DJI Phantom4 RTKの登場でドローンによる写真測量の普及が一気に加速した。2019年に開催した第2回建設・測量生産性向上展では写真測量が主流であったが、今年の第3回建設・測量生産性向上展には多くのドローン用レーザースキャナーが展示されていた。これまでイエロースキャンやベロダインといった海外メーカーのレーザースキャナーがシェアを伸ばしてきたが、需要拡大や低コスト化を受けて、国産を含む多様なレーザースキャナーが参入し始めた。PENTAX計測機器の製造・販売を行うTIアサヒの「UAVレーザー測量システム UL-1」もそのひとつだ。

ドローンの1フライトで18万㎡の点群・写真データを一気に取得!

建設・測量生産性向上展2021に出展したTIアサヒのブース。ドローンのほかPENTAX測量の測量機材が並ぶ。

 UL-1はスキャナー、GNSS/IMU、高解像度カメラで構成され、ロングレンジに対応したレーザースキャナーだ。フルサイズセンサーを搭載した4240万画素の一眼レフカメラを内蔵することで、鮮明にカラー化した3D点群モデルを生成でき、高低差のあるエッジ部分などをはっきりと表現する。これに最大照射距離300mのレーザースキャナーを組み合わせ、高高度から広範囲のドローン測量を実現した。

 レーザー測量は表面的に捉える写真測量とは異なり、点で照射したレーザーのリターン信号を取得する。そのため、森林地帯や山間部であっても地表面までレーザーが行き届き、地形の点群まで取得できるのが特長となる。一般的に照射距離が短いものは100m以下となるが、UL-1はドローン測量を前提に高高度からの活用をコンセプトにしている。そのため、毎秒6万点のレーザーを照射し、最大照射距離は300mを誇る。UL-1を搭載すれば航空法で定められる最大高度150mの飛行であっても十分活用可能だ。なお、DJI Matrice600にUL-1を搭載してTIアサヒが検証した例によると、15分間の飛行(満充電1回分)で東京ドーム約4個分となる18万㎡のデータ取得に成功している。18万㎡の測量面積には驚かされるが、これは対地高度50mで検証した結果であり、高度150mに設定すると同じ時間で約3倍に及ぶ面積のデータが取得できる計算になる。これに加え、内臓されたGNSSとIMUによってGCP(Ground Control Point)の設置時間を削減できるなど、事前準備の短縮にもつながる。これだけでもドローンによるレーザー測量の効率性が十分に伝わるだろう。

DJI Matrice600に搭載して展示されたUL-1。スキャン角度は90度で、位置情報を取得するハイレートGNSSは1秒間に1~25回、姿勢を制御するIMUは1秒間に200回の更新を行う。
UL-1のユニット本体の重量4.8kg。連続動作時間は4時間半となる。

 また、UL-1の特長はロングレンジだけではない。通常は取得データの処理にSfMソフト等を別途購入しなければならないが、UL-1は専用に独自開発した点群処理ソフトをセットで使用する。このソフトウェアは航跡処理・点群生成・点群カラー化の一連のワークフローをスムーズに完結し、CSV、PTS、LASのファイル形式でデータを出力する。さらには後処理作業もこのソフトウェアで行い、等高線や断面図、フィルター処理など便利なツールが揃っている。

 同製品は2019年にいち早く発表されたレーザー測量システムだが、これについて担当者は「2019年当時はドローン測量の導入が一部でしか進んでいなかったが、ドローン測量が普及するに連れてレーザー測量の引き合いが増加傾向にある。2019年からはデータ処理ソフトのアップデートが進んでおり、処理速度や精度が向上している。加えてソフトウェアの面では今後も進化が見込め、要望に応じた機能やさらに細かいレイヤーの追加などが予想できる」と話し、今後の機能面による差別化を予感させる。

 UL-1はレーザー測量システムとソフトウェアのセット販売で価格は約2000万円。展示品はDJI Matrice600に搭載されていたが、幅広い機種に対応する。販売はドローンに搭載した状態で提供し、すでに所有しているドローンへの搭載にも対応している。