2023年2月9日、VFRは高知県内で「人生100年時代に人々を幸せにするドローン作り『Take Off Anywhere』プロジェクト(以下 ToAプロジェクト)」の活動報告の一環として、同年3月よりVFRと高知県企業2社が連携するドローン業界のカスタマーサービス代行事業を開設することを発表した。

完全自動化のドローン社会を実現する「Take Off Anywhereプロジェクト」

 ToAプロジェクトは2021年2月にSUNDRED、ACSL、センシンロボティクス、理経、PHB Design、VFRの合計6社が「誰でも・何処でも・必要な時に」ドローンを使用できる確実なドローン技術の社会実装を目指すために発足したプロジェクトだ。

 現在ドローンを運用する際は複数人でチームを組み、さまざまな観点から安全に操縦するための準備をしなければならない。ToAプロジェクトは今後のドローン市場の発展を目指し、省人でドローンを運用するための自動化や完全無人化運用を実現していくことを目標としている。ドローンが日常的に使用される社会を目指し、2022年2月時点で計11社が共同で技術開発・課題解決を進めている。

安心・安全な国産ドローン導入を促進する「カスタマーサポート代行事業」の立ち上げ背景

 日本国内において、ドローンシェア率が高いのは中国製のドローンだ。しかし、日本では各省庁が情報セキュリティの観点から業務や用途によって、国産ドローンの利用を勧めている。

 しかし、企業などは国産ドローンの導入について「どの国産ドローンを選べば良いのか分からない」「各メーカーの相見積もりは正直手間なので手軽に導入できる中国製ドローンでいい」「ドローンを購入した後のサポート体制は代理店が多い中国製ドローンの方が安心ではないか」といった意見が多いのが現状だ。

 通常、何かを開発・販売しているメーカー側には顧客に対するサポート体制が充実していることが多い。当然、国産ドローンを開発・販売しているメーカーも例に漏れないが、スタートアップ企業においては新規事業を導入しやすい反面、品質や安全性の担保、低価格で提供するための量産体制の整備、技術サポート・導入サポート体制などを整備する上での壁に直面している傾向にある。

 一方、大企業では品質や安全性を担保したり量産体制を整えたりという開発環境を保有しているが、長年培ってきたがゆえに大企業ならではの仕組みなどが新しい取り組みを導入する上での妨げになっており、顧客目線でのサポート体制を実現することが困難だ。

 VFRはVAIOからスピンオフした企業としてドローン業界のスタートアップ企業と大企業の中間に近い立ち位置を取っており、VFRのポジションだからこそ出来るスタートアップ企業支援やスタートアップ企業と大企業の連携を強化し、ドローンの社会実装を促進する事業を行っている。今回発表したカスタマーサポート代行事業は、その一環として今後展開されていくだろう。

カスタマーサポート代行事業の詳細

 カスタマーサービス代行事業は、中国製ドローンから国産ドローンに買い替えたり、新規導入することを目的としたものだ。各国産ドローンメーカーが協力して顧客に寄り添った体制を築く事業として、VFRはドローン業界のカスタマーサービスを代行する取り組みを発表した。本事業は大きく分けて「カスタマーサービス(保守・修理・代替機交換対応等)」「セールスサポート」「テクニカルサポート」の3つを軸として、各社のノウハウを取り入れる共創のサポート体制で実施する予定だ。

 ドローンのサプライチェーンは「①企画・開発」「②調達・製造」「③営業・販売」「④サポート」という工程になっており、これまでVFRが取り組んできた①~③における環境整備を強固なものとする④を整備するのが本事業の主体となっている。テクニカルサポートやスピード発送、電子マニュアルなどを整備し、DXを活用した顧客にとって便利なサポートを提供していく。

 本事業は顧客サポートを充実させることを目的としておらず、アフターサービスを充実させることによる満足度向上から顧客の声を収集できる体制を整え、収集した情報をもとに顧客目線の製品開発・企画に繋げるという共創サイクルを実現させること未来を見据えた事業体制となっている。

カスタマーサポート代行事業の運用体制

 本事業は複数の販社やベンダーと共創する事業だが、その中でもサポート体制の要となるサポート企業として、VFRはソフトウェア企業向けカスタマーサポート事業を展開するSHIFT PLUS(シフトプラス)と、ITハードウェアの販売・アフターサービス・ドローン講習事業を扱うエレパの高知県企業2社と連携すると発表した。カスタマーサービスのデータベース分析を担当するシフトプラスは「その『声』の先にある未来へ」を企業スローガンとして掲げている、ユーザーファーストの顧客サポートを提供している企業だ。

 シフトプラスは顧客の問い合わせ内容を蓄積するだけではなく分析し、その情報を企画・開発に届けることに注力しており、シフトプラス代表取締役の綿貫氏は本事業について「ドローン市場が拡大する中で発生する困り事に対して顧客の声が届いていないとギャップが生じてしまい、本来活用されるべきところに活用されなくなってしまう。我々が顧客の声を開発等に届けることで、ドローン市場がもっと大きくなるよう少しでも力になっていきたい」と語った。

 テクニカルサポート部門を担当するエレパは製品販売からソフトウェア開発、アフターサービスまで手がけており、自社が代理店販売を行う産業ドローンの修理受付や製品点検業務も行っている企業だ。エレパはドローン事業を10年以上扱っている企業であり、社内では長年に渡って蓄積されたドローンに関する知識だけでなく修理技術及び顧客対応のノウハウが充実している。今後エレパは本事業において、ドローン修理を請け負うフィールドエージェントとして活動していく。

 本事業は2023年3月より、カスタマーサポートの基本となる法人専用コールセンターを設立してベンチャー企業のサポート体制を充実させることで、ドローン市場の規模拡大を目指す方針を取っている。