくという。