2021年3月中旬、ヤマハ発動機は、静岡県掛川市の山中で無人ヘリコプター「FAZER R G2」による資材運搬の実証実験を実施した。実験ではパイロットによる操縦と自動航行を組み合わせ、林道から高低差約120mの谷底にある荷下ろしの現場まで約120往復、計1.5トンの資材を運搬した。

資材を運搬する「FAZER R G2」

 この実証実験は、掛川市森林組合から現場の安全性や省力化を確保しながら苗木を守りたいという相談を受けて行われたものだ。
 荷下ろしの現場は林道から高低差約120mの谷底にあり、約300mのけもの道には丸木橋が掛かる。林業作業用のスパイクを履いて重い資材を背負って斜面を歩くには時間がかかり、作業者の負担も大きく、危険を伴う。
 運搬するのは、支柱やネットといった獣害対策用の資材。植えたばかりのスギやヒノキの苗木はやわらかく、シカやカモシカに食べられてしまうため、防護柵は欠かせないという。

 FAZER R G2のペイロードは35kgだが、資材を格納するためのコンテナ重量を差し引き、さらに形状の異なる資材を組み合わせると一度のフライトで運べる量はおよそ20kgになる。事前準備で強風の影響を受けにくい積載方法などの試行錯誤を重ねて実験は行われた。
 斜面を挟んだ積込み・荷下ろしの現場にそれぞれ操縦オペレーターを配置し、樹木等の障害物を避けるためパイロットによる操縦と自動航行を組み合わせて片道約10分弱の往復を繰り返す。5日間で約120往復し、計画通りにすべての資材を運ぶことができた。

安定した飛行のため積載方法を検証
谷底の防護柵設置場所に運び込まれた資材