マルチコプター、無人ヘリコプター、無人飛行機の3タイプの機体を保有し、さまざまな用途に最適化されたドローン運用サービスを提供できるのがJDRONEの強みだ。特に無人ヘリコプターについては国内でも数機しかないプログラムフライトが可能な「YAMAHA FAZER R G2」による運用サービスを展開しており、災害や危機管理などのニーズにも対応することができる。

機体タイプごとに異なるドローンの特徴と用途

 業務用途で利用されるドローンには大きく3つのタイプがある。

 1つめは、複数のローターとバッテリーを搭載した最近流行りのマルチコプターだ。一般的にドローンといえば、ほとんど人がこのマルチコプターをイメージするのではないだろうか。汎用性に優れるとともに選択肢も豊富で、顧客のニーズに合わせて機体やペイロード(カメラ、レーザー、ウィンチなど)、パイロットを選定し、調査や測量、空撮といった用途に最適化された運用を可能とする。

 2つめは、自動航行機能を搭載した無人ヘリコプターだ。マルチコプターと比べて機体もかなり大きくなるため、そのぶん重いペイロードを搭載できる。一般的なマルチコプターでは3kg以下のペイロードしか搭載できないが、JDRONEが活用する無人ヘリコプターなら最大35kgのペイロードを搭載することが可能。しかも航続時間約2時間、航続距離約90kmといった飛行を行うことが可能で、計測や監視、撮影、運搬、サンプル採取といった、マルチコプターでは困難な案件にも対応することができる。

 そして3つめは、無人航空機である。ペイロードは2、3kg程度しか搭載できないため物流分野での活用は難しいが、夜間を含めた12〜13時間以上といった長時間・長距離の飛行を行えるのが最大の特徴で、専用の軽量高性能カメラや計測器を搭載し捜索や空撮、モニタリングなどで用いられる。

 JDRONEは、上記のようなマルチコプターから無人ヘリコプター、無人航空機まで3つの機体のすべてに対応し、顧客の依頼内容に適した運用サービスを提供している国内でも数少ない事業者である。

YAMAHA FAZER R G2のメリットを最大限に活用

 特にJDRONEの強みが発揮されるのが、無人ヘリコプターを使ったサービスだ。

 同社が活用しているのはヤマハ発動機の「YAMAHA FAZER R G2」という機体。ヤマハ発動機では、農薬散布など主に農業の現場で使われる無人ヘリとして「FAZER R」を販売しているが、FAZER R G2はGPSや姿勢制御、衛星通信などの機能を搭載し、プログラムフライト(自動操縦)ができるようにしたエンハンスモデルである。航続時間2時間、航続距離90km、運用高度2800m、ペイロード搭載重量35kgといった圧倒的なパフォーマンスを発揮し、山間部の送電線の点検・検査、運搬、計測業務、警備・防災といった用途にも対応できる。

 実はこのFAZER R G2だが、一部の公的機関や研究機関、ヤマハ発動機の関連会社などを除いて一般には市販されておらず、国内では数機しか運用されていない。

 このような特別な機体にもかかわらず、JDRONEが導入できた背景には、2019年に設立したJDRONEの前身時代から長年にわたって続いてきたヤマハ発動機との協業関係がある。無人ヘリを用いたさまざまな案件に両社が共同して取り組んできた実績と高い技術力が評価され、JDRONEの主力機体として供与されるに至ったのである。

 実際にJDRONEは、このFAZER R G2のメリットを最大限に生かした運用サービスを提供している。ここでいうメリットとは、前述したプログラムフライトや高度な飛行性能もさることながら、その卓越した機動力だ。通常、無人ヘリコプターを運用するとなると、現場まで運搬するだけでもクレーンやトラックが必要となり、そのぶんコストもかかる。これに対してFAZER R G2は人力でも持ち上げることができ、ローターブレード(回転翼)を取り外せば、一般的なバンに積み込んで現場まで運搬することができる。

 さらに、着いた先でも少人数のスタッフで運用することが可能。案件の難易度や顧客から求められる成果物の内容など条件によって必要人数は大きく変化するが、JDRONEではシンプルな案件であれば、プログラムフライト時のオペレーションの担当者と離着陸時の手動操縦者、最低2名のスタッフがいれば運用可能という。

 さらにFAZER R G2の最大の強みとなっているのが、先にも少し触れた衛星通信の機能である。通常ドローンは機体と操縦機を2.4GHz帯の電波で接続しオペレーションを行うが、裏を返せば山間部など電波の届かない地域や、激甚災害などにより基地局が損壊した際には運用ができなくなってしまう。また長距離を飛行中に基地局の切り替え(ハンドオーバー)がスムーズにいかずに通信が途切れ、連続したデータを送れなくなるといった弊害が起こるおそれもある。衛星通信を使うことでこうしたリスクを最小化できるのである。JDRONEではLTE回線をメインとして利用しつつ、バックアップ回線として衛星通信を併用するといった運用も行っており、厳しい条件下でもコントロールを確保することで、飛行の信頼性と安全性を担保している。

無人ヘリコプター「YAMAHA FAZER R G2」
一般的なバンで運搬でき、少人数のスタッフで運用可能な「YAMAHA FAZER R G2」

高度なスキルを持つ有資格者を育成

 もっとも一般的なマルチコプターと比べ、FAZER R G2を運用するためにはより高度なスキルと熟練が要求される。無人ヘリを扱うにあたっては、日本産業用無人航空機工業会(JUAV)が発行するマニュアル操縦または自動航法操縦のライセンスを取得するケースがほとんどだが、この資格を取得するまでには通常1年以上の期間がかかる。さらに資格を取得してすぐに活躍できるというわけではない。JDRONEではその後、半年から1年間にわたるOJT(職場内訓練)を実施し、さまざまな現場で十分な経験を積んでから、はじめて“一人前”と認められるのである。

 こうした人材育成の結果としてJDRONEでは現在、自動航法操縦ライセンスの保有者は4名にまで拡大し、そのうち2名はマニュアル操縦のライセンスも取得しており、顧客から寄せられる多様な案件に柔軟かつ的確に対応できる体制を整えている。

 今後もJDRONEは、専門性の高い機体や運用体制、通信環境、スキルなどにより、ドローンを用いた危機管理や災害対応を支援し続けるだろう。

お客様にUAV(無人航空機)活用の多様な選択肢を提示

株式会社JDRONE 技術サービス部 南相馬サービスベース 課長 伊村光生 氏

 業務でUAV(無人航空機)を活用したいと考えるお客様が増えていますが、当然のことながらリクエストは多岐にわたります。上空から対象物の写真を撮りたい、LiDARを使って3Dモデルデータ(点群データ)を採取したい、あるいは物資を運びたいなど、求められる成果物もさまざまです。

 その意味でマルチコプター、無人ヘリプター、無人航空機といった3つのタイプの機体を保有しており、柔軟に使い分けた提案ができるJDRONEは、他のドローン運用サービス事業者にはない強みを持っていると自負しています。

 UAVは機体のタイプごとに航続時間や航続距離、搭載可能なペイロードの重量などが異なるため、対応可能な案件も違ってきますが、単に必要な成果物を得るための条件を満たせるかどうかで可否を判断するだけではありません。たとえば「マルチコプターを使ったほうがコストを抑えることができますが、無人ヘリプターを使ったほうが圧倒的に短時間で作業を完了できます」といった選択肢を提示することが可能となるのです。

 そうした中でJDRONEは、特殊な現場や案件に対する経験も数多く積んできました。たとえば火山活動活発化により立入り規制された温泉関連施設調査に参加し、UAVによる空撮・観測を担当したこともあります。

 ただしどんな案件に携わる場合でも、最も優先しなければならないのは安全です。人間が作ったモノである以上、どんなタイプのUAVも落下の危険性を100%防止できるわけではありません。万一の事態が起こった際にどのように対処すべきかを常に念頭におき、私たちはUAVの運用サービスにあたっています。

【Case Study】東日本大震災からの復興支援
福島第一原子力発電所周辺の放射線量を無人ヘリコプターでモニタリング

 東日本大震災で起こった原子力発電所事故による放射性物質の拡散状況を継続的に調査するため、JDRONEでは国立研究開発法人日本原子力研究開発機構との委託契約により無人ヘリコプター「FAZER R G2」による放射線データの収集および解析作業を実施した。

 マルチコプターではなく無人ヘリコプターを選定するにあたり、搭載可能なペイロードの重量と航続可能時間が大きな決め手となった。放射線量を正確に測定する機器の総重量は約15kgにも達するため、無人ヘリコプターでなければ対応は難しかった。また、マルチコプターは最大でも30分程度しか飛行することができないが、無人ヘリは2時間近く飛行を続けることができる。1回の飛行でより多くのデータを収集できるという意味でも無人ヘリコプターのほうが有利であった。

 なお、無人ヘリコプターの飛行高度は、安全面及び測定データの信頼性を考慮し、対地高度で100mを目安とした。また、無人ヘリコプターによる測定に併せて、地上測定も実施した。両者を比較することで、無人ヘリコプターにより上空で測定した放射線量が地上で妥当かを確認した。

 このサーベイの成果物として、2012年度以降の空間線量の変化を可視化したマップを作成。事故発生の19か月後に行われた第1回から繰り返し測定を行い、事故127か月後となる2021年の第13回測定では、空間線量率の高いエリアが大幅に縮小していることがマップから明らかとなった。

 この結果は、地域ごとの安全性を確認するデータとして活用されるほか、住民や事業者の帰還事業の計画策定にも貢献している。有人ヘリコプターの代替えとしてドローンを用いることで、作業効率の改善やコスト削減が実現した。

<概要>
 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構よりの委託業務にて、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散状況を継続的に調査するため、無人ヘリコプターを用いて放射線を測定し、それらの収集したデータを解析して放射線分布図を作成する。

<導入効果>
地域ごとの安全性を確認するデータとして活用
帰還困難区域の除染等の作業に活用

無人ヘリ離陸前
無人ヘリ飛行
歩行サーベイ
平成24年度以降の無人ヘリサーベイによる空間線量率マップの変化

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